魔法を使おう
「さあ、着いたぞ! ここがわらわの城じゃ」
……城というか山荘だな。まぁ小さくはないが大きくもないな。自分のテリトリー的な意味の城だったか。
「遠慮するな、着いて参れ」
そう言うと、さっさと家へと入っていった。
「あぁ、すまない。お邪魔する」
家に入ると六畳ほどの部屋に手前に小さなテーブル、奥にベッドとタンスがあるシンプルな配置になっていた。
「ちょっとそこで座ってまっておれ」
レフィーラは俺をテーブルへと促すと隣の部屋へと歩いて行った。することもないので、とりあえずは大人しく座って待つことにした。
五分ほど待つと、両手にそれぞれティーカップを持ち戻ってきた。
「わらわの栽培しておるハーブティーじゃ」
優しい笑顔でカップをテーブルに置くと向かいの椅子へと腰掛けた。
「あぁ、ありがとう。……いい香りだな」
礼を言いカップ持つと、スーッと落ち着くような香りがした。言葉で表現しにくいのだが、その香りを嗅ぐと何か涙が出そうになった。
「……リラックス効果のあるハーブじゃ。色々あったしの、少し落ち着くとよい」
レフィーラの優しい声が心に抵抗なく入ってきた。
「あー、すまん、もう覚悟は決めたはずなんだがなぁ」
あんなにたくさん泣いたはずなのに、また涙が出てきた。
「気にするでない。色々ありすぎたんじゃ、無理もない」
ハーブティーをふーふーしながら、こちらをちらりと見てハンカチをテーブルに置いてくれた。
「あー……うまいなぁ……」
俺はハーブティーを飲むと天井を仰いでそのまま涙を流しつづけた。
その間、レフィーラは言葉を発することなく静かに待ち続けてくれた。
「よし、ハンカチありがとな。洗って返したほうがいいか?」
心が落ち着きを取り戻したので、涙を拭き彼女に問いかけた。
「わらわが洗うからそのままで良い」
そう言うとレフィーラはハンカチを受け取り、ポケットへとしまいこんだ。見知らぬおっさんの涙で濡れたハンカチを気にすることなく触る彼女にほのかに感動しつつ話を続けた。
「すまんな、助かる。それじゃさっきの話の続きをしようか」
「そうじゃのぉ、じゃが先におぬしの今後についてを決めようと思うのじゃが、キョウスケよ、ここでわらわと暮らせ」
「……は? すまん、もう一度いいか? 何か聞き間違えたようだ」
なにか一緒に暮らせ的なことを言われた気がした。いや、気のせいだ。やはり色々あって疲れ――
「わらわと一緒に暮らすのじゃ」
……ふむ、どうやら俺の耳は正常だったらしい。だとすると目的はなんだろうか。つい訝しげな目で見てしまう。
「そんな目で見るでない。おぬしの為じゃ」
「俺の?」
「そうじゃ、はっきり言っておぬしこのままではすぐに死ぬぞ?」
確かにいきなり死にかけたが、この場所が物騒なだけであって、町にでも行けばなんとかなるかと思ったんだが……。
「言っておくが、戦争が終わって間もないんじゃ、治安も良くないから盗賊も多いし町におっても強盗に殺されることもあるぞ」
なんて、物騒な世界なんだ。もっと他に平和な世界はなかったのだろうか。
「まぁというわけで、わらわがおぬしを鍛えてやろう。ついでにこの世界の常識も教えてやろう」
胸を張り得意げに言ったその話はとてもありがたい提案だ。しかし彼女に一体なんのメリットがあるのだろうか。
「それは助かるが、なぜそこまでしてくれる?」
