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青空教室

「それでは授業を始めまーす」

「はーい」

「はーいなの」


 レフィーラがにこやかに青空教室の開催を宣言したのは、町の中にある公園。

 俺が神炎魔法というか雷魔法を教える前にまずはレフィーラが基礎を教えることになったのだが、部屋ではなく外でのびのびやるのがいいとのことなので、ここに来たわけだ。

 公園は広く、そんなに人が多いわけでもないから周りもあまり気にならない。


『あにきー、俺っちのことは言わないんですかー?』


 魔法の基本についての授業をしてる中、芝生に座る俺にハチが寄り添い念話してきた。


『正直に話しても、お前のあの禍々しい魔力なんとかしないと見せられないだろう』

『まぁ、そっすねぇ』


『それにもう、完全な犬だし』

『完全な犬ってなんすかー! ひどいっすよー!』


 そう言って拗ねるように伏せ、後ろ足で頭とか掻いている。

 うん、すごい馴染んでるね。


「せんせー質問です」

「はい、アロスくん」

「僕は獣人ですが、本当に魔法は使えるんでしょうか」


 ハチを撫でていると、基本的な説明は終わったようだ。


「はい、先ほども説明しましたが、魔力は誰にでもありますから、大丈夫ですよ」

「でもお母さんは使えないって言ってた……」


「それはね、子供の時に魔法を使うのは危ないから、嘘をついていたのよ」

「え……そうなの……?」


「そうよ、素直に危ないから使っちゃだめーって言っても子供は聞かないからね」


 獣人族は基本的に魔法が使えないというのがこの世界の常識となっている。

 アロスの母親もそのつもりで話をしたのだろう。

 しかしそれを説明するよりも、こちらの方が自然に偽りの常識を取り除けるだろう。

 嘘も方便だな。


「そっかぁ、俺も使えるのかぁ」

「良かったね! おにいちゃん!」


 魔法は思い込みが大事。

 これなら、きっとアロスも魔法が使えるだろう。


「それでは、さっそく自分の魔力を感じる練習をします」

「はい!」

「はいなの!」


 俺と同じような説明を受け、二人は頑張るが苦戦している。

 リコは回復魔法を使えたはずなんだが、魔力は意識せずに使っていたようだ。


「それじゃあ、二人とも芝生に寝転がって」

「ん? これでいい?」

「寝るのー。ぐー」


 何か始めるようだがリコよ、寝るのは違うと思うぞ。

 ほら、頭叩かれた。


「それじゃ、仰向けになってー、力抜いてー」


 せっかくなので、俺も同じように寝転がってみる。


「そして、目を閉じてー、体の中に意識を向けてー」


 余計な力が入っていないから、魔力がはっきりと分かる。


「寝ちゃだめよー。とりあえず、そのまま自分の魔力を感じるまで頑張りなさい」

「はい!」

「はいなのー。ぐー」


 リコは寝つき良すぎだろう。

 あ、また叩かれてる。

 このじっと寝ないで集中して魔力を探る練習は子供にはちとキツイかもしれないな。


「キョウスケ、とりあえずはこのままだから今のうちにお昼御飯を買ってきてちょうだい」


 ふむ、まだ昼前だが今から調達に行けば丁度良さそうだ。


「分かった。なんかリクエストあるか?」

「まかせるわ」

「あいよー」




「思ったより時間がかかったなぁ」


 昼飯を調達して戻ると子供たちはハチと楽しそうに追いかけっこをしていた。

 さすがにあの練習だけでは飽きたのだろう。


「ただいま、やっぱ子供はじっとするの苦手だし、あの練習はきつかったか」

「なにを言ってるの? 子供たちをよく見なさい」


 レフィーラの言葉の意味がよく分からず子供たちを見てみる。


「あはは、待て待てー!」

「リコー! はさみうちだー!」

「わふっ!?」


 ……あれ、なんかハチが必死に逃げてる……というか、足速すぎじゃね?


