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ギルドマスターは伊達じゃない

「だから、隊長いつも言ってるじゃないですか! 口も悪けりゃ、言葉も足りないって!」


 隊長ことファルケンを叱っているのは、副隊長のラビリスという名のイケメンだ。

 金髪のサラサラショートヘアー、碧眼で身長はもちろんファルケンより高い。

 

「す、すまん。でも、あいつ、いきなり魔法を撃ってきやがったんだぜ……」

「あんたが、槍構えるからでしょうが……」

「いや、まぁ……ついな……」


 どうも、お互いにカミリアの仲間と勘違いをしていたらしい。

 とりあえず、レフィーラとラビリスのおかげで誤解は解けたが、時間が惜しい。


「すまないけど、その話はとりあえず後にして、東出口へ向かおう」


 西と北出口は他の警備兵の情報により特に異常はなかったらしい。

 南出口は俺たちが入ってきた出入り口で、その先に大きな町はない為、こちらから出ることはないとのこと。


「そうね、急ぎましょう」

「あんたも来るのか?」

「ええ、なにか問題でも?」

「足手まといだ、ここに残れ」


 ファルケンがレフィーラに厳しい声を掛ける。

 レフィーラは特に怒ることなく、じっとファルケンを見ている。

 俺もファルケンを見るが、悪意を感じない。


「隊長! 言ったそばからダメじゃないですか!」

「いや、だが、ついて来ても危ないだろう!」


 どうやら、純粋に心配して言ったようだが、不器用な人だな。戦い方は器用だったのに。


「レフィーラは薬師だ、怪我人がいるかもしれないし、いた方が助かるぞ」

「それに、自分の身ぐらいなら自分で守れるわ」

「……前に出るなよ」

「わかったわ」


 急いでいるため、あっさり了承して、東出口へ急ぐ。

 せっかくなので走りながら気になっていたことを確認することにした。


「そういえば、この町で捕まえた子供たちはどうした?」

「ん? あぁ、この町には孤児院がないからな、ベリグロウに送った」

「へぇ、あの学術都市ね」


 そういえば、前に話に聞いたことがある。

 育成機関や研究機関などが集まった町があると、確かベリグロウって名前だったな。


「あぁ、あそこなら孤児院もあるし、学校も通えるから、まじめにやってりゃ仕事にもありつけんだろ」

「隊長も、あの町で育ちましたもんね」

「余計なこと言うんじゃねぇよ」


 本当にいいやつっぽいな。

 ちょっとカミリアのせいで人間不信になりそうだったけど、こいつらは大丈夫な気がする。


「いたぞ!」


 東出口が見えてくると、荷物を積んだ馬車とカミリアがいた。

 駆けつけるとカミリアもこちらに気づいた。

 迂闊に近づくと危険なので、距離を置き停止する。


「あらぁ、みなさん、こんな夜更けにどうしたのぉ?」


 変わらぬ表情で声を掛けてくる。

 一瞬、こいつが本当に黒幕なのかと疑ってしまうほどのポーカーフェイスっぷりだ。


「キョウスケ、馬車の荷物に二つの魔力を感じるわ」


 レフィーラが小さな声で教えてくれた。

 どんな状態か、わからないけど二人が生きて、あそこにいる。

 それで十分、あとは助けるだけだ。


「……タレコミがあってな、その馬車の荷物を検分させてもらおうか」

「……しくじった上に、名前まで出したんだぁ……使えないやつぅ」


 雰囲気が変わった……何か嫌な感じがする。


『アニキ……あいつ、相当やばいっすよ……おれっちを使いますか?』

『こんな街中で、お前は使えない。なんとかしてみるよ』


 ハチも何か感じ取ったみたいで、忠告してくる。


「カミリアねぇさん、話が違いますぜ」


 御者の男がカミリアに声を掛けている。


「……問題ないわぁ、こっちで処理するからぁ、あなたは行っていいわよぉ」


 そう言うと、御者は馬車を出発させようとする。

 逃がすわけには行かない。カミリアは何か得体が知れなくて怖いがとりあえず、あいつを抑えれば馬車もすぐ止めれる。

 右手に魔力を込め、《走雷(ソウライ)》を放とうとした瞬間、カミリアがこちらに向いて構えた。


 ――魔力感知か!? 躱される!