そう質問すると、彼女は一口ハーブティーを飲み、視線をカップに落としながら話し始めた。
「昔、人間の男に命を助けられたことがあっての、恩返ししたいのじゃができなくなっての、その代わりにおぬしに返そうとしてるだけじゃ」
先ほどと変わって、その静かな雰囲気は簡単に踏み込めるものではなく、深く聞くことはせず口を噤んだ。
「まぁ、おぬしは特に気にすることなどない。黙って恩を返されておれ」
彼女は雰囲気を戻すとまたこちらを見つめながら語りかけてきた。
「そうか、それはありがたいが何かメリットがあって助けてくれるほうが逆に信用できるんだがなぁ」
「命を失ってまで他人を助けたおぬしが言うことではないのぉ」
「あー、違いないな」
まぁ、そんなことを言いつつも彼女を二つの理由から信用できると思っていた。
一つは、彼女は嘘は言っていないと感じたから。
そして、もう一つは神様がこんな危険な場所におれを転移させた理由は、彼女に会わせるためだったのではないかと思ったからだ。
両方とも勘みたいなものだが、おそらく間違っていないと思っている。
「それじゃあ、すまないがこれからよろしくお願いします」
「うむ、安心してまかされよ」
頭を下げた俺に彼女は満面の笑みで答えた。ころころとよく表情の変わる女性だ。
「では、さっそくじゃが魔法を教えよう」
「いきなりそれか」
話題もころっと変わって常識をすっ飛ばしてきたな。まぁでも気になるところではあるが……。
「そう簡単に使えるものでもないからのぉ、鍛錬を始めるのは少しでも早いほうがいいんじゃ」
なるほど、それなら確かに今からでも始めたほうがいいだろうな。別にここにいる限りは常識とかは追々でも問題ないだろう。
「わかった。しかし、どれくらいで使えるようになるんだ?」
「正直、わからんのぉ。おぬしの資質次第じゃのぉ」
資質と言われても魔力量とかは一般平均しかないし、この世界の人間でもないし、まったくなさそうなんだがな。
「とりあえず、まずは第一歩が肝心じゃ。自分の持ってる魔力を感知することじゃ」
「魔力を感知?」
「そうじゃ、ほとんどの人間はこれができなくて魔法が使えぬのじゃ。逆に言えばこれさえできれば魔法を使うのは簡単じゃ」
この世界の人間は全員魔法が使えるわけではないのか。なら魔法を使えるだけでかなりのアドバンテージを得られるわけだ。
生き抜くためにも是非習得したいとこだな。
「己の中の魔力を探るのじゃ。何か体に宿る異質な力みたいなものじゃ。早ければ1週間ほどで何か掴めるはずじゃ」
ん?それは神様に魔力をもらった時に感じてる違和感。おそらくこれのことだな。
「おぬしは魔力が一般人程度しかないから、感じるのは難しいじゃろうが、辛抱強くがんばるのじゃ」
「いや、もうできたぞ?」
「冗談は良い。真面目にやるのじゃ」
怒られてしまった。本当にできてると思うのだが、証明の仕方がわからん。どうしたものかな。
「あー、もし感知できたらどうするんだ?」
「感知できた魔力を意識して体の中で動かすことができるはずじゃ」
「ほうほう」
おお、ほんとだ。体の中でぐりんぐりん動く。なんか楽しいぞ。
「そして、手などに集めて火や氷などイメージして放出するのじゃ」
「ほうほう、こうかな」
危なくないように手に魔力を少し集中して火をイメージして放出してみた。
――ボッ!
