4.どうして?
例の殺人事件の捜査のため、今日も休校となった。学校は封鎖され、生徒はおろか教職員もいない。
部屋のパソコンで動画サイトを見ていると、あのキャプテンが映っている動画を見つけた。誰かが投球練習の風景を撮影したものだった。何となく動画を眺めていた俺は、驚くべきシーンに気が付いた。そこには、何者かがメモのような物を渡しているのが映っていた。渡した人物は不鮮明で顔までは確認出来なかったが、その雰囲気から男子生徒のようだった。これで、事件の真相が明らかになると思った。
俺は急いで健司の家に行くと、動画を見るようメモで伝えた。
(健司、パソコン借りる)
俺はメモを渡した。
(この動画、見てみろよ)
「これがどうした?」
健司は不思議そうに聞いてきた。
(最後まで見てみろ)
「これ、あのキャプテンが死んだときに握っていたメモじゃないか?」
(そう思うだろ?)
俺も健司と同じ意見だった。この男子学生が分かれば重要な手がかりを見つけられると思った。
(どうにか、この学生がわからないかな?)
「これだけじゃ、分からないな。でも、探してみる価値はありそうだ」
(俺は喋れない、健司が探してくれないか?)
俺たちは手分けして探そうとしたが、俺はご覧の有り様、健司に任せることにした。
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夕方になり健司が訪ねて来た。
「やっぱり分からなかったよ。手がかりが少なすぎる」
(でも必ず探さなきゃ)
「そうだな。僕も、もう少し色んな人に聞いてみるよ」
(ありがとう、よろしく頼むよ。それじゃ、また)
「ああ、またな」
健司は引き続き探しくれることになった。俺の家を出た健司はどこかに電話をし始めた。早速、確認してくれてるようだ。
俺は念のため証拠動画をダウンロードして保存した。
「大変なことになってしまいました。あの動画がアップロードされてしまってます。アイツがそれに気付いて探しだそうとしてます」
「それはまずいな。急いで動画を削除し、アイツを始末しろ」
「始末しろって、親友を手にかけたくありません!」
「お前、そんなことを言っても良いのか?」
「分かりました。動画の男があなただと分からなければ良いのだと思います。あとは僕が妨害します」
「それで良い、頼んだぞ」
俺は背後でうごめく陰謀など全く知らなかった。ただ、親友を信じて吉報を待っていた。
(ピンポーン)
玄関を開けると、そこには警官がいた。僕は再び警察に連行されることになってしまった。
「朝比奈敦、殺人容疑で署までご同行願おう」
俺は全く訳が分からなかった。千尋がどうなったのかも不明なまま拘束された。
俺は警官にメモを渡した。
(どうして俺が容疑者なのですか?)
「凶器と目撃者が現れたからだ」
(凶器とか、目撃者とか、俺には意味が分かりません)
俺は必死に書きなぐったメモを警官に見せた。
「凶器はバット、目撃者は金子健司だ」
今の言葉に頭が真っ白になった。なぜ?どうして?健司がそんなことをしたのだろうか。
そして、これが俺の結末なのだろうか・・・。