森での生活
「これがフォーロレイル大森林……」
ポルレフさんとたちと別れてから二週間旅を続け、辿りついたのは次の目的の町フォレルの近くにある大自然の森だった。
ただ、フォレルの町はここから大森林を挟んで反対側にある為、迂回して向かわなければならず、まだまだ遠い。
「なんかすごい圧倒されるなぁ……」
「すげぇ……」
「すごいの……」
「わふ……」
思わず圧倒されるこの自然の迫力に三人と一匹は見入ってしまう。
「まぁ気持ちは分かるけど、ぼーっとしてても仕方ないから行くわよ」
レフィーラは、そういってまっすぐに森へと向かう。
「おい、まてまて迂回せずに森を突っ切るのか?」
「いいえ? 突っ切らないわよ」
振り返り、こちらを見ると笑って答えた。
この顔は知っている……これは……。
「この森で修行よ!」
ですよね。知っていましたとも。
まぁ俺の力不足も感じたし、子供たちも目をキラキラさせて感動してる。
なんだかんだ言って、レフィーラの修行に無駄はない。
ただ、そのせいで彼女の目的から離れてるような気もするが本人は楽しそうだし今回も甘えることにしよう。
……なんだか彼女に甘えすぎの気もするが、はるかに年上の彼女には――
「なにか失礼なこと考えてないかしら?」
油断なんかしてなかったのに、なぜ俺はアイアンクローを食らったのだろうか。
「き、気のせいだ」
「ふーん……」
めきめきいってる……あ、やばい気が遠く……。
「レフィおねーちゃん、早くいこーよー」
「あ、そうね。日が暮れるとたいへんだし、早くいきましょう」
ナイスアロス、危うく気を失うとこだった。
「おとーさん、だいじょうぶ?」
「あぁ、ありがとう」
リコが近くに来て、回復魔法をかけてくれる。
この子はほんとに――
「あのね、レフィおねーちゃんが怒ること考えたらダメだよ?」
「……考えてないぞ?」
「嘘はダメなの」
おそろしい子!
一体どこまで行くのだろうか。
森を突っ切るどころか、どんどん奥へと向かっている。しかも迷いなく進んでいる。
魔獣除けポーションのおかげで魔獣が襲ってくることはないので、ペースも早い。
「まだかかりそうか?」
「いえ、もう着いたわ」
突然立ち止まり、着いたと言うが森の中のままだ。
「……どこに?」
「ちょっと待ちなさい」
そう言って手をかざすと、ガラスが割れたような音ともに景色も変わった。
先ほどは鬱蒼と生い茂る森だったところが開けた場所となり、小さな家もあった。
「すごいの!」
「すっげー!」
「わふん!」
子供たちは驚き、すぐに開けた場所へと駆け出し走り回っている。
「ここはね、前使っていた隠れ家なの。でも、薬を作るのに素材が足りなくなったから引越ししたのよ」
「そういえば、俺たちのあった森は素材の種類が豊富だったな」
「そう、でもここをそのまま放棄するのも勿体ないから私以外が入れないように結界を張って隠していたのよ」
便利な魔法だと、思ったがそうでもないらしい。結界を張るために特殊な魔石を使った上に先ほど解除したときに割れて使えなくなったそうな。
「ま、とりあえずはここを拠点にしてみっちり鍛えるわよ」
なるほど、メンドールで色々を買い込んでいたのはこの為だったのか。
しかし、せっかく森を出て旅を始めたというのに、まさか一ヶ月ほどでまた森に戻るとはな。
でも前回とは違い、子供たちもいるし自分の弱さも把握できた。鍛えてくれるレフィーラに感謝し、覚悟して挑むことにしよう。
「それじゃ、この森を出るまでにレフィーラより強くなってやろう」
「言ったわね、吐いた唾は飲ませないわよ」
俺は言葉に出して覚悟を決めるのだ。
しかし、そのあとの彼女の言葉と眼光に揺らいだのは秘密だ。
基本的な生活のリズムは一緒だった。
毎朝起きて畑仕事、そのあとに色々修行したり、狩りしたり。
子供たちに教えながら自分も復習をする。
レフィーラも薬の研究をする必要がない為、俺たちの修行に力を入れた。
そんな変わらないような日々だが、イベントは色々と起こるわけで、兎にも角にも忙しい毎日だった。