「おおお! できた!」
「なっ! なんじゃとおおお!」
レフィーラが突然、椅子から立ち大きな声を上げたのでびっくりして火を消してしまった。
「お、おどかすなよ」
「こっちの台詞じゃ! 今、なにをしたんじゃ!」
「いや、なにって魔法でしょ? ほら」
そう言って、もう一度手ひらに火を灯した。
「確かに……しかし、どういうことじゃ、魔力の感知がそんなに簡単にできるはずは……」
「そう言われても、神様に魔力もらった時からずっと違和感があったからな」
「……そうか、この世界の人間は生まれつき魔力を持っておる為、それが当然の状態ゆえに感知が難しくなっておる。しかしおぬしは先ほど魔力を持ったばかりゆえに感知も簡単にできたというわけか」
そいつはラッキーだな。魔法がいきなり使えるとかありがたい。
「しかしのぉ、感知できたからといってそんなにあっさり魔力操作できるものでもないのじゃがのぉ」
「そうなのか? さっき感知さえできれば簡単みたいなこと言ってなかったか?」
「感知に比べれば簡単なのじゃ、しかし魔力操作には明確な意思の力を必要とする為、なかなかに難しいのじゃが……」
なにか思案しているようだ、黙って待とう。
「そういえばおぬし……」
「ん? なに?」
何とも言えない顔でこっちを見ているな。
「三千年も一つの目的の為に、闇の中で耐えたのじゃったな……」
「あぁ、うん」
そういうことか。確かにそういう意味で意思の力は充分に足るのだろう。
「あっ!」
突然、彼女は何かを思い出したように声を上げた。
「おぬし、ファングライガーと対峙したとき、何をしておったのじゃ」
「ん? 弱いと思われたら襲われそうだったんで、俺の方が強いぜって威嚇してた」
「なるほどのぉ、そういうことじゃったか」
何か一人でうんうん言いながら納得している。なんだろう、気になるじゃないか。
「何がなるほどなんだ?」
「いや、ファングライガーがおぬしに怯えてた理由がわかったんじゃよ」
「あのデカ猫、やっぱりびびってたのか」
「デカ猫っておぬし……」
ファングライガーとか言いにくい。名前は短くてわかりやすいのでいいんだよ。
「そんで理由は?」
「……まぁ良いか、おほん、理由じゃがの簡単じゃ。おぬしの強い意思に反応した魔力で威嚇したんじゃ」
ふむ、意味はわかったがいまいちピンとこないな。
「何か納得いかない顔をしとるのぉ。まぁおぬしが無意識でやったことじゃからの、仕方あるまい」
「まぁいいか。 とりあえず意思が強いと魔力を操作しやすいってことだな」
「その通りじゃ、追々分かってくることじゃし、先に進むとしようかの。ちと待っておれ」
そう言って彼女は席を立ち、奥の部屋へと行った。
なかなか戻ってこないのでハーブティを飲み干し、部屋を見回しているとタンスの影に姿見の鏡があるのを見つけた。
席を立ち、正面に立つと見慣れたはずの自分の姿がひどく懐かしく感じた。
日本人らしい黒髪黒目にイケメンでもなければブサイクでもない顔、身長も高くもなければ低くもない。体重は学生時代よりは少し増えたが、それでも平均。平凡な会社員で妻と子供二人の二十八歳。
平々凡々の人生を送ってきた。これからもそうなんだろうと思っていた。なぜ、こんなことに……。
席に戻ると笑ってしまった。
覚悟は決めたなどと口では言っていても、未だ後悔している、我ながら滑稽すぎる。
「待たせたのぉ」
戻ってきた彼女は三十センチ程の木の箱を抱えていた。
「あまり使うものはないから、どこにしまいこんだかわからなくてのぉ」
テーブルに置かれた木の箱は埃まみれだった。人の家なのだが、飯を食うところに置くものではないなと眉をひそめてしまった。
「あぁ、すまぬな。《クリーン》」
彼女は俺の視線に気付き、とっさに使った魔法に今度は目を見ひらいてしまった。先ほどまで埃まみれだった箱が綺麗になったのだ。
俺はこの魔法を一番に覚えようと心に決めた。
「なにをそんなに驚いておるのじゃ、……でなんで今度はこっちをそんなキラキラした目で見つめておるのじゃ……」
彼女はこの魔法の素晴らしさに気付いてないのだろうか、道具もいらなければ手間もかからない。エクセレント。
「今の魔法を教えてくれ!」
「……あとで教えてやるから、その目はやめるのじゃ……。話が進まんじゃろう」
「今日一番で感謝する」
「命を助けたことより!?」
