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家族になろう

「思ったより時間がかかっちゃったねぇ。でも楽しかったからいいけどぉ」


 ギルドに着くまでに、この子たちに御飯を食べさせてやりたかった為、色々と寄り道をしてしまった。

 歩きながら食べればよかったのだが、相当お腹が空いていたのか一心不乱に食べていた為、移動できなかった。

 本当は服とかも買ってあげたかったけど、さらに時間がかかりそうなので今はとりあえず《クリーン》の魔法だけかけておいた。


「それじゃあ、私の部屋へ行こっかぁ」


 他の冒険者からの視線を受けつつ、そのまま奥へ行き、ギルドマスターの部屋へと入っていった。


「そっちのソファーに座ってねぇ、今お茶を持ってこさせるわぁ」


 カミリアは机の椅子には座らず、ソファーに腰掛け、 テーブルをはさんで向かいのソファーに子供二人を挟んで俺たちも腰掛けた。


「まずは自己紹介からお願いしてもかしら?」


 受付嬢がお茶を持ってきて、それを飲みながら話始めた。


「キョウスケ・モガミだ。今日、冒険者ギルドに登録したばかりの旅をしている田舎者だ。そしてこっちが」

「妹のレフィーラと申します」


 レフィーラがお辞儀をする。

 子供たちは名前をまだ聞いていなかったので自己紹介を促す。


「お、おれはアロスで、こっちが妹のリコットだ」

「リコはリコットっていうの」


 うーん、可愛い。子供可愛い。レフィーラも眦が下がってる。


「何歳なのかな? お姉さんに教えて」

「俺は六歳だ」

「リコは五歳なの」


 こんなにちっさい子たちだけで、生きてたのか……。

 誰か助けてやらなかったのかよ……。

 だめだ、涙腺が……。


「キョウスケさん、レフィーラさん、今回は本当にありがとございますぅ」


 突然、カミリアが頭を下げてきた。


「なにがですか?」


 とりあえず、理由がわからないので聞いてみる。


「町の住人を守ってくれてぇ、ありがとぉ~」

「……この子たちの現状は、わかっていたのか?」

「うん、だから保護しようと捜索はしたんだけどぉ、なかなか捕まえることができなかったわぁ」


 ……こんな小さい子を捕まえることができない?

 話を聞くとこの子たちは結構前から、この町にいたはずだ……


「疑問を抱くのは、わかるわぁ。でもねぇ捜索を開始したのは、ごく最近なのぉ」

「……最近?」

「うん、私がね、こっちに着任したのが半年前なんだけどぉ、その時は子供たちも町の人の仕事の手伝いとかして生活してたのよねぇ」


 二人を見るとアロスが頷いている。

 

