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ほっといていいんじゃない?

「うおおおお!」


 黒字にする為、薬草類を集めまくる。

 西の森はレア種はないが、量はたくさんあったので、とりあえず集めまくった。


「むむ! なんか魔獣っぽい気配がする! 《(オボロ)》!」


 魔力感知はできないが、森での長い生活により五感を駆使しての気配感知はできるのだ。


「ぬ……あれは……」


 木の陰に隠れて、様子を伺うと一匹の熊型魔獣が出てきた。確か名前はレッドベア。赤茶色のでかい熊だ。

 今の俺なら割と簡単に勝てるが今狩る必要はないし、肉もそんなに旨いやつではないのでスルーする。

 しかし、熊型魔獣の中では最弱だが、元々熊の時点で相当強い。

 西の森はあまり強い魔物が出ないとか言ってたが、あれも強い部類に入らないのか、冒険者恐るべし。

 この世界に来た時の俺なら一瞬で殺されてたな、うん。


 しばらくするとどこかへ行ったので、《(オボロ)》を解いて木の陰から出た。


「よし、再開するかな」

「なにをかしらぁ?」


 いきなり、横から声がした。

 ドラマや漫画じゃ、こんな時は「薬草採りだよ……え?」なんて答えてから気づく展開なんだろうが、実際は超びびる。

 すぐさま横を向いて、確認するとカミリアがいた。目をぱっちりと開いて。


「っ!」


 すぐに跳んで距離を取った。

 冷や汗が止まらない。森でいる時はレフィーラの教えもあり、油断などしない。常に五感を張り巡らせ警戒していた。

 ここまで、近づかれるまで気づかないなんて……いや、その考え自体が驕りで油断につながったのか……。

 反省は後にしよう。今はカミリアに集中だ。


「……なんの用だ?」

「んー、ほんとに効かないのねぇ、ふふ」


 魅了の魔眼のことと思うが、何がそんなに嬉しいのだろうか。


「そんなに警戒しなくても、大丈夫よぉ。別に争いに来たわけじゃないわぁ」

「それを信じろと?」

「まぁ無理よねぇ。でも何かするつもりなら……ねぇ?」


 うぐ、痛いとこをついてくる。確かに何かするつもりなら、さっきの時点で俺は詰んでいただろう。


「……はぁ、結構警戒してたつもりんだが……」


 降参とばかりに手を上げるが警戒は、緩めない。


「風の魔法で音とか遮断したのよぉ。それでも魔力探知や風の細かい流れで分かるものだけど……まだまだねぇ」


 なるほど、今の一連の流れでこちらの実力は大体把握されたのだろう。


「はぁ……それで?」

「ちょっとお話がしたかったのぉ」


 そう話すカミリアの目を見つめる。なんというか嘘を言ってる感じがしない。

 勘でしかないのだが、最近の経験から殺気や敵意というものがなんとなーく分かるようになってきた気がする。

 それをまったく感じないのだから、本当に話があるだけなのかもしれない。


「そんなに見つめられたら照れるわぁ」

「……目が光っていないが魔眼は発動していないのか?」


 とりあえず、会話の主導権を握るためにこちらから質問してみる。


「ううん、これは自動発動よぉ、私の意志なんて関係ないわぁ。産まれたときからずっとよぉ」


 笑ってるのに無表情……いきなり地雷を踏みぬいたかもしれない。

 産まれてからずっと魅了の魔眼が常時発動……あまりいい想像が思いつかなかった。


「……そうか」

「うふふ、本当におもしろいわぁ。そんな反応は初めてよぉ」


 俺の苦い顔を見てカミリアは楽しそうに笑う。


「うん、やっぱり決めたわぁ」

「なにを?」

「ねぇ、私と一緒に行かないかしら?」


 カミリアは右手をこちらへと差し出した。

 なるほど……どうやら、自分の組織にスカウトしに来たというわけか。


「……断ったらどうするんだ?」


 さらに警戒を強め、彼女に問う。


「え? 別にどうもしないわよぉ? 私ががっかりするだけよぉ」


 ……ん?


 なんか、思っていた反応と違った。

 てっきり、仲間にならないなら殺すわーとか脅してくるかと思ったんだが……。


「なによぉ、その顔は。別に思い通りにならないからって脅したしないわよぉ」

「え、そうなの?」

「そうよぉ、それだったら魔眼使ってた時と変わらないじゃない。意味がないわ」


 力づくで勧誘したくないのか……でも……。


「俺が悪党の仲間になんかなると思うのか?」

「え? それなら、悪いことやめたら仲間になってくれるのぉ?」


「……やめろって言ったらやめるのか?」

「やめるわぁ。だから私と一緒に行きましょうよぉ」


 話せば話すほど、意味がわからなくなっていく。

 てっきり自分の組織に取り込むのかと思ったらやめるとか言い出すし。

 俺に惚れたのかとも思うが、カミリアから恋慕の情は感じない。俺が鈍いだけなのかもしれないが。

 ただ、なんというかレフィーラやリコットのように家族に対する情愛のようなものを感じる……気がする……。


「……悪いが一緒には行けない。だが、悪いことはやめろ」

「ずいぶん、勝手な話ねぇ。だけど、それならせめて好きな時にあなたに会いに行くぐらいはいいかしら?」


「……あと、警備兵に出頭しろ」

「それは、無理よぉ。あなたに会えなくなるじゃない」


 普通はこんな美人にここまで言われたら男冥利に尽きるのだろうが、子供を売り捌くような悪人だしなぁ、いまいち信用できない。

 ハチがいれば《雷神(ライジン)》で無理やり捕まえることもできたんだろうが、今の俺では勝てるか分からない。


「……わかった、それでいい」

「うふふ、ありがとぅ。それじゃ、私は用事ができたからいくわぁ」


「え? あぁ、またな」

「……またねぇ、うふふ」


 ……なんだろう、最後の笑顔は子供のような笑顔で自然だった。

 本当に悪いことをやめて真っ当に生きる気なのだろうか……。

 正直、今度会ったときにハチがいれば無理やり捕まえてやろうかと思ったが、それをすると罪悪感で後味が悪くなりそうだな……。

 まぁ、悩んでも仕方ない。今度会った時の俺にまかせよう!

 今はピンチをしのいだ俺ぐっじょぶ!







「……ということが今日あったんだが」


 夜中にレフィーラに相談した。


「実際に見たわけじゃないから、なんとも判断しにくいわね。あなたはどう思うの?」

「うーん、あの感じだと今のところは大丈夫な気がする……」


「なら、ほっといていいんじゃない?」

「……適当だな」


「会ってない私の判断よりも、会って感じたあなたの直感の方が当てになるわ」

「確かに……」


 まぁ、あの感じなら次会う時にいきなり殺すとか物騒なことには、ならないだろう。

 あるとしても何かしらワンクッション挟むはずだ。

 それなら、レフィーラの言う通りほっといて次に会った時、判断すれば……


「それよりも」

「ん?」


 思考を遮られ、顔あげてレフィーラの顔を見た。


「あっさりと背後を取られて、声を掛けられるまで気がつかなかったのねぇ……」


 ……この笑顔、久々に見た気がする。


「子供たちの基礎が終わったら、あなたも鍛え直しよ」

「はい、すみませんでした……」


 この世界の女性は物理的に強い人が多い気がする……。

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