リコット その3
「おにいちゃん、荷馬車が来たよ」
「あぁ、乗り込むぞ」
通りすぎた荷馬車にこっそりと乗りこんで町の中に入ったの。
中に入ったら、あとはこっそりと降りて、侵入成功なの。
「人がいっぱいなの」
「結構でかい町だからなぁ」
「これから、どうするの?」
「とりあえず、町の中を探索して住めそうな場所とか探そう」
「わかったの」
それから、町の中を歩きまわったの。
魔獣さんもいないから、こそこそしなくていいの。
「……ちょっとこの公園で休憩しようか、リコ」
「疲れたの……」
夕方になってもいいところは見つからなかったの。
疲れたから公園の原っぱにねっころがるの。
「おにいちゃん、どうするの?」
「そうだなぁ、あいつらに聞いてみるかな」
「あいつら?」
おにいちゃんはそういって、後ろにふりむいたの。
「おーい、そろそろ出てこいよ。後をつけてるのバレバレだぞ」
そう言うと、木の陰から子供が四人出てきたの。
「……いつから、気づいてたんだい?」
「……いや、最初からだよ。大きい声で喋ってたじゃん」
え、あれ、つけてたの?
おっきい声で話しながらついてきてるから変なのって思ってたの。
「あぁ、やっぱりばれてたか」
「あんたがでっかい声で喋るからじゃん!」
「俺のせいかよ! お前もうるさかったじゃねぇか!」
「あはははは」
なんか四人でいっせいにしゃべりだしたの。
「いや、ごめんごめん。僕はクラヴィスで、このでっかいのがバルザーで女の子がエレサ、あの糸目がアンディ」
「よろしくな」
「よろしくね」
「よろしく~」
みんなリコよりおっきいけど、歳は近そうなの。
「俺はアロスだ。よろしく」
「リコはリコットっていうの。よろしくなの」
「この子可愛い! 連れて帰るわ!」
「むぎゅ」
エレサに抱きつかれたの。
「んで、なんか用があったんでしょ」
「ん? あぁ、お前たち孤児だろ」
「……なんで分かる?」
おにいちゃんが、山にいるときと同じ感じになったの。ちょっと怖いの。
「ここに住み着いて、結構経つけど初めて見たし、最近誰かが引っ越してきた情報もなければ、ずっと二人きりでうろついてるのも変だしな」
「住み着いて?」
「そうそう、俺たちも同じ孤児だ」
いつものおにいちゃんに戻ったの。
こっちのほうが好きなの。
「そんで、俺たちの仲間にならないかって思って声を掛けたわけだ」
「仲間……」
「とりあえず、俺たちのアジトに来ないか? もう暗くなるしな」
「アジト? おうちがあるの? すごいの!」
「はぁ……わかった。お邪魔するよ」
おにいちゃんは何か言いたそうだったけど、リコを見て、溜息をついたの。失礼なの!
「すごいとこだな……」
「だろ? ここなら雨風もしのげるし、安全だ」
アジトは地面の下にあったの。すごいの。川も流れてるの。
「なんで地下に川があるんだ?」
「下水だよ、知らないのか?」
「お魚いないの?」
「ははっ、魚はいないよ。ここは生活排水が流れてる場所さ」
せいかつはいすい。
リコにはむずかしいの。
「まぁ各家に、浄化の魔石があるから流れてるのは割と綺麗な水だけど、飲むのは止したほうがいいよ」
「そ、そうか」
おにいちゃんもよく分かってないようなの。
「とりあえず、改めて自己紹介して話をしようか」
「そうだな」
「するのー」
クラヴィスとバルザーが八歳でエレサとアンディが七歳なの。
みんな、戦争でおとーさんとおかーさんが死んじゃって、ここで暮らしてるらしいの。
「俺たちの村は戦争に巻き込まれてな。この町に避難してきたってわけさ」
「まぁ、でも俺たち四人いて良かったな!」
「そうね、一人じゃ、きっと泣いてるだけで何もできなかったもの」
「ほんと、ほんと」
リコもきっと一人じゃなにもできなかったの。
おにいちゃんがいたから、がんばれたの。
みんな一緒なの。
だから、友達になれるの。
こうして、リコたちとクラヴィスたちとの生活がはじまったの。
クラヴィスはみんなのリーダーで、とても賢いの。