「おりゃりゃあ!」
「いい突きだ」
アロスの攻撃をいなしながら、周りを警戒する。
「いまなの!」
背後からリコが跳び蹴りを放ってくる。
もちろん警戒していたので、なんなく躱す。
「よっと」
「ぎゃ!」
躱した蹴りがアロスの顔面へとヒットした。
「おにいちゃん、ごめんなのー!」
「ふおおおお」
アロスがごろごろ転がって悶絶している。
「リコ、不意打ちするなら声出すなよ。アロス大丈夫か?」
思い切り直撃していたので、さすがに心配になり近づくが……。
「隙ありぃ!」
「いや、ないぞ」
起き上がり突きを放ってきたアロスの腕をつかみ、頭突きをかます。
「あごっ!」
「おにいちゃーん!」
うむ、甘い。その程度で父を倒そうなどと片腹痛いわ。
「おとーさん、おにいちゃんが動かないの!」
「む、少し強すぎたかな」
再びアロスに近づく。さすがに今回はフリではないようだが……。
「隙ありなの!」
「お前もか」
同じようにリコに頭突きをかます。
「ぎゅん!」
目を回して倒れるリコ。
親指を立てて満足そうなレフィーラ。
レフィーラからも痛みを教えるのも大事だから手は抜いていいが、ちゃんと反撃しろとのことなので実戦的な組手をしている。
しかし、実戦的とはいえ、どんなことをしても勝つという精神……いや、大事だと思うよ?
でも、子供のころからこれだと父としては将来が心配になるぞ。
「今日から魔法を教えます」
「おおー!」
「やったのー!」
ずっと魔力コントロールと身体強化のみだったからなぁ、実に嬉しそうだ。
「できれば二つ属性覚えてもらうけど、とりあえず最初はどんな魔法が使いたいかしら?」
「ん? 魔水晶で得意属性見ないのか?」
「あぁ、それはね……」
以前にも説明があったが、得意属性は経験や環境が影響する。
しかし、子供の場合はその経験も少ないため、例外はあるが得意属性がない状態となる。
だから、好きなことを好きなようにやらせるのが一番いいとのことだ。納得。
「俺、とーちゃんのバチバチしたやつがいい!」
「リコもリコもー!」
雷というか電気がいいのか。そういえば前見せたとき目をキラキラさせてたな。
「それじゃ、キョースケまかせたわよ」
「おいおい」
まてまて、一体どうやって教えればいいんだ。
「見せて、体験させて、説明しなさい。以上」
えー。大雑把すぎないか。
「……子供のことはあなたが良く知ってると思うけど」
「……あー、そうな。子供の吸収力はすごいからなぁ」
子供って、ほんとすぐ覚えるんだよなぁ……いらんことまで。
「よし、じゃあまずはこれを見ろ《纏雷》」
「おおお! かっけー!」
「かっこいいのー!」
いいリアクションだ。
次は一度体験の為に、感電してもらうことにしよう。と言っても身体強化してもらい、こっちは弱めるから安全だ。
「よし、では次にこれに触ってもらうが――」
「よし、わかった!」
「へ?」
遠慮なく手を握るアロス。
「あばばばばばばばばばば」
「おにいちゃばばばばばばばばば」
アロスに触れるリコ。
「のおおおおおおおお!」
混乱する俺。
「なにやってのぉ!」
「おごん!」
レフィーラの跳び蹴りが俺をふっとばす。痛いけどナイス。驚きすぎて《纏雷》解除できなかった。
まさか、いきなり触るなんて。子供の行動が読めないことを忘れていたわ。
そして、レフィーラにみんな叱られたあとに、面白かったねーって言い合ってる子供たちにまたびっくりだわ。
「やっぱ、わからーん!」
魔力感知の練習をしてるが、さっぱりできない。
レフィーラの話を聞いても感覚的なことが多く、話を理解できても実践できる気がしない。
「やっぱり無理かしら」
「ん? どういう意味だ?」
いつものやればできるという感じがしない。何か納得したような雰囲気が見える。
「実は、魔力感知って後天的に覚えた人っていないのよ」
「どういうこと?」
「つまり、分かる人は最初から分かるけど、分からない人はずっと分からないってことね」
「なっ、それ分かっててやらせてたのか!?」
