表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1.神様ゲームで無体満足


とある中学の昼休み。


「なぁなぁ、王様ゲームやろう!」

「王様ゲーム?そんなのもう古いって!」

「じゃあ、何する?」

「やっぱ、神様ゲームでしょ?」



とある大学の合コンで。


「なぁ、みんな〜!王様ゲームやらない?」

「いいねぇ〜!やろうやろう!!」

「今時王様ゲーム?つまんねぇよ。やっぱ、神様ゲームじゃね?」

「でもぉ、それってヤバいんでしょ?」



とあるサラリーマン達の飲み会で。


「お疲れ〜!乾杯!!なぁ、いっちょ、王様ゲームでもやろっか?」

「おぅ〜!いいねぇ!!」

「ちょっと待った、どうせなら神様ゲームにしない?」

「えっ、なにそれぇ??ひょっとして、エッチなゲームじゃないわよねぇ?」



 神様ゲーム。今の世の中、こんなゲームが流行っているとは露知らず俺はTVを見ていた。


「続いて今日のニュースです。昨夜、殺人事件が発生しました。被害者の死因は不明、現場には争われたような跡があったとのことです。同様の事件が相次いで起こっているなか、一刻も早い事件の解明が望まれてます・・・」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




(キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン)


「なぁ、昨日のニュース、見た?」

「見たみた、またあの事件でしょ?怖いよねぇ」

「犯人、早く捕まって欲しいよな」

「ほんと」


俺たちの教室では、連日報道されている殺人事件の話題でもちきりだ。


「ほら、早く席に着け。出席を取るぞ」


俺はそんな話題を横目に、ただ傍観していた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




(キーンコーンカーンコーン)


「あ〜、終わった終わった。敦、これからどうする?」

「俺は帰るよ」


「鮎川は?」

「敦くんが帰るなら、私も帰る」


「そう、じゃ二人ともまたな〜!」


 俺の名前は朝比奈敦あさひなあつし、高校2年生だ。隣りに居る女子は中学からの友人、鮎川千尋あゆかわちひろだ。そして、帰った奴は、親友の金子健司かねこけんじだ。俺たちは部活にも入らず若さと時間を持て余していた、どこにでもいる普通の高校生だ。



「千尋、お前、いつも帰って何してるんだ?」

「特に。お夕飯の支度をしたり、宿題やったり・・かな。敦くんは?」

「別に、何もしてない。する気も起きないっつうか・・しいて言うなら部屋でゲームするくらいかな」


「そうなんだ。前みたいに野球、もうしないの?」

「その話はするな」

「ご、ごめん」


今の俺は毎日が退屈だった。中学までは野球一筋で、高校に入ったら本気で甲子園を目指して頑張るつもりでいた。


「じゃあな、千尋」

「うん、またね」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 その夜、夢に神と名乗る奴が現れ、俺に面白い話を聞かせた。たった5日間、あるゲームをしてもらうと言う。ゲームといっても、今まで通りの生活を続けるだけの簡単なものだった。さらに日常生活を彩る特別な能力を1つだけ与えると言う嬉しいサプライズ付きだ。俺はゲームなどで良くある作り話だとバカにして聞き流したが、暇だからその話に乗ってやろうと考えていた。


「今の話、面白い!いいぜ、騙されたと思って乗ってやる。で、ゲームをクリアしたらどうなる?神にでもしてくれるのか?」

「察しがいいな、その通りだ。神になれば、お前の思い通りだ」


「まるでゲームかマンガみたいだな。暇つぶしにはちょうどいいぜ!」


こうして俺は神のゲームとやらに挑戦する事にした。退屈な毎日から解放されたような気分でワクワクしていたのだ。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 学校はいつもと何も変わらず、5日間なんて言わずにもっと楽しみたいと思っていた。さらに、特別な能力まで貰えるときている。


「カモ〜ン、俺のチートライフ!さらば、退屈な毎日よ!!」



 学校内に足を踏み入れると、何やら背筋がゾクっとした。


(ガラガラ、ドアを開けて教室に入ってみる)


「おはよ〜!」

俺を見つけてクラスメートたちが寄ってきた。


「ごめんなさい!」

ほぇ!?俺は何を言っているんだ。なぜここで謝る!!


「どうした?相変わらず、つまらんギャグだな」


「ごめんなさい」

えっ、あれぇ?おかしい、おかしすぎるぞ。相手の言葉に反応して、勝手に口が動き出した。


「敦くん、おはよう〜」

「ごめんなさい」


「敦くん、私こそごめんなさい」

何故、千尋まで謝っているのか謎であったが、今は俺の言動のほうが問題だ。



俺は事の真相を神とやらに聞くため、ダメ元で頭の中で念じてみた。


(おい、神!何とか言え、どう言う事だ)

(あはははは〜!早速、神であるこの私を楽しませてくれたな。おやぁ?言ってなかったか?特別な能力を与えるって)


(これのどこが特別な能力なんだよ!もっと、この俺のチートっぷりを発揮できるものかと思ってたよ)

(それは・・今はナイショです!)


