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テオル村へ

「おはよう、バーリス」


 起きて馬車から出るとバーリスが火の番をしていた。


「ん、おはようにいちゃん」

「まだ日も昇っていないうちにどうした。」

「……いや、朝飯用の狩りをしようと思ってな」

「また朝飯も作ってくれるのか?」

「うちの姫様がご所望なんでね」


 両手を挙げてやれやれとおどけて見せる。


「ははは、うちとしてはありがたいが、たいへんだな」

「まぁ頼られないよりかは何倍もいいけどな」

「そのとおりだな、にいちゃん若いのにちゃんと分かってるな」


 若い? バーリスに比べたら確かに若いだろうが、俺のこといくつだと思っているんだろうか。


「なぁ、俺のこと何歳だと思ってるんだ?」

「二十歳前ぐらいじゃないのか?」

「いや三十路前だぞ」


 固まるバーリス。


「……なんだよ、にいちゃん結構歳くってたんだな」


 おう、なんかその言われ方はむかつくな。

 まぁ外国人からしたら日本人の顔立ちは若く見えるらしいし、バーリスたちも日本人離れな顔をしている。

 しかし、レフィーナは特に驚かなかったのだが、なぜだろう。


「はっはっは、そう怒るなよ。若く見られていいじゃねーか」


 別に怒っちゃいないが一瞬の心の機微を悟られたか。

 このおっさんも良く人のことを見ているな。


「まぁいいや、んじゃちょっくら朝飯獲ってくるわ」

「おう、期待してるぜ。気をつけてな」


 片手を上げて返事をして、そのまま暗い森へと向かった。




 狩りを終え、戻るとみんな起きていた。

 レフィーラに素材を渡し料理してもらい、朝食を頂くとすぐに出発することになった。

 食事中も移動中もカルアが俺の年齢を知ると若さの秘訣についてずっと質問しつづけてきた。

 フォレスはレフィーラに年齢を聞いて睨まれて端に座っている。相変わらず残念なやつだ。


「普段の食事はどんなもの食べてるんですか?」

「いや、さっき食べた朝食とか昨日の晩飯とかだよ。っていうか君はまだ若いんだから気にしなくていいでしょ」

「なに言ってるんですか! 歳とってからじゃ遅いじゃないですか! やるなら今でしょ!」


 怒らしてしまった。つい面倒くさくなってきて答えを間違えた。フォレスのことを言えないな。


「妹にも聞きなよ。同じ生活してるから一緒だよ」


 ここは撤退しよう。妹に睨まれてるけど。


「っていうか、キョウスケさんとレフィーラさん髪の色以外全然似てないですよね」


 おっと、そこは普通なら結構デリケートな部分だと思うぞ。


「こら、カルア」


 今まで黙っていたバーリスがカルアを叱った。

 さすがバーリス。観察力といい、なんかこの人信頼できるわ。


「あ、ごめんなさい……」

「すまねぇな、にいちゃん。こいつはすぐ調子に乗るからよ」


 すぐに気付いて謝るカルアもいい子だ。

 こんな良い人を申し訳なそうにしてるのを見るのは忍びない、さっさとレフィーラと打ち合わせした設定を話しておこう。


「あぁ、俺は赤ん坊のころに両親が事故でなくなって、レフィーラの両親に引き取って育ててくれたんだ」


 さすがに顔の系統が違いすぎるからな、血がつながっていない兄妹でいこうとなったのだ。

 両親が亡くなった話をしたことでカルアがまた申し訳なさそうな顔をしていたが、小さい頃で覚えていないから気にするなと伝えるともう一度謝って普通に戻った。

 そんなこんなで馬車は進んでいく。あとこの馬車だがただの馬車ではなかった。

 魔石により耐久強化が、ついていて結構いい値段がするらしい。それを保有しているバーリスたちは中堅クラスのパーティとのことだ。


「これなら日が暮れる前にテオル村に着けそうだな」

「テオル村はどんな村だ?」

「じじばばの多い小さな村だ、さらに一日移動すれば町もあるから若いやつは、みんなそっちに行ってる」


 とりあえず、今日はその村で一泊して次の町へ向かうらしい。


「今は俺たちの拠点の町だから案内してやるよ」


 そんな話をしていると今まで大人しかったハチが俺のそばに寄り添うと、頭の中で話しかけてきた。


『アニキー聞こえますかー?』

『おお、聞こえるぞ、密着するとこれで会話できるんだな』

『アニキの影に触れればできそうっすー』


 便利だな、これなら外でも会話ができる。


『それより、お伝えしたいことがあるっす』

『どうした?』


 何か嫌な予感がしつつ聞き返してみた。


『向かってる先なんすけど、あんまりいい空気じゃないっす……』

『詳しく』

『先に村があるって言ってましたよね? 正直、空気というかなんというか怨嗟の澱みを感じるっす』