でも、けんかはあんまり強くないの。おにいちゃんにいつも練習で負けてたの。
バルザーは大きくて怖いけど、じつはとても優しいの。
力も強くて、おっきい荷物も運んでくれるの。
エレサは服とか縫えるの。すごいの。
でも、いつもリコに抱きついてくるの。ちょっとくるしいの。
アンディは気がついたらいないの。でも気がついたらいるの。いつもリコをびっくりさせるの。
でも、町のことをよく知ってて、お菓子とかよくくれるの。
いつも、たいへんな毎日だったけど、とっても楽しかったの。
でも、それもあんまり続かなかったの。
新しい警備兵さんが来て、リコたちを捕まえはじめたの。
なにも悪いことしてないのに。
「アロス! リコをアジトに連れて逃げろ!」
「クラヴィス、おまえはどうするんだ!」
「このまま捕まった仲間を助けにいく!」
「一人じゃ無茶だ! 俺も行く!」
「だめだ! リコを一人にするのか!?」
「リコも手伝うの!」
みんなのためにリコも何かしたいの。
「リコ……おれが仲間つれて戻るから、アジトを守っててくれ」
わかってるの、きっとリコは役にたたないの。
「……うぅ、まっでるがら……もどっできてね……」
泣いてるリコの頭をおにいちゃんがなでてくれるの。
「んじゃ、アロス頼んだぞ」
「あぁ、待ってるぞ」
そういってクラヴィスは走っていって、そのまま戻ってこなかったの。
それから、リコたちはアジトに隠れてるときが多くなって、食べ物が手に入らなくなったの。
「……おにいちゃん、お腹すいたね」
「……リコ、山に戻ろうか」
「もうちょっと待つの……もう少ししたら戻ってくるかもしれないの」
「そっか、そうだな」
わかってるの。もう、たぶんみんな戻ってこないって。
でも、リコたちは山に戻っても、二人じゃ危険なの。
「よし、ちょっと外行ってくる」
「え、おにいちゃん、まだお昼だよ」
「わかってるけど、最近はずっと外出てないし、きっともう大丈夫だよ。リコは待ってろよ。俺一人なら走って逃げれるしな」
「……わかったの」
そういってアジトを出るおにいちゃんを見ると、とても不安になったの。
みんなみたいに、戻ってこないかもって。
だから、こっそり後を追ったの。
おにいちゃんにばれないように着いていくのはたいへんだったの。
きっといつものおにいちゃんなら気がついてたの。
でも、おにいちゃんもお腹がへって、いつも通りじゃなかったの。
こっそりとみてると、おにいちゃんが急に町の通りに出て走り出したの。
すぐにおいかけて、通りをのぞくと――
「おらぁ!」
「うぐっ!」
おにいちゃんが怖いおじさんに蹴られてたの。
リコはすぐにおにいちゃんのとこに走ったの。
「おにいちゃん! だいじょうぶ!?」
「……リコ、なんでここに……」
おにいちゃんは体がキズだらけだったの。
お腹もけられて苦しそうなの。
「人の食べ物とろうとしやがってよぉ……」
「……ちがう、捨てたから拾おうとしただけだ……」
「おにいちゃん……」
リコがお腹空いたって言ったから……。
「このガキなめてんじゃねぇぞ!」
怖いおじさんは剣を抜いたの。
「コソドロめ! お前たちみたいな町のゴミは俺様が掃除してやるよ」
リコはすぐにおにいちゃんの前に出たの。
止めないと、おにいちゃんが斬られちゃうの。
「ごめんなの! お兄ちゃんは私の為にやったの! 許してほしいの!」
「待て、妹は悪くない……止めてくれ……」
おにいちゃんはリコの前に出ようとするのをリコがおさえていたら、おじさんが剣をふりあげたの。
止められなかったの……でも、せめておにいちゃんはリコが守るの。
いつも守ってくれたおにいちゃんをこんどはリコが守るの。
だから両手をいっぱいひろげて前にでたの。
「安心しろ、仲良く掃除してやるからよ!」
リコは怖かったけど、目をとじなかったの。
あの剣がおにいちゃんじゃなくリコに当たるために。
おかあさん! おにいちゃんを守って――
「てめぇが掃除されろや!」
「どぼんぬ!」
……おかあさんにお願いしたら、怖いおじさんは飛んでいったの。