(そうきたか、そっちがその気ならこっちも思い知らせてやる)

(そうそう、思いっきり足掻いてください。あなたの頑張り、楽しみにしていますよ!)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「え〜、それでは授業を始める。朝比奈、教科書の48ページを読め!」

国語の教師が俺を指名する。


「ごめんなさい」

ちくしょう、こうも謝りっぱなしじゃ、弱っちぃザコキャラじゃねぇかよ。


「お前は高校生にもなって、こんな漢字も読めんのか?」

(わははははは〜、クラス中が笑いの渦に包まれる)


「ごめんなさい」


「仕方ない、鮎川。同じところを読んでみろ」

「はい」


当たり前だが、この程度は普通に読める。自由に言葉を発せられればな。


お前ら笑いやがって。覚えとけよ。この俺が神になったあかつきには、みんなまとめて地獄に送ってやる!



(昼休みになった)



「ねぇねぇ、朝比奈君。今日はどうしちゃったの?」

「ごめんなさい」


「お前、何があったんだよ!」

「ごめんなさい」


「謝ってないで何とか言えって!」

「ごめんなさい」


「・・・・ケッ、つまらん男!」

「ごめんなさい(泣)」


まずい、このままじゃ、『あやまり男』と呼ばれてしまう。



(授業開始のチャイムが鳴る)



「それじゃ、英語の教科書40ページを読んでくれ、ミスターアサヒナ」


「ソーリー」

なんで英語?でも、やっぱり謝るのかよ。意味ねぇ〜。


「ワッツ?」

「ソーリー」


「ミスターアサヒナ、廊下に立ってろ!」

そこだけ日本語かよ、実は英語教師のくせに英語が分かんないんじゃね?


「ソーリー」

でも、待てよ?立たされっぱなしなら、問題なく時間が稼げるんじゃないか?ナイスアイディア!頭良い!



(予鈴がなり、担任が入って来た)



「それでは、クラス委員、何かあるかね?」

ホームルームの時間だ。これを乗り切れば一日目はクリアだ。


「はい、先生。今日、クラスの女子の体操着が盗まれました・・・」

「ごめんなさい」

おいおい、何でここで謝ってんだよ!俺が体操服泥棒の変態みたいじゃねぇか。


(えっ、朝比奈が?あいつがやったのかよ・・?)(うわぁ、マジ?)(キモ〜ぃ!)

クラスの奴らが俺を見る。どいつもこいつも、覚えとけよ!


「朝比奈、お前がやったのか?先生に正直に言ってみろ」

「ごめんなさい」


「先生、敦じゃないと思います。女子は隣りの教室で着替えをしてたはずです。みんなも知ってると思うけど、男子はそこには行ってません」

親友が庇ってくれた。ナイスフォローだ、健司。


「ごめんなさい」

くそぉ〜かっこわるい。


「誰か、確認してきてくれ」

「先生ぇ、隣りのクラスにありましたぁ。そのまま忘れてきちゃったみたいですぅ」


「うむ、分かった。朝比奈、悪かったな」

「ごめんなさい」

ふぅ〜、助かったぜ。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 放課後になり、残すところあと僅か。一日目の生活も『The End』だ。


「あの、朝比奈くんだよね?」

めっちゃカワイい女の子じゃないか!この俺になんの用だ?まさか・・。


「私、前から気になっていました。私とお付き合いして下さい!!」

キタキタキタ!俺の時代、到来だ!!


「ごめんなさい(泣)」

やっぱり?こうなるのね・・・。しかも、相手が話し終わる前に言ってしまったではないか。


「そんな・・・勇気をだして、頑張って告白したのに。話し終わる前に断るなんて、ひどい!!」

女の子は泣きながら去って行った。


(そこに不良っぽい連中が集まってきた)


「おいおい、お前。俺たちの憧れ、真希ちゃんを泣かせるとは、良い度胸だな!はぁ?」

「ごめんなさい」


「わかってんだろうな!」

「ごめんなさい」


(バシバシ、ドカドカ・・・ボコボコにされてしまった)


「謝れよ!」

「ごめんなさい」

「兄貴、こいつ、さっきから謝りっぱなしですよ」


「てめぇ、やけに素直じゃねぇか。そのあやまりっぷりに免じて、ここは一先ず引いてやる。次は覚悟しておけよ」

「ごめんなさい」



(くそぉ、いつか絶対にぶっ飛ばしてやる!)そう心の中で呟いた。



そこに、千尋がやって来た。


「敦くん、帰ろう」

「ごめんなさい」


「何か、ご用でも?」

「ごめんなさい」


「分かった。私、一人で帰るね」

「ごめんなさい」


すまない、千尋。悪気はないんだ。



俺は何としてもこの5日間を乗り切ってやる。こうして、退屈とは無縁の一日が終わった。明日以降はどんな展開になるのか誰にも予想が出来なかった。まさに神のみぞ知るってやつなのか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