あははと頭を掻きながらレフィーラは語る。
あっさりと魔法を使った俺ならもしかしたら使えるのではと。
そして、お約束のごとく先入観を持たせないために黙ってたと。
「でも、おかげで警戒能力の向上、それに殺気などの気配も分かるようになったのだから無駄ではないはずよ!」
「おまえなぁ……」
「それに、魔力感知は先天的なもので練習で身につけることができないということが証明できたわ!」
もはや、何を言っても無駄な気がする。
「おとーさん、どんまい!」
リコよ、レフィーラに似ないでくれよ。
「おにいちゃん! そっちいったの!」
「まかせろ! 《纏雷》!」
リコが小型の猪型魔獣ボアボアを追い込むとアロスが《纏雷》を使い木の上から飛び降りしとめる。
魔法の習得、体術向上に連携も覚えた二人は狩りも上手くできるようになった。
「しゃあ! 楽勝だぜ!」
が、こういうのは慣れてきた頃が一番危ういのだ。
「アロス! 上だ!」
「へ?」
「おかえりなさい。あら、今日は獲物なしかしら?」
しょげるアロスを見てレフィーラが問いかける。
「いや、《クローゼット》」
「ボアボアにアサルトイーグルね。大猟じゃない、なにがあったの?」
「いや、まぁ、うん……」
獲物を狩り、油断したアロスが別の魔獣に襲われ俺が助けた。
その後こちらが注意を言うまでもなく、猛省し始めた。それだけだ。
「仕留めた時が一番危ないってかーちゃんにも聞いてたのに、油断した……!」
なるほど、母の教えもあったわけだ。しかし、最後は若干油断していたが、それまではずっと警戒していたしそこまで反省しなくてもいいのだが。
「おにーちゃんはちゃんと警戒してたの……耳がちゃんとあればあの鳥の羽の音も聞こえたの……」
……アロスの外耳は切り取られている。内耳は無事だが、犬の外耳は集音器として機能すると聞いたことがある。
おそらく、そのせいでやはり聴力が落ちているのだろう……。
治してやりたいが、すでに傷が塞がった状態ではレフィーラのポーションも効かないのだ。
一体誰がアロスの耳を……。
俺もレフィーラも聞くことができなかった……。
「それは言うな。俺が自分で切り落としたんだから、仕方ないことなんだ」
そうか、自分で耳を――ん?
レフィーラと顔を見合わせる。
ハチもまじっすかと言っている。
「お、おい、アロス。耳は自分で切ったのか?」
「そうだよ。あれ、言ってなかったっけ?」
言ってないし、聞けなかったから聞いてない。
「リコのせいなの……」
「いや、何回も言うけどリコのせいじゃないし、俺が自分で決めたことだ」
意味が分からないので、事情を聞くことにした。
「……ってなわけで、リコのせいじゃない」
俺は唖然とした。
六歳の子供がすることだろうか……。
「こっちの子供はみんな、こんなにすごいのか?」
「……いえ、私も驚いてるわ」
レフィーラも同じように驚いているらしい。
「でも……でも……」
「あーもー、気にするなってー。とーちゃんもリコに言ってやってくれよー」
「あ、あぁ、うん」
ほんとに平然としてるアロス。目に曇りがない。
いや、ほんとにすげーな。思わず頭を撫でる。
「と、とーちゃん、俺の頭撫でてないでリコに言ってよ」
「いや、お前すげーな。とーちゃん、尊敬するわ」
「へあ!? ななななんだよ! 突然! 頭さわんなし!」
手を払われた。どうも俺はアロスの見る目に誤差があったようだ。
アロスは俺が思っている以上に男で兄だった。
そして、そんなアロスが俺に助けを求めたのだから、ここは父として応えるべきだろう。
「リコ。アロスはな、お前の兄だ。だからお前を守るは当たり前のことなのだ。そして、耳を切るってのは守る方法としてアロスが選んだことなんだ」
「ずび……」
「その結果どうだった? リコは安全に町に入れたし、その後もアロスと一緒に過ごせたんじゃないか?」
「うん……」
「じゃあ、あの傷はアロスにとってリコを守りきった証で誇りだ」
「証……誇り……」
「そうだ、あれは勲章。すごく、かっこいいものなんだ。だからリコのせいにしてアロスから取っちゃいけない」