「《走雷(ソウライ)》!」


 咄嗟の判断で照準を馬車の車輪へと変更し、威力を抑え、燃やすことなく破壊することに成功する。

 音と衝撃に馬は嘶き、御者は転げ落ちる。


「お、おい、どうするんだ! 契約違反だぞ!」

「すぐに処理するわぁ、あなたは隠れててぇ。しかし、詠唱破棄に見たことのない魔法……デボットじゃ無理なわけねぇ……」


 御者の男はそそくさと後ろへと走り隠れた。

 しかし、こんなに音を出しても、町の人はともかく衛兵がまったく来ない……。

 少しでも応援が来れば、だいぶ楽になりそうなんだが。


「なんで衛兵が来ないんだ?」

「……買収でもされたんだろ」

「すみません、後で必ず捕まえます……」


 ファルケンはふてぶてしく、ラビリスは申し訳なさそうに言う。

 ラビリス……苦労してるんだろうなぁ……。


「悪いけどぉ、時間をないしぃ、一気に決めさせてもらうわねぇ」


 カミリアは右手に持っていた杖をこちらへかざした。


「息吹運ぶは風が源流……」


 ……なに言ってんだ?


「ちぃ! 詠唱なんてさせるかよ!」


 ファルケンが槍を構え、カミリアへと距離を詰める――


 ――あれが詠唱! 初めて聞いた! っていうかちょっと待て、詠唱って……


「キョウスケ!」


 ――人族しかしない!


「ファルケン! 罠だ!」

「っ!」


 ファルケンは急ブレーキをかけつつ、そのまま槍で突く。

 間合いに入っていた槍は、そのまま詠唱中のカミリアを貫くかと思われたが、そこから紙一重で躱すと同時に杖の先を左で持ち居合いを放つ。


 ――仕込み杖!


 ファルケンは槍を引きながら後方へ跳ぶが刃が一閃――


「隊長!」


 一瞬、時が止まったように静寂が訪れる中、カミリアは刃を鞘へとしまう。


「……もぉ、あと半歩踏み込んでいたら、その首を切り飛ばせたのにぃ」


 ファルケンの首からは血が流れるが薄皮一枚。


「くそが……」


 流れる血を気にすることなく、カミリアを睨みつける。


「大体の人族は今ので、ケリがつくのにぃ。よく気づいたわねぇ」


 一般的に、エルフは肉体的にはあまり強くなく魔法に強いと聞いていた。

 初見で、魔術師の格好をしているエルフが、あんな動きをするなんて思わないだろうな。

 しかも、ずっと眼を閉じてるし……おそらく、魔力感知で察知してると思うのだが、精度高すぎだろう……。


「私はねぇ、エルフの癖に魔法が苦手なのぉ、だから生きる為に技を鍛えたわぁ」


 嘘だな。

「嘘ね」

『嘘っすね』


 魔力感知もできるようなやつが、使えないわけがない。

 あいつは、息をするように嘘をつくやつだ。はっきり言って、会話するだけ損をするタイプだが、迂闊に突っ込むのも危険だ。

 時間を稼げば、いずれ応援が来るはず。

 ここは、このまま意味のない会話に乗って――


「なら、魔法に警戒する必要はねぇ! 突っ込むぞ! ラビリス援護しろぉ!」


 ――ええええええ!? 鵜呑みにしてるううう!


 レフィーラとハチもきょとんとしてる。


「隊長おお! なんで信じてるんですかあああ!」


 ラビリスが剣を抜き放ち、二つの意味で突っ込んでいった。


「《風よ》!」


 突っ込んできたファルケンにカミリアはカウンターで魔法を放った。


「なにいいいいいい!」


 放たれた風の刃のような魔法にファルケンは槍で受け、そのまま吹き飛び、こちらへ戻ってきた。

 ラビリスも、たいちょおおって叫びながら戻ってきた。ほんと、忙しそうだ。


「くそがぁ! 魔法使えんじゃねぇかよ! 騙したなぁ!」

「苦手とは言ったけどぉ、使えないとは言ってないよぉ。っていうか、なんであれ食らって無傷なのよぉ」

「この槍は特別製でな! ある程度の魔法は、はじくんだよ!」


 あぁ、それで俺の《走雷(ソウライ)》にも耐えれたのか……っつーかバラすなよ。


「はぁ、今回は厄介ねぇ。今のでも仕留められないなんて……」

「もう諦めて、捕まってください!」

「そういうわけにはいかないのぉ、でもこれ以上時間もかけられそうもないしぃ――」


 ――何か来る!?