「リコはね、町の外で薬草とかも採ってたよ。みんなで競争して楽しかったの」


 リコットは楽しそうに答える。

 レフィーラは、それを見てリコットを抱きしめている。

 なにそれずるい……せっかくだ、アロスを抱きしめよう。

 めっちゃ暴れられた。


「……続き、いいかな?」

「「どうぞどうぞ」」


 俺とレフィーラがハモる。


「というわけでぇ、大きな問題は起こってなかったのぉ。でも、あのファルケン警備隊長たちが来てから事態は一変したわぁ……」


 まぁ俺からしたら、こんな子供たちだけで生活しているというのが、大きな問題なのだがこの世界では珍しくないのだろう。


「次から次へと孤児を捕まえていったわぁ……」

「その子たちはどうなったんだ?」

「しかるべき施設へ送ったーって言ってけど……私、見ちゃったの……夜中に奴隷商へと売ってるとこぉ……」


 この世界に奴隷はいる。犯罪奴隷や借金が返せない為になる人がいる。

 しかし本人の意思を無視した人身売買は禁止されているはずだ。


「その時、私一人だったからぁ、助けることもできないしぃ、それに証拠もなかったから抗議もできなかったわぁ……」


 なるほど、それで助けるため保護をしていたと……。


「でも今回は二人のおかげで最後の二人を助けることができたわぁ」

「……それで、礼を言う為だけに呼んだのではないのでしょう?」


 レフィーラが問いかける。

 確かに、わざわざ礼を言うだけの為に、ここに連れてきたとは思えない。


「それなんだけどぉ、さっき二人は、その子たちを引き取ると話をしてたわよねぇ?」

「そうだな、旅の途中だが目的地もあるし、そこまで行って一緒に暮らせばいいと思ってるが、どうだろうか?」


 話してる途中で、本人たちに聞くのを失念していたことに気付き、ついでに確認してみることにした。

 会ったばかりの大人にこんなことを聞かれても戸惑うだろうと思うが、話をしてゆっくりでも――


「い、いく! 連れていってください!」

「リコも、とっても嬉しいの!」


 と思ったが、即答された。

 レフィーラが今度は二人を抱きしめている。

 なぜかわからないけど信用されて嬉しいが、もうちょっと警戒ほしいなと心配もしてしまう。


「……もし、勢いで言ってるんならぁ、こっちのギルドで子供たちの面倒をみようと思ってたんだけどぉ……」


 子供たちは首を横にぶんぶん振っている。


「心配するな、まかせとけと言ったろ」

「私もいるから、大丈夫よ」


 二人の頭を撫でてやる。

 レフィーラがぎゅっと抱きしめる。


「子供を育てるって、そんな簡単なことじゃぁ……」

「あぁ、充分知ってるよ……」


 まだ何か言おうとしていたカミリアだが、俺の顔を見ると口を噤んだ。


「……うん、わかったわぁ。でもぉ、今日一日はここに預けてもらえないかしらぁ?」

「なぜだ?」

「孤児とはいえ、町の住人を今日町に来たばかりの人にすぐに預けることはできないわぁ」


 今まで放置していた癖に、何を言ってるんだろうか。


「わかってるからぁ……そんな目で見ないでよぉ。色々と手続きとかこっちでやっとくから今日一日だけ、お願い~」

「なら、俺たちも……」

「一緒じゃ意味ないわぁ。なにか脅迫されてるのではとか、疑う人もいるからぁ~……」

「しかし……」

「ギルドに宿泊施設もあるしぃ、食事もちゃんと取らせるしぃ、明日の朝一には引き渡せるようにするからお願い~……」


 何か納得いかないし、面倒を見ると決めた以上、こんな小さい子たちから目をあまり離したくない。


「リコとお兄ちゃんはね、今までずっと二人で大丈夫だったから、一日くらい全然平気なの」

「そ、そうだ。俺がちゃんと見てるから心配するな」


 ……この子たちは年齢の割にずっとしっかりしている。

 きっと、そうでないと生きていけなかったのだろう……。


「キョウスケ」


 レフィーラに声を掛けられ、はっとする。

 また泣きそうになってた……涙もろくなったなぁ。


「わかった、じゃあ今日一日はよろしく頼む」

「ありがとぉ~、心配しないで任せてねぇ」


 そう言って席を立ち、二人の頭に手を置く


「明日の朝に迎えに来るから、いい子にしてろよ」

「大丈夫だ! まかせろ!」

「リコはね、いい子にできるの!」


 レフィーラも二人を抱きしめ、迎えに来るからと話をしている。


「それじゃ、また明日」


 そうして、俺たちはギルドを後にした。




 外はすでに夕方になっており、今からどこかへ行こうという気分にもならず、宿に戻ることにした。

 部屋に戻るとマントをハンガーにかけ、椅子に腰掛ける。


「ふう、部屋に戻ってきてさっそくなんだが、すまなかった。何も相談せずに決めて」

「ふふ、問題ないわよ。私も嬉しかったしね」

「可愛くて、とてもいい子だもんな」

「それもあるけど、あなたがあの子たちの面倒を見るって決めたことが嬉しいのよ」


 笑顔でまっすぐこちらを見るレフィーラに言葉を返せない。


「ごめんなさい、そんな顔しないで。私はただ嬉しかっただけよ」


 どんな顔をしていたのだろう。

 今の一瞬で脳裏を巡った思いが多すぎて、感情がわからなかった。


「……そんなひどい顔だったか?」

「えぇ、眉間にこーんな皺ができたわよ」


 深刻にならないようにだろうか、少しおちゃらけたように両手の人差し指で皺つくりながらレフィーラが喋る。

 

 偽善、身代わり、罪滅ぼし、そんな思いが多かったせいだろうか……。

 うーむ、いかんな。

 どんな理由だろうと、あの子たちには関係ない。

 俺が面倒を見ると決めたんだ。

 それを迷わず実行すればいい。


 顔を叩き気合を入れる。


「すまんな、また心配かけたか」

「いいえ、あなたが強いことは、よく知ってるもの」


 きょとんとしたあと、笑顔でレフィーラは語った。




「あ、それであの子たちについて話たいことがあるのよ」

「そうだな、今後についても話合わないとな」

「うん、それでなんだけど、まずアロスは獣人族よ」 

「へ?」


 見た目、完全に人間でしたけど?

 どういうことだ。


「あと、リコットは聖人よ」

「は?」


 あれ、聖人ってめっちゃ珍しいとか言ってなかったっけ……


「それでリコットは人族なのだけれど、あの二人おそらく兄妹ではないわね」

「まてまてまて、情報量が多すぎる。一からゆっくり話そう」


 一旦整理しよう、そうしよう。


「そうね、アロスだけど頭に耳があったわ」

「え? まじで?」

「切り落とされてたけどね……」


 ……見知らぬ誰かに怒りを覚える。


「ポーションで治せないのか?」

「古すぎるわね、傷も塞がっているし無理よ」

「そうか……」


 沈黙が流れるが、切り替えるようにレフィーラが話を切り出す。


「リコットだけど、傷だらけの兄に隠れながら回復魔法をかけていたわ」

「……隠れながら?」

「えぇ、魔力感知があったから気づけたけど、なかったら無理ね……」


 隠れていたということは回復魔法の特異性を知っている?

 だとしたら、むしろ聖人となって、この生活を抜けたほうが良いと思うはず。

 かごの鳥とはいえ、今よりは遥かにマシなのでは……。


「……今あなたが考えている答えが本当の兄妹じゃないというのが私の予想よ」

「あ! って考え読むなよ……」

「うふふ」


 なるほどね、聖人の身内は一緒に保護されるだろうが違えば、そのまま、さよならだろうなぁ。


「二人は同じ銀髪だし、ハーフ、異母異父兄妹の可能性もあるけれど、聖人を隠しているということがその可能性を低くしているわ」

「まぁ他になにか事情があるかもしれないけれど、今のところはそれが有力かなぁ」

「ま、結局は本人たちに聞かないとわからないけど、どうする?」


 どうすると言われても、別にやることは変わらないしな。


「無理に聞く必要もないんじゃないかな。どういう結果であっても俺たちのやることは変わらないんだし」

「そうね、家族であっても秘密はあるものよね」

「そうそう、ただ向こうから話してきたときは、全て受けとめてあげよう」


 レフィーラが笑顔で頷くと、お腹がぐーっと鳴った。


「……もちろん、レフィーラのことも受け止めるから、お腹減ったなら言ってよ?」


 ぐーで殴られた。


 同じ部屋で寝泊りは平気なのに、なぜ腹の音は恥ずかしいのだろうか。

 女はほんとに分からない。

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