「……そうなの? おにーちゃん?」
「そ、そうだよ! 傷とか、かっこいいだろ?」
「妹を守った傷とか、さらにかっこいいわね」
レフィーラもアロスの頭を撫でながら話に乗っかる。
アロスは顔を真っ赤にしてるな。修行してるときに褒められるのは嬉しそうなんだが、こういうのは苦手か。
「べべべつに、かっこよくなんかねーし!」
走り去るアロス。
「え!? おにーちゃん! どっちなのー!?」
追いかけるリコ。
「最後の、わざとだろ」
「子供らしい部分を見たかったのよ」
なるほど、同意。
「晩ご飯できたわよー」
レフィーラの声で食卓へ向かう。
狩りや組手で腹ペコになっている子供たちの動きは早い。
「いただきまーす!」
「いただきますなのー!」
勢いよく食べる子供たち。
この子たちの食べっぷりはいつ見ても気持ちいい。
俺もレフィーラもつい二人を見てしまう。
「そういえば、お前たちは好き嫌いとかないのか?」
つい、自分の子供は好き嫌いが多かったなと思い出し聞いてしまった。
「ないぞ。食えるならなんでも食う」
「リコも。お腹減るよりいいの」
二人は当たり前のように言う。
この子たちは過酷な環境により、この歳で食べるありがたさを知っている。
そのことをわかっていたはずなのに、思わず聞いてしまったことに後悔する。
「あぁ、そうだな……うん」
「へんなとーちゃん」
レフィーラはなにも言わず、ただ静かに食事していた。
「あ、リコ嫌いな食べものあったよ!」
少し暗い雰囲気となってしまったところにリコが明るい声が響く。
「お、なんだなんだ。好き嫌いはいけないんだぞー」
場の雰囲気を暗くした責任感から、これ幸いと乗じて俺も明るく振舞った。
しかし、このことが俺をさらに後悔させることになるとは露程も思っていなかった。
「それで、なにが嫌いなのかしら?」
「うんとねー! 蜘蛛!」
……ん?
雲かな。雲だよね。あれは食べれないよねー。
「あれは不味かったなー! 俺も嫌いだー!」
「でも、ムカデは食べれたよ!」
アロスとリコはなんの話をしているんだろう。
あぁ、きっと俺の知らない料理なんだな。うんうん、そうにちがいない。
「虫はどれも、あんまり美味しくなかったなー」
「でも、おとーさんが好き嫌いはするなーって……」
虫って言った、虫って。
嘘です、好き嫌いしていいです。
ここはなんとか前言撤回を――
「私は、好き嫌いが少しはあってもいいと思うわよ」
「え、いいのー?」
「ええ、大人になれば食べられるようになるし、好き嫌いもなくなるわよ。ね? キョウスケ」
レフィーラぁぁぁぁ!
「じゃあ、今度から狩りが失敗したら、虫を獲ってくるぜ!」
「リコもがんばるー!」
その日から、狩りに失敗することはなかった。
「こっちに追い込めぇ! 気合を入れろぉ! しゃああらああああ!」
「おとーさん、こわーい」
「久々で腕がなまってるだろう、手加減してやろうか?」
「百年早いわよ、黙ってかかって来なさい」
子供たちの修行も落ち着いてきたので、久しぶりにレフィーラと魔法なしの組手をすることになったのだが……。
「あぁ、すまない。百歳以上年上なのを失念していたよ」
「……殺してあげるわ」
せっかくなので本気でやってもらおうと思って挑発してみたら、殺る気になってしまった。
「……冗談だよ」
「もう遅いわ」
レフィーラの声とともに一足飛びで間合いを詰め、組手が始まる。
いきなりの開始に少し焦るが、レフィーラの動きはよく見えており五分とせずうちに俺のほうが優勢となり始めた。
「よっと」
「くっ!」
回し蹴りがレフィーラのガード上から叩き、後方へと飛ばす。
「……言うだけのことはあるわね」
「そっちもまぁまぁやるじゃないか」
思わず調子を乗ったことを言ってしまった。
いつのまにか体術はレフィーラを超えていたことに嬉しさがこみ上げてしまったのだから仕方がない。
はしゃぎまわりたい気持ちをなんとか抑えただけ、俺は偉いと思う。
「……少し待ってなさい」
