冒険者ギルド
道中は暇なので御者をやらせてもらった。
バーリスに教わりながらやらせてもらったのだが、馬の躾がいいのか簡単だった。
ぎこちなかった動きは二時間ほどで慣れ、後ろに乗ってるレフィーラたちと会話しながら操れるようになった。
「暇ね……これで町に着いてもまた、あの村に往復……」
「……まぁ仕方ないんじゃない?」
ほとんどの盗賊は俺が殺したしなぁ……。
「それなんだけね、バーリス」
「なんだい、レフィーラさんよ」
「盗賊討伐の報酬全部あげるから、あなたたちがやったことにしてくれない?」
突然の提案にみんな固まる。
とりあえず、レフィーラのことだから考えがあるんだろうと黙って聞いてみる。
「それは、どういうことだい?」
「急いでいる旅ではないけれど、またあの村へと戻って衛兵たちへの調査協力がめんどうだし、お金にも困ってないのよ」
大した理由じゃなかったな……と見せかけて実はなんか深い理由があるかもと思ったけど、あの感じは本当にに面倒くさいだけのようだ。
「……俺たちに嘘の報告をしろってことか?」
「まぁそれも含めての報酬を全部あげるってことなんだけど、だめかしら?」
口止め料込みってことね。
別に誰か不利益を被る嘘でもないから、お互い納得できるなら問題ないように思えるがどうなんだろうか。
「バーリスさん、別にいいんじゃないか? 誰も損するわけでもないようだし命の恩人の頼みだ」
「そうよ、色んな意味で悪い取引じゃないし、命の恩人の頼みだよ?」
ビリーたちも恩人の頼みは断れないと援護してくれている。
いいやつらだなぁと後ろを振り向くと目をお金マークにしてバーリスにせまっている。うん、いいやつらだなぁ。
「……そうだな、何か裏があるとも思えねぇしな、別にかまわねぇよ」
なるほど、こちらに何か裏がないか警戒してたわけか。
「だが、そうなるともらいすぎだな。ほとんどの盗賊たちは兄ちゃんが倒したしな」
「俺はレフィーラがそれでいいって言ってるなら構わないぞ」
「そうはいかねぇよ。ただでさえ返せない恩があるってのにこれ以上、借りはできねぇよ」
本当に気にしなくていいんだが、バーリスの性格を考えると無理なんだろうなぁ。
「それなら、いくらならいいの?」
「そうだな。半々にして、後でギルド経由で振り込むよ」
ギルド経由……冒険者ギルドか。まだ登録してないんだよな。
レフィーラの話では、ギルドカードは身分証や銀行のキャッシュカードみたいに使えるんだよなぁ。
「だからカードのナンバー教えてくれないか」
「ごめんなさい、私たちはギルドカードをまだ持っていないの」
「……まだということは作るつもりはあるということか」
レフィーラとの話で冒険者ギルドのある町に行けば作ることにしていたからな。
「メンドールの町には冒険者ギルドがあるのでしょう。そこで作るわ」
「そうか、なら町に着いたらビリーに案内させよう、ついでにナンバーも教えてやってくれ」
「わかったわ」
話はまとまったようだ。
とりあえず、俺たちはもうあの村へ戻らなくていいようだ。
さすがにいい気分はしないし、ありがたいな。
「この森を抜ければ、町が見えるぞ」
村を出てから二日、道中でトラブルが発生することなく予定より少し早く昼前にはメンドールの町へと着いた。
「でかいな……」
町は塀で囲まれ、端が見えない。
なんか、思ってたよりも規模がでかい。
「まぁこのへんでは一番でかい町だしな、王都の方に向かえばもっと大きな町なんていくつもあるぞ」
町の出入り口となる門へと近づくと衛兵もこちらに気付き近づいてきた。
「おう、バーリスじゃねぇか。仕事はうまくいったか?」
衛兵の一人がバーリスに親しげに話しかけてきた。
「おう、ビルか、丁度よかった。少しやっかいな事があってな、今話せるか?」
「なんだ、なにがあった?」
