聴覚障害者の日常 聞こえについて
聴力損失110db
アタシの耳の感度を調べると体調によって前後するのだが、手帳にはそう記載されている。
耳元でジェット機が飛び立つ音が聞こえるくらいなのだそう。
数値的にはそうかもしれない。
だけれど、人間の声、物音っていうのは、たいてい振動とか空気の動きと共に伝わってくると思う。
感覚的に聞こえるモノがあるのだ。
耳もとで大声を出されれば、鼓膜は正常なので音はかすかにしか聞こえなくても耳が痛くなる。
耳もとにささやけば、温かな呼吸の動きを感じる。
確かに正常な聴覚としてはほど遠いし、聞こえる、と表現できないのかもしれない。
でも、無ではない。音は、色んなものでなりたっているとするならば、振動を感じとることや、空気の動きを感じることをも、聞こえる一部ではないだろうか。
夜、ダーと一緒に寝るときは引っ付いていることが多い。
ダーはあまり話さないけれど、時々、独り言のように話していたり、歌ってたりする。
ひっついていると、ダーの声が聞こえる。温かな背中を通して、あるいは胸を通して響いてくる。
何を言っているか正直わからない。決まり文句はわかるんだけれど。ダーの発声によるその響きが私は好きだ。歌ってたりすると、響きにも高低を感じる。もちろん、イビキも響いてくる。寝落ちてしまうと離れてしまうんだけど、安眠導入剤になっているのは間違いない。
だんだん暖かくなり暑くなってきたら、暑がりのダーは一緒に寝てくれなくなる。今のうちに引っ付き貯めをしておこう。
色んな聴力損失があり、聞こえ方も皆それぞれ違います。
私はどうがんばっても耳だけでは言葉や音を理解できません。視覚や振動や皮膚感覚などで補完して理解しようとします。あるいは経験的に。あるいは学習的に。
聞こえるっていうのは、実は、聴覚だけじゃない、と思うのは私だけではないと思います……