2.一難去って、無体満足
今日はどんな一日になるのか楽しみである。俺は暇つぶしから神様ゲームに参加してしまったが、余裕でクリアできる気でいる。
学校に着くと、校門になにやら警察がいることに気付いた。ロープが張ってあり、その先は立ち入り禁止である事がわかる。
「あの、ここから先は立ち入り禁止です」
警察が立ち入り宣言をしている。
「おお、敦。聞いたか?」
「ごめんなさい」
「家の学校で殺人事件があったんだってさぁ」
「ごめんなさい」
「この様子からみて、昨日じゃないか?」
「ごめんなさい」
「この状況で嘘なんかつくか?」
「ごめんなさい」
「お前、昨日からそればっかだな」
「ごめんなさい」
「敦くん、おはよ〜!」
「ごめんなさい」
「金子くん、どうしたの、この騒ぎ?」
「分からない。事件があったらしいけど」
「事件?」
「僕たちには関係ないし、今日は休校だろうな!」
「でも・・」
(今日は臨時休校にする。生徒はすみやかに帰宅するように)
「ほらな、みんな帰ろうぜ」
「う、うん」
「敦、せっかくだし、このあと遊びに行こうぜ!」
「ごめんなさい」
警官が近づいてきた。
「そこの君、ちょっと良いかな?」
「ごめんなさい」
「ちょっと話しがあるから署まで同行してくれないか?」
「ごめんなさい」
「なぜ、あやまる?」
「ごめんなさい」
俺は不審がられて連行される事になってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さっそくだが、朝比奈敦君だね?君を殺人事件の参考人として取り調べを行う」
(ちょ、ちょっと待って、どう言う事?)
「ごめんなさい」
「事件に関係するメモが見つかった。被害者が握っていたそのメモには、血文字で君の名前が書かれていた。いわゆるダイイング・メッセージだ」
「ごめんなさい」
「昨晩、君はどこで何をしていた?何か証明は出来るかね?」
「ごめんなさい」
「そうですか。黙秘ですか。被害者の沢木和也との関係は?」
「ごめんなさい」
「君の学校の野球部キャプテンだ」
「ごめんなさい」
「そうか、分かった。あくまでも黙秘するなら、君を拘束しなければならない」
「ごめんなさい」
「君が犯人だな?」
「ごめんなさい」
「罪を反省し、容疑を認めるんだな?」
「ごめんなさい」
(俺は無関係であり、その人の事も知らないし、アリバイもあるし、事件なんて知らないぞ)
「拘束しろ」
「ごめんなさい」
俺は留置される事になってしまった。これでは普通の生活とは言えない。今の状況について、神に聞いてみる事にした。
(おい、神!見てるんだろ?)
(は〜い、見てますよ。興味深いことになってますねぇ。普通の生活では警察のお世話になる事はありませんからねぇ。このままではゲームオーバーになってしまいますよ)
(ゲームオーバーになったら俺はどうなるんだ?)
(もちろん、あなたには死んでもらいます。ただし、現状を変えて日常に復帰できたらゲームは継続されますのでご安心下さいね)
(なるほど、だいたい分かった)
俺は何としても容疑をはらし、ゲームを続けなければならない。ここは健司たちの協力が必要だ。
制服のポケットから生徒手帳を取り出し、一枚破るとメモを書き始めた。
(朝比奈敦です。話しが出来なくなったからメモを書きます。友人に面会させて下さい。友人は同級生の金子健司、鮎川千尋です)
そのメモをドアの隙間に挟む事にした。ほどなくして、そのメモを見つけた警官は上の人間と相談しているようだ。
「なに、面会だと?そのくらいは良いだろう」
どうやら面会の許可が出たようだ。俺はメモを使って会話をすることにした。
面会のため、救出チームが訪れた。
「敦、いったいどうなってるんだ?」
(俺は話しが出来なくなった。メモを書くから読んでくれ)
「分かった」
(俺は、誰かは分からないがハメられた。今すぐ日常生活に復帰しなければ、あのキャプテンみたいに死んでしまう。力になってくれ)
「どういうことだ?」
(理由はわからない。頼む、今は信じて協力してくれ)
神様ゲームの事はまだ伏せておいた。言っても信じないと思ったからだ。
「分かった。なぁ、鮎川。このメモをの通りだ、協力してやってくれよ」
「う、うん。敦くんのためにも協力するね」
「で、僕たちは何をすればいいんだ?」
(この事件に犯人はいないんだ。でも、このことはうまく説明出来ない・・・)
「犯人がいないんだったら自殺じゃないのか?」
(でも、俺の名前が書かれた血文字があったから、俺は容疑者にされた)
「なるほど。それで何をしたらいい?」
(真犯人として名乗りだしてほしい。あと4日だけ待ってくれ。必ず俺がなんとかする)
「そんなバカな。警察だって、そんな話を信用する訳無いだろ?」
(俺をハメるために犯人にしたってことで良い。動機は怨恨あたりか?・・・どうしよう)
「敦くん、私が犯人になるよ。動機は、敦くんがバカにされたからカッとなって殺害したとか・・何でも良いと思う。とにかく時間が稼げればいいんでしょ?」
(ありがとう、千尋。それなら時間稼ぎは出来る。その間に、必ず俺がなんとかする)
「敦くん、信じてるね」
「ごめんなさい」
「もう、また謝るんだから」
(千尋、俺との面会後にさっきの話を切り出しても、俺を庇ってのことだと疑われるはずだ。慎重に頼む)
「うん、頑張ってみるね」
(面会時間は終わりだ)
こうして、俺たちの時間稼ぎが始まった。果たして吉と出るか凶と出るか。神のみぞ知る・・って神がやらせているのだった。