もっとよこせ
N氏は幼い時からの夢である怪獣のペットをついに手に入れた。
どのような生き物かと問われれば、怪獣としか言いようのない姿で、強いて言えばワニのように硬い皮に覆われていた。
「もっとよこせ」
怪獣は人の言葉を話せた。
そして困ったことにとても食いしん坊だった。
「もう無いよ」
「もっとよこせ」
「だから、もう餌は無いんだ」
「なんだと、なら代わりにお前を食べてやる」
「ひっ、わかった。すぐに用意するから食べないでくれ」
自分より大きくなった怪獣にN氏はほとほと困り果てていた。
困りに困った挙句、怪獣引き取り業者に渡す決心をした。
怪獣引き取り業者はニコニコと笑って、怪獣の世話ができる新しい飼い主を探してくれると約束した。
「お値段の方は、心遣いで」
「ありがとうございます」
怪獣のご飯ですっからかんのN氏は小銭をあるだけ出した。
それを見た業者の顔はみるみる赤く、目は縦は縦になった。
「ふざけるな、もっとよこせ」
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