ヒロインのピンチに主人公が颯爽と現れて敵をボコボコにする話を書きたかったけど途中で満足した
最初からクライマックス。
安心してください。前の話なんてありません。
エリナは、ばたりと崩れ落ちた。
もう魔法を唱える力もなければ起き上がる力もない。それほどまでに傷つき、力を使った。
しかし、それでもあの男、ヴェインには全く歯が立たなかった。
ヴェインは余裕ぶった表情でエリナを見下す。
歯が立たないのは分かっていた。けれどやらねばならなかった。アインがいない今、もうヴェインを止めることができる可能性があったのは、エリナしかいなかったのだ。
でも、止められなかった。
「まあ、お前にしてはよくやった方だ」
「……くっ、そう……!」
ありもしない力を振り絞り、なんとかして立とうとする。身の丈ほどの魔法の杖にしがみつく。
「やめておけ。足の骨が折れてるんだぞ。それに立ち上がったところで、お前に勝ち目はない」
それとも、そんなに死にたいか、とヴェインは言った。
「に、人間にはね、215本の骨があるのよ……。その内の一本がなんだって言うのよ」
そう言ってなんとか立ち上がったエリナを見て、ヴェインは愉快に笑い、そして大剣の剣先をエリナの首元に向けた。
「なら、一つしかない首を切り落としてくれよう。そしてあの世からアインと共に、世界が滅びゆくのを見ているんだな」
最後に一発、魔法でもお見舞いしてやろうかと思ったが、さすがにそこまでの力は出ないようだ。
そもそも、今は小指で突かれればまた崩れ落ちるだろう。そんな状態だ。
「消えろ」
大剣を振りかざし、エリナの首にめがけて振り下ろす。
もうここまでかと思った。
せめて最後にお腹いっぱいご飯を食べたかったなあなんて思いながら、死を覚悟した。
しかし。
ガキィンッ!
エリナの首は切られることなく、代わりにそんな音が響く。
どういうことかと、状況を理解するのに、十秒くらいの時間を要した。
「……ほう?」
「ごめん、待たせた」
左の小手で大剣を止め、こちらを向いて、そう言った。
アインが、そう言ったーー!
「お前、生きていたのか」
「残念だったな、トリックだよ」
大剣を払うと、アインはそのままヴェインに向かって鋭い拳を放つ。ヴェインは後ろに距離を取ることで、拳を避ける。
「エリナ、ありがとう。しばらく休んでてくれ」
エリナの体を支えながら、アインはエリナを横たわらせた。
「あいつを、ぶっ飛ばしてくる」
「……うん」
にかっと笑いかけ、アインはヴェインの方を向いた。
「俺がいない間に好き放題してたみたいだな」
「お前がいない世界など、滅ぼすのは容易かったんだがな、その女が多少なりとも邪魔をしてくれたよ」
さて、と言ってヴェインは構える。
「お前がなぜ生きているのかなど聞かん。どうでもいいことだ。私は目の前にあるゴミを片付けるだけに過ぎない」
「言っとくけど、あの時の俺と今の俺を一緒にしない方がいいぜ」
そう言ってアインも構える。
「お前の人生を、リミット無限大まで飛ばしてやるよ」
「悪いが単調増加だよ!」
次回のパーミテンションの作品にご期待ください。
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