「これで、終わりにするわ」


 思わず身構え、何が来ても対応できるように力を入れる。


 ……あれ、何も来ない……いや、眼が開いてる?


 カミリアを見ると閉じていた目が開き、紫に薄く光っていた。


「ぐ、ぐううう、くそがぁ……!」


 ファルケンが膝をついて苦しみ始めた。


「へぇ、これに耐えるなんて、やるわねぇ。でも、どこまで持つかしらぁ」


 ファルケンだけに攻撃してるのか?

 ラビリスも、特に反応がない……あれ、なんかおかしい……。


「まぁでも時間もないし、あなたの部下に止めを刺せさせてあげるわぁ」


 なんかイマイチ状況がつかめんぞ。


「キョウスケ」

「お、レフィーラ、今どうなってんの?」


 小声でレフィーラが話しかけてきた。


「やっぱり、あなたには効いていないみたいね」

「なんの話?」

「あれ、魅了の魔眼よ」

「みりょーのまがん?」

「……あの眼に見つめられと異性を虜にして、操れるわ」


 あ、それでファルケンは、操られないように耐えてるのか。


「あなたにはまったく効いていないみたいだけど」

『さすが、アニキっす!』

「ラビリスはあっさり操られてるわよ」


 あ、ファルケンに剣を振り上げてる。


「さぁ、ファルケンを殺しなさい」

「ちょっとまったあああ!」


 横から蹴り、ふっとばす。あれ、なんかデジャブ。


「な!?」


 なんか、カミリアがめっちゃ驚いてるけど、とりあえず無視。


「おい、大丈夫か?」

「て、てめぇ、ラビリスに……なにしやがる……」

「あぁ悪い、咄嗟でな。でも、あぁしなきゃ、あんた殺されてたぞ」

「……くそがぁ、すまねぇ」


 謝りたいのか、悪態つきたいのか、はっきりしろ。


「……なんで、効いてないの?」

「ん? 知らんけど、お前の魔眼が大したことないんだろう」

「なら! これでどうかしら!」


 さらに妖しく眼が光る。


「がああああああ!」


 ファルケンがさらに苦しみだした。

 

 ――のおおお、強化できたのか! 挑発なんてするんじゃなかったー!


「す、すまん、ファルケン! がんばって耐えるんだー!」

「……本当に効いてない」

「おう、意味ないぞ! だから、もうやめとけ? な?」


 まぁこんな説得でやめるなら、最初からやらな――


「……そうねぇ、やめるわぁ」


 ――え、まじで? あ、眼閉じてる。


「……はぁ……はぁ」


 ファルケンも、もう苦しくなさそうだ。

 いくら俺に効かないとは言え、ファルケンとラビリスには十分効いていた。

 そのまま、操ったほうが有利には間違いないのに、どういうことだ。


「何が狙いだ?」

「うふふ、さてなにかしらねぇ」


 なんか、めっちゃ嬉しそうだ。


「子供たちは、あの荷物の中で眠ってるわぁ。二人とも無傷よぉ」


 え、なになに急に、ついていけないんだけど。


「御者の男も、さっきの魔眼の力で眠らしてあるから、どうぞ捕まえてねぇ」

「……降伏するのか?」

「そうねぇ、でも捕まるわけにはいかないから、逃げさせてもらうわぁ」

「そう簡単に逃すとでも?」

「……後ろの妹さんが、手を出さないなら簡単よぉ」


 レフィーラのこと見抜かれてる!

 ……と、つい後ろを向いてしまった。


「《風よ》!」

「あ、ちょっとタンマ――」


 辺りが嵐のように吹き荒れ、やむころにはカミリアの姿はなかった。


「……逃げられたわね」

「……面目ない」


 俺はレフィーラに目を合わせることなく謝った。

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