「もしかして、《身体強化》使ってるのか?」

「そうよ、さすが銀狼族と聖人ね」


 リコは分かるが、特に気にならなかったアロスの銀狼族とは、なにか特別な種族なのだろうか。


「すまん、銀狼族について教えてくれ」


 レフィーラによると、狼タイプの種族で特徴はその銀色の髪と高い戦闘能力を持つということ。

 しかし、その戦闘能力の高さゆえに群れることをせず、個体数は非常に少ないらしい。

 ちなみに銀色の髪自体は珍しい色でもない為、レフィーラも言われるまで気づかなかったそうだ。


「もともと、体の使い方も上手だったから魔力を感知してからの成長速度が並じゃないわね」


 リコも、回復魔法自体はすでに使えていたため、コツを掴むとあっという間に《進退強化》を覚えたそうだ。


「ちなみに二人とも、キョウスケよりも魔力多いわよ……」

「あっという間に抜かれそうだな……」


「そんなに嬉しそうに言わないで。あっさり抜かれたら父親としての威厳がなくなるわよ」

「はは、努力するよ」


 子供たちに才能あると知って嬉しくない親はいない。

 ついつい顔がにやけてしまうのも仕方ないということだ。




 昼食を終え、レフィーラにこれからの予定を聞く。


「食事をした後だから、まずは体内の魔力操作の練習ね。そのあとは魔力が切れるまでハチと追いかけっこよ」


 とりあえずは今は基礎を鍛えるそうだ。

 俺の出番は当分ないらしい。


「それなら、俺は明日はギルドで依頼でも受けてくるよ」


 父親として、何もしないのも抵抗がある。

 そして、旅費を全部レフィーラの資金で賄っているのも抵抗がある。

 というわけで、この機会に冒険者ギルドで依頼を受けることにした。


「別に構わないけど、お金には困ってないわよ?」


 わかっているが、ここは男としての譲れぬものがあるのだ。

 さんざんヒモ生活をしていて今更かもしれないが。


「とりあえずは、その日に達成できそうなやつにしておくよ」

「まぁ、好きにしていいわよ」




 というわけで翌日、日の出と共に起き、まだ眠っている子供たちを起こさぬように静かに部屋を出た。

 子供たちは昨日本当に限界まで走り回っていた。

 厳しい修行のように思うが、実際はずっと追いかけっこをして遊んでいただけなので、楽しそうでなによりだった。

 途中から俺も混ざったが遊ぶ時の子供の体力の無尽蔵さは、どの世界も同じなんだなぁと思った。

 子供たちのことを考えると思わず笑顔が出てしまうことに感謝をしつつ、自分に気合を入れギルドへと向かった。




 ギルドに入ると朝早い為か、冒険者の数もまばらだった。

 依頼の張り出してある掲示板へと向かい、一つ一つ内容をチェックしていく。

 ギルドランクは最低のFの為、できる依頼も少ない。

 まぁ、もともと危ない依頼なんて受けるつもりはさらさらないけど。


「これでいっか」


 近くの森で薬草種の採取で最低三十本。種類によって買取値段は違うがなんでもいいらしい。

 植物系の採取についてはレフィーラに散々叩き込まれたからな。


「すみません、この依頼を受けます」


 剥がした依頼書を受付に持っていく。


「は、はい……受理します……」


 ……なんだろう、受付の人に元気がない。

 というか他の従業員もフラフラしている。

 なにがあったんだろうか。


「だ、だいじょうぶですか?」

「え、あ、すみません。西の森なら魔物も強くありませんので、おすすめですよ」

「あ、はい、いってきます……」


 気になるが、何も聞くな的な雰囲気を感じたので、その場を離れ出口に向かうと……。


「なんか昨日からギルド員ずっとせわしなく働いてねぇか?」

「お前しらねぇのか? ギルドマスターがなんかやっちまったらしいぜ」

「は? あの美人エルフの?」

「あぁ、なんでも指名手配とかで……」


 なんて会話が耳に入ってきた。

 

 ……俺はまったく悪くない、悪くないぞ。




「あの、これ栄養ドリンクです。頑張ってください」

「へ? あ、ありがとうございます」


 レフィーラ特製栄養ドリンクを従業員の人数分、受付に渡して逃げるように外に出た俺は気付く。

 あのドリンクはそこそこレアな薬草種が混ざったものだったはず。




 もうすでに赤字じゃね?

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