 ハチの話を聞いてすぐに隣にいるレフィーラへ小声で声を掛けた。


「レフィーラ、この先の村に何か異常とかあるか?」

「……いや、少し遠いから細かくは分からんが特に大きい魔力は感じぬぞ」


 今のところレフィーラは何も感じていないが、ハチの気のせいという感じもない。

 少し警戒を促したほうがいいかもしれない。


「バーリス、何か嫌な感じがするんだが、特に違和感はないか?」

「違和感? いや、特には……」


 バーリスが御者台に首を出して外を確認する。


「妙だな……何かあったかもしれん……」


 外を見ていたバーリスが何かに気付いたようだ。


「そろそろ夕飯の準備をしているはずなんだが、村から煙が上がっていねぇ」


 言葉とともに馬車内に緊張が走る。


「馬車を一度止めて僕が偵察に出ましょうか?」


 御者をしていたビリーが提案する。


「いや、緊急事態かもしれねぇ、このまま急いでみんなで行ったほうがいいんじゃねえのか?」


 フォレスが別案を出す。

 さっきまでの和んだ雰囲気はない。これが中堅クラスの冒険者か。


「……両方の案でいく、ビリーは装備を整えて先行して偵察を頼む、俺が御者をして追いかける。フォレスは後方警戒、カルアは戦闘態勢で待機だ」

「了解です」

「うっす」

「はい」


 バーリスが迅速に判断して答えを出す。

 そして異議を唱えずに迅速に行動するメンバー。

 とても良いチームだが、感心しているときではない。


「にいちゃんたちは悪いがここで降りてもらえるか? 特になにもなければ迎えに来る」

「いや、俺たちも行くぞ。足をひっぱることもないだろう」

「……助かる。だがレフィーラも来るのか?」

「ここに一人置いていかれてもね、それに怪我人が居た場合、私がいたほうがいいでしょ?」

「すまないな、だが何かあった場合は俺たちを置いてすぐに逃げてくれ」


 バーリスの言葉にメンバーが全員うなずく。

 旅に出て最初にあったのがこのパーティで良かった。

 本当にいいやつらだ、可能な限り助けてやりたい。


「心配するな、このメンバーならきっと問題ないさ」


 何があるかはわからんが、いざとなったらレフィーラの魔法があるしハチもいる。

 まぁよっぽどでなければ使うことはないだろうけど。


「そうだな、よし。行動開始だ! ビリー気をつけろよ!」

「まかせてください」


 そう言って腰に短剣を装備してビリーは馬車から飛び出し走っていった。


「そんじゃ、俺らも急ぐぞ!」


 バーリスは剣を腰に盾を背中に装備して、御者台に乗り出発する。

 フォレスは弓に矢をつがえて馬車の後方に移動して警戒、カルアは小さく片手で持てるロッドとスモールシールドを装備して瞑想に入る。


「何か異常を感じたらすぐに教えてくれ」


 小さい声でレフィーラに声を掛け、俺もまた気を抜かないように辺りを警戒する。


『アニキ……人が結構死んでるっす』


 村に近づいてきたためにより鮮明に怨嗟の念を感じるらしい。

 もしかしたら何もないんじゃないかもとか考えていたが、甘い考えだったと思い知らされる。


「バーリスさん、止まってください!」


 偵察に出ていたビリーが戻ってきた。

 どうやら村は盗賊に襲撃されていたらしい。人数は二十人ほどで生存者は不明とのことだ。

 レフィーラにこっそり確認してみたが、まだ少し距離があるため人数も分からないし、どれが村人でどれが盗賊かも分からないという。

 さらにこちらは馬車の音で、すでに盗賊側は気付いてるらしく、警戒されているらしい。


「さて、このまま突っ込むか逃げるかだが、逃げるとおそらく追撃されるだろうから戦闘は避けれん。さぁどうする?」


 バーリスたちが再び作戦会議を行う。

 時間がないだけにてきぱきと進め、あっさりと方針が決まる。

 逃げても戦闘になるなら作戦を立て優位な状態で戦闘する。

 作戦はフォレス、カルア、ビリーがここで離脱、森に隠れて狙撃、急襲、救出を担う。

 俺とレフィーラとバーリスは態勢が整うまで時間を稼ぐ。

 

「盗賊相手となるとレフィーラはやはりここに残ってたほうがいいだろう」


 本当はレフィーラには残っていてほしいというバーリスの案も……


「女がいたほうが油断するでしょう。それに自分の身ぐらいは守れるわ」


 ということでついてくることになった。

 バーリスは最後まで心配していたが、俺も問題ないと言ったので渋々同意した。


「よし、あまり停止してても警戒される、作戦開始する。死ぬんじゃねぇぞ!」

「「「おう」」」


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