「っとその前にだな、あの馬車に乗ってる二人の兄妹なんだが、身分証はないが俺が身元は保証するから町へ入れてやってくれ」
バーリスが紹介してくれたので、軽く会釈をする。
「ん、お前の紹介なら問題ないだろう。商人でもないようだし、通っていいぞ」
本来は町に入るのに身分証がないとお金がかかる上に色々調べれらるらしい。さらに商人の場合は税金も取られるそうだ。
ハチも見た目子犬のせいか、特に何も言われなかった。
「そんじゃ、ビリー二人の案内頼むぞ、終わったらここに戻って来い」
「承知っす」
すでにバーリスたちとは別れの挨拶は済んでいるので、あっさりと門をくぐり、町へと入る。
見える街並みはレンガ造りの家が並び、道路は舗装され街灯まである。
馬車が走り、人も……獣人だ……話には聞いていたけど、生で見ると感動するなぁ……。
「あんまりじろじろ見ると失礼よ」
つい、見入っているとレフィーラに注意されてしまった。
それでも、つい獣人を見つけるたびに見てしまう。人間に近い顔立ちの獣人もいれば、獣に近い人もいる。
ハチも珍しいのかきょろきょろと周りを見ていた。
「もうすぐ、着きますよ」
いつのまにか着いたらしい。知らない道を歩くと新鮮で気がつくと結構な距離を歩いていた、そんな感じだろうか。
ハチも意外に近かったっすねとか言ってる。
まぁそれはいいとして、この冒険者ギルドの建物……。
「結構、でかいな」
高さを見ると二階建てのようだが、幅もでかいし奥行きもありそうだ。
白い壁に出入り口の大きな両開きの扉が開けっ放しになっている。
「この町には一つしかないですからね」
さらに大きい町には出張所などがあり、そこで依頼を受けたり達成報告、素材買取など色々できるらしい。
「とりあえず、入りましょう」
入ると受付カウンターがあり、それぞれ依頼、買取、手続きと別れている。
手続きカウンター以外は冒険者が列で並んでいる。
もっと、いかついバーリスみたいな冒険者だらけかと思ったが、意外に色んな人間がいた。
獣人もいるし、女性も何人かいる。魔法使いなのかひょろっとした人間もいる。
「あの手続きカウンターで登録できますので、行きましょう」
再びきょろきょろとしていたら、声をかけられ促された。
レフィーラは苦笑している。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどういった御用ですか?」
手続きカウンターに行くと制服を着用した若い女性が声を掛けてきた。
「この二人のギルド登録をお願いするよ」
ビリーが慣れた感じでカウンターに腕を置き、話しかける。
「新規登録ですね、ではこちらの申し込み用紙に記入をお願いします」
渡された紙を見ると規約などが書いてあり、同意する旨と後は名前と年齢を記入するだけだった。
規約もぱっと見た感じ基本自己責任で死んでも知らんってことや悪い事したら強制脱退させるよってことと、ランクについて書いてあった。
ランクは一番上はSとなり後は順にAからFとなる。
もちろん、最初はFスタートだが、基本これは功績で上がるものの為、指定がない限り依頼を受けたり探索したりするのに制限はないそうだ。
特に問題ないので、同意欄にチェックを入れる。
名前も書き、年齢を二十九と記入してから、ふとレフィーラが気になり用紙をチラ見すると年齢が二十三になっていた。
「どうしたの? お兄さん」
俺の視線に気付いたレフィーラが笑顔で話しかけてきた。
超怖いんですけど。
「書けたら貸して下さい」
とりあえず、レフィーラのは見なかったことにして用紙を受付嬢に渡した。
「はい、ありがとうございます。……あの、もしかして貴族の方でいらっしゃいますか?」
あぁ、苗字も書いていたからな。
書かないほうが良かったかな……でも、名前捨てるみたいで嫌だしなぁ。