そういうとレフィーラは家へと入り、少し待つと杖を片手に出てきた。
そういえば初めて会った時、彼女は杖を持っていた。
そして、俺に体術を教えるようになってからレフィーラは杖を持っていなかった。
「あなたに見せるのは初めてかしら、私の杖術」
にこやかに笑い、一メートル以上はあるだろう杖をバトンのように回している。
「……えーっと、そっちが本職?」
「えぇ、体術はあまり得意じゃないの」
ジーザス……。
「おとーさん、だいじょうぶー?」
ぼこぼこにされた俺は土の上に寝転がっていた。
「次は魔法ありでやるわよ」
リコに魔法で治療してもらい、立ち上がる。
「杖プラス魔法とか手も足もでないぞ」
「素手でやるわよ。あなたが調子に乗りさえしなければね」
「はい、すみませんでした」
「でも、魔法は本気で行くわよ」
鬼。
口には出さないけど。
思想の自由だ。
あれ、なんでレフィーラは杖を手にしてるんだ。
「おとーさん……」
「とーちゃん」
「アニキ……顔に出すぎっすよ」
まじですか……。
またすぐにぼこぼこに……はされず、なんとか耐えている。
防御に徹し、《纏雷》も駆使しているおかげだが。
気を抜くと一気にやられそうだ。
「《ホワイトアウト》」
聞いたことない魔法だ。一体どんな――。
辺りに大量の雪が舞い、視界を遮られる。
――まずい! こっちは相手の位置が分からないけどレフィーラには魔力感知がある。
「《サークルロック》」
さらに新魔法。
消えた視界の中で身構える俺を中心とした氷の輪が縮まり、躱すこともできず捕らえられるが――。
「《クローゼット》!」
俺を捕らえた氷の輪を影へと仕舞い込む。
《クローゼット》があることはレフィーラも知っている。
つまり、狙いは別――。
「そこだぁ!」
後ろからの殺気と気配を感じ振り返りざまに拳を打ち込む。
あの動きを封じる魔法の本当の狙いは俺の《纏雷》の解除と一瞬の隙を作ること。
拳に手応えを感じ、勝利を確信するが――。
「土の壁……?」
「《アイスブレイド》」
氷の刃が首元に突きつけられる。
やられた。
途中までの読みは当たっていたが、さらにその先の《アースウォール》だけ無詠唱で発動していたは読めなかった。
「……まいりました」
「どうじゃ? 詠唱破棄と無詠唱の使い分けも便利じゃろ?」
確かに、全て無詠唱ならもっと警戒していただろう。
今回はいい勉強になった。
「……しかし、その姿久しぶりだな」
「ん? 結構、魔法使ったからの、この姿は久しぶりじゃ」
雪がなくなり視界が戻ると子供たちはぼーぜんとこちらを見ていた。
「そういえば、子供たちにはその姿初めてじゃない?」
「あー……そういえばそうじゃ……」
何か元気がない。怖がられたりしないか不安なのだろうか。
だが、それは杞憂だと思うぞ。
「ね、ねーちゃん?」
「……レフィおねーちゃんなの?」
「あー……そのな……魔法使うとの魔族の姿に戻るのじゃ……」
やはり、不安のようだ。相手の目を見ずに喋っている。
レフィーラらしからぬ行動だ。
目を見ればすぐにわかるのに……。
「かっけええええ!」
「すごいのおおお!」
「……は?」
目キラキラしてたからな。
「変身とかいいなー!」
「話し方も変わってるのー!」
「……怖くないのか?」
あんな弱気なレフィーラ、初めて見たかも。新鮮でいいな。
「え、全然! 角とかすげぇかっけぇ!」
「髪とかもすごい綺麗な色なのー」
「そ、そうか……かっこよくて綺麗か……」
「「うん」」
そのあとはわちゃわちゃしながら話が盛り上がっている。
合間を見て、この姿を他の人に見せにくい事情などを話してあげる。
「こんなに綺麗なのにねー」
「うん、もったいねーな」
うんうん、だよね。
この子たちは先入観なく自然に受け入れる。
この感性をそのまま育てていきたい。
「ま、そういうわけだから、とりあえず町とかではレフィーラは魔法が使えないから、お前たちが守ってやってくれよ」
「まかせとけー!」
「わかったのー!」
まぁそれでも今の俺たちより強いだろうけどな。