掃除は嫌いだけど、汚いのは嫌というワガママを叶えるこの魔法は本当に夢の魔法だと思う。
強く頷き親指を立てる俺に彼女は少し呆れた顔していた。
「少しづつじゃが、おぬしがどういうやつか分かってきたわ……」
「それはなにより」
「はぁ……それで、この箱の中身じゃがのぉ」
彼女はため息をつくと、箱を開け中から綺麗な水晶玉を取り出した。
「これはのぉ、魔水晶と言って魔力を通すと得意な属性が分かるのじゃ」
「属性?」
「基本的な地水火風に光と闇、それ以外にも特異的なものもあるがの、ここに魔力を通せば分かるぞ」
得意な属性が分かればそれを重点的に鍛えれば効果が高いということだろうか。
「ちなみにわらわはこれじゃ」
彼女が手をかざすと水晶玉の中に氾濫した川のように水がたくさん流れていた。
「水か……」
「そうじゃ、そして発生する量によって得意の度合いが変わるのじゃ。分かりやすいじゃろ?」
彼女が手を離すと水晶は何事もなかったように元に戻った。
「ちなみに得意属性でなくても、基本属性は使えるぞ、ただ光と闇に至っては適正がないとほぼ使えん。そして得意属性は産まれつきなどではなく経験や環境が影響しやすいのぉ」
「ほう、親からの遺伝とかではないのか」
「そうじゃの。じゃが親が火を得意としておったら、おのずとそういう環境となり経験も多くなる為、火の属性が強くなるのぉ」
「結果、親と一緒の属性になるわけか」
「そうじゃ。あと光と闇はあまりというかほとんどおらぬの」
まぁ確かに他のに比べたらレアっぽいけど、なぜそこまでいないのだろうか。
「普通の生活の中でも地水火風は自然にあり、色々形を変えイメージもしやすいがの、光と闇はせいぜい昼と夜ぐらいじゃ」
「だから特に意識することがないから影響が出ない」
「そうじゃ、だから使える魔法も光の玉を出すぐらいしかないの。適正を得ようと思ったらそれこそずっと光か闇の中に居続けるとか……」
はっと気付いたようにこちらを見つめてきた。あー、うん、言いたいことは分かる。
俺は黙って魔水晶に手をかざし、魔力を流した。
「……」
「……」
それはもう見事なほどの真っ黒な石になった。
「……すまぬ」
彼女は頭を下げて謝ってきた。なぜ謝ってきたのだろうかと思いつつも、この角度から見る彼女の角のかっこよさのほうが気になってしまった。イカス。
「なにがだ?」
「先ほどから辛いことばかり思い出させているからの……」
頭を上げ、こちらを申し訳なさそうな目で見つめながら言ってきた。本当につくづくお人好しだな。
「まったく気にしていないぞ。むしろ謝られたほうが気にする。それに希少な属性を得られてラッキーだと思ってるぐらいだしな」
別に彼女は一切悪くないしな。それに俺のために色々してくれる彼女に感謝こそすれ、怒る理由などない。
「そうか、ならばこれ以上は謝らぬ」
「そうしてくれ、それよりも魔法の話をもっと聞きたいぞ」
俺は真面目な顔で話す彼女に笑いながら答えた。
一瞬きょとんとした後に彼女も笑顔になり、話し始めた。
「……そうじゃの、続きを話すとするかのぉ」
うん、やっぱり笑顔のほうがいいな。
まぁさすがに、これは照れくさ過ぎるから言わないけど。
「魔法使う上でじゃが、使う属性は一つだけではなく二つか三つにしたほうがええの。おぬしは魔法使いと比べると魔力が少ないから二属性でよかろう」
「まぁ一つじゃバリエーションも少ないし、あまり多くても器用貧乏になりかねないしなぁ」
「その通りじゃ、まぁ一つは闇で良いとしてあと一つはどうする?」
ふーむ、地水火風か。どれにしようか悩むなぁ。正直どれもピンとこないな。
現代社会では自然に接する機会もあまりなかったしなぁ、強いてあげるなら水だろうか。生活の中で一番使うしなぁ……いや……まてよ……。
俺は現代社会においては下手をすれば水以上に身近にあるものをイメージして右手に魔力を込めた。
バチっと独特な音とともに火花のような閃光が辺りを包んだ。
そう、電気だ。
これだと思った。意思の力が反映されやすい魔法ならば直感で選ぶのはおそらく間違っていないはずだ。よし、レフィーラに――
「――なっ!」
再び彼女が突然立ち上がり、俺は驚いて電気を消してしまった。
「おい、何度もおどかすなよ」
「い、今のはなんじゃ? も、もしかして"神炎"ではないのか?」
俺の非難の声を無視して彼女は目を見開きながら聞いてきた。シンエンってなんだ?