「いや、俺らの住んでた村がみんな苗字持ちでね。貴族とかそういうのではないんだよ」
「あ、そうなんですね、それは失礼しました。」
と言いつつも納得していないよう見えるが、追求してこないし問題ないだろう。
「それでは、こちらのカードに血を一滴垂らしてください」
そう言ってカードとナイフを差し出された。
レフィーラはためらうことなく指先にナイフで傷をつけ血を垂らすとカードが光り、血も消えた。
「はい、こちらは登録完了です。これであなただけしか使えません。再発行にはお金がかかるので紛失にはご注意ください」
原理はわからんが、すげぇなぁと感心してたらレフィーラからさっさとやれとナイフを渡されたので、同じ様に登録を済ませた。
「はい、これで二人は今日から冒険者。同じ仲間ですね」
そう言ってきたビリーに同じ死線をくぐり、同じ釜の飯を食った俺たちはとっくに仲間だろ的なことを言ったら感動していた。
その後、調子にのって妹さんをくださいとか言ってたけど、レフィーラに即答でごめんなさいって言われて落ち込んでいた。
「はぁ……それじゃバーリスさんとこに戻るんでカードナン――」
「おおい、誰かと思ったらバーリスんとこの金魚のフン野郎じゃねぇか」
突然、声を掛けられ、そちらを向くとモヒカンに素肌に鎧をつけた、でかい男を先頭に四人の男がこちらに歩いてきていた。
「げ、ドボル」
ビリーが嫌そうな顔をして名前を呼んだ。
「あぁ? ドボルさんだろうが! まぁ今はてめぇに用はねえから邪魔すんじぇねぇぞ」
「そうだ、黙ってろ腰巾着野郎が!」
なんだこいつ、嫌いなタイプだわ。この見た目とかで威嚇してくるやつ、一体頭ん中どうなってるんだろう。
「あいつはドボルってやつでCランクの冒険者です。素行も悪く、態度もあんな感じなのでこのギルドでの要注意人物です」
「よくCランクになれたな……」
「力と体力だけは在るんですよ……」
バーリスはBランクだがビリー達三人はDランクの為、えらそうにしているらしい。うん、ますます嫌いだわ。
しかし、こんなやつがCランクってそんなに簡単に上がれるのだろうか。
確かに体型は筋肉もついていてでかいが、立ち振る舞いを見ていると分かるが、こいつ……あの盗賊ボスよりも弱いぞ。
「おい女、新人のようだな。俺のパーティに入れてやるぜ」
「ドボルさんはCランクなんだぞ!」
……ほんと、こういうやつらってOKすると思って言ってるんだろうか。
レフィーラもぽかーんとしてるぞ。
「え、あっと、ごめんなさい。旅の途中で身分証がほしくて作ったの」
「なに、一人旅は危険だ。俺が送ってあげるから着いてきなさい」
「ドボルさん、優しすぎるっすよ!」
あれ、コントかな、なんか面白くなってきた。
取り巻きの三人がやたらとドボルをヨイショしてる。
「一人旅じゃないの、兄さんと一緒だから大丈夫よ」
こちらを指差すレフィーラ。
片手を上げて挨拶する俺。
「あぁ? こんな弱そうやつと一緒にいたって意味ねぇだろ? 俺にとっとと着いてこいやぁ!」
あぁ、こいつバカだ。少しも自制が効いていない。
とりあえず、あんまり関わると間違いなく損するし、この辺で退場してもらおう。
「あぁ、すまない、ドボン君。妹は人見知りなので、その辺にしてくれるかな」
ドボルの肩に手を置き、語りかけ――
「誰が、ドボンだ! 俺様はドボンヌッ!」
無詠唱で電撃を撃ち込む。
「おぉ、すまないドボンヌ君だったかってどうしたのかね」
ドボルは電撃で硬直した後、そのまま倒れこんだ。
「ド、ドボルさん! いきなりどうしたんですか!」
取り巻きがあたふたしている。
「興奮しすぎたのだろう、医務室まで運んであげなさい」
そうして、ドボルは取り巻きに運ばれていった。
「よし、行くか」
「そうね、いきましょう」
「わふ」
「……絶対なんかしましたよね」
俺たちはギルドを後にした。