「え、いや、なにって電気だけどそのシン――」
「デ、デンキとはなんじゃ?」
こちらの話は聞いてくれなさそうだ。それよりも電気を知らない?
「自然でいうと雷とか――」
「カ、カミナリ? また聞いたことのない言葉を!?」
いやいや、雷ぐらいあるだろう。いや、ここは異世界。俺の常識は通じないんだったな。
「ほら、雨が降ってるときとかに雲がゴロゴロって鳴ってピカッて光ってドカーンってなやつだ」
うん、説明難しいな。一から説明するのも面倒だしな、絵でも描いたらもっと分かりやすいのかもしれないなぁ。
「そ、それはやはり神炎ではないか!」
おお、通じたのか。しかしこちらの世界では呼び方が違うのか。
「なんだ、あるんじゃないか。何をそんなに驚いているんだ?」
「驚くにきまっておろう! 神炎を魔法で再現できるものはほとんどおらぬはずじゃぞ!」
……んんん? どういうことだ? 雷も自然現象でこっちの世界でも名前は違うが存在するのに再現できない?
「も、もう一度、神炎を使ってくれぬか?」
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
再び右手に魔力を込めてイメージをする。
再び電気音と共に辺りを閃光が包んだ。
うん、簡単だな。火を出すときと同じ感覚でできたんだが。
「間違いない……神炎……神の炎じゃ……」
「神の炎? そうか、それで神炎か。でもこれ、炎じゃないぞ」
「な、なんじゃと、木に当たると燃えるし、人に当たれば火傷を負うと聞いたぞ」
なるほど、そういことか。この世界には電気や雷という言葉はなかった。
おそらく魔法がある為、科学があまり進歩しなかったのだろう。その為に雷を少し特殊だが火と認識したのだ。
それが常識となり、イメージが大事な魔法において誤った認識では発動がしないのだろう。
「なにを一人で納得してるのじゃ、わらわにも説明するのじゃ」
一人でうんうん納得してると、レフィーラからのつっこみが入った。しかし、どう説明しようか。
「えーっとだな。まずその神炎は火ではなく電気というものでだな。俺の世界ではそれをエネルギーとして生活に使われていたんだ」
「火ではない……?」
「あー、うん。まったくの別物。ちなみに電気は俺らの体の中にも流れてるぞ」
確か脳からの体への指令は電気信号だったはず。
「わらわの中にも神炎が……?」
レフィーラが自分の両手を交互に見ながら確認してきた。
「炎じゃなくて電気ね。そんで、電気を火と誤認識してるから魔法が発動しなかったんじゃないかな」
俺の話を聞いて、レフィーラは目を見開いた。
「……そういうことじゃったのか! おもしろい! おもしろいのぉ!」
彼女は納得すると愉快そうに笑いはじめた。
「どうした? そんなに面白い話だったか?」
「あたりまえじゃ、この世界の謎の一つがあっさり解けたのじゃからな!」
ふーむ、静電気とかも身近にもあるはずなんだが、なにと思っていたんだろうか。そのうち暇なときにでも聞くことにしよう。
「とりあえず、認識が違うことが分かったからレフィーラでも使えるんじゃないのか?」
「いや、それは無理じゃな。デンキのイメージがつかぬし、いまさら神炎が火と違うと言われても長年そう思ってきた以上、潜在的な否定ができぬ」
「そうか……じゃあ、この世界で使える人間は俺だけになるのかな」
だとしたら、これは生きていく上での武器になるな。
「闇と神炎か。面白い組み合わせじゃ。鍛えがいがあるのぉ」
……なんだろう。彼女はとても良い笑顔で話しているのだが、寒気がする。
「……お手柔らかにお願いしますね?」
「大丈夫じゃ、わらわの特製ポーションもたくさんある。死ぬこと以外は大抵治せるからのぉ」
俺は選択を間違えたのかもしれない。




