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いつもと違う場所。

仕事中の僕はとても地味だ。

あまり大きくない会社の顧客管理用ソフトの管理をしたり、スタッフの要望を聞いて作り直したり、新しい在庫確認システムを開発したりそんな事をしている。

そんなに楽しくはないけれど、パソコンの前で仕事をしているのはとても落ち着く。

僕のいる部署は女の子はそんなに多くないからとても静か。

事務とか経理とか、女の子の多い部署はとても明るくて騒がしい。

その騒がしさは昼休みになると僕の身にも降りかかる。

休憩スペースでスーパーの安売り弁当をつついていると、僕のそばに座っていた女の子の集団が声を掛けてくるのだ。

休みの日は何してるんですかとか、彼女いないんですか、とか。

彼女たちは他部署の僕と友好的に接することで優しい自分を演じているだけなのだと思う。

もしくは、噂話の種を探すため。

内心僕はうんざりしながら、DVDを見てます、とか、彼女はいないです、とか答える。

すると彼女たちは大げさに驚いて何見るんですか、とか、作らないんですか、とか重ねてくる。

もう放っておいてほしいと思いながら僕は適当に答える。

セルフレームの大きめの眼鏡(レンズが大きい分疲れにくい)を指先で持ち上げながら、もう時間なのでと話を切り上げる。

感じが悪いと思われない様に情けなさそうな笑顔を浮かべる。

ゴミを捨てて歯を磨いて席に戻る。

パチパチとキーボードを叩きながら僕は僕の世界に入る。

気付けば退社時間になっていて、僕は身の回りを片付ける。

その時に聞こえる他部署の女の子のひそひそ話。

耳を澄まさなくてもよく聞こえる、小声を装ったその話は案の定僕。

あんなんで彼女なんて出来るのかとか、引き籠りでオタクっぽいとか、まあそんな。

中身の醜さが出てきてますよって言ってやりたいのをぐっとこらえて僕は僕のことを片付ける。


今日は週末。


流石にイライラしながら家に帰る。夜の七時過ぎ。

家に着くと玄関に置いてある鏡に映る自分は確かに根暗な感じだ。

長めの前髪にメガネ、スーツも着てはいるけどそれだけ。

表情も疲れ切ってる。

けれど週末。

スーツをハンガーに掛けるとさっさとシャワーを浴びる。

前髪を上げて見える僕の顔はそんなに悪くない、と思う。

この顔を皆が見たら原石だのお洒落したらいいだの言ってくるのが分かる。

大学の時がそうだったから。

けれど皆のいうお洒落は僕の心に響かなかった。

髪を拭き、ドライヤーを当てて髪をセットする。

今日は黒髪の気分だから地毛で。

服を着替えてグレーのカラーコンタクトを入れる。

ファンデーションで少しきめを整え、血色よく見せるためのベージュのグロス。

凶器のようなピンヒールに履き替えて夜の街に繰り出す。夜の八時前。


無造作風の髪を風になびかせ、コートのポケットに手を突っ込んで歩く。

カツカツとヒールの音を響かせて歩けばチラチラと見られる。

その視線が僕の気分を高揚させる。

いつもの店に行って紅茶とサンドウィッチを注文する。

此処のサンドウィッチはチキンとマスタードが挟まっていて、別にサラダが付いてくる。

結構ボリュームがあるから本当にお腹にたまる。

食後の紅茶を楽しんでいると彼が来た。

「こんばんは、今日はちょっといつもと違う所で撮りたいんだ。」

そう言うと彼はケーキをふたつと紅茶をひとつ頼む。

ケーキは僕と彼の分。待たせたお詫びとか。

お腹いっぱいだけど、美味しいし小ぶりだから食べれてしまう。

食べ終わると会計をして、僕らは移動する。


僕らはあの撮影から、ほぼ毎週毎週色々なところで撮影をした。

それはたいてい週末の夜で、スタジオに行くこともあれば公園だったり人気のない道だったりもした。

僕には夜が似合う、と言って彼は暗い所で撮影を繰りかえす。

撮影を繰り返す度、僕はカメラに、視線に興奮する。

どんどん大胆な気分になって、彼の言うポーズをとる。

彼は僕の骨格が好きらしく、鎖骨やろっ骨を撮りたがった。

だけど、この寒い中公園で脱がされそうになった時はさすがに怒った。

結局、シャツのボタンを全部開けて撮影した。

その後知ったが、その日はこの冬一番の寒さだったらしい。

お詫びにいつもの店で食事を奢らせてやった。


彼に連れられて行った場所はなんとラブホテル。

いやいやいや、と拒否反応を示すも、彼は至って真面目に此処が良いと言い張る。

「普通のスタジオじゃ撮れないんだよ、お願い」

そう両手を合わせて拝むように僕に頼んでくる。

こんなことなら食事代も彼に出させればよかった、と思いながらも、出来上がりの写真が気になって、僕はそこに入ることにした。

受付を済ませ鍵を受けとり、エレベーターに乗り込む。

まあ男同士で何かあるわけじゃない、何もない。

撮影だけ。

そう言い聞かせているにもかかわらず、このありえない状況に、妙に緊張してしまうのだ。


そうこうしているうちに部屋に着く。

彼が鍵を開けると、そこに広がるのは、赤と黒で構成された毒々しい部屋。

「…SMでも撮るの?」

「うん。」

呆れながら尋ねると彼はとても良い笑顔で頷いた。

僕は驚いて言葉を失うが、彼はお構いなしにカメラをセットしていく。

そして壁に繋がれた手枷を見て、じゃあまずはこれから、と指をさすのだ。

手枷を付け、僕は壁に固定される。

それがなんとなく癪で、少し抵抗したりカメラを睨む。

彼はそれを撮影していく。

それが終わると服を肌蹴させられる。

カットソーをまくり上げ、口に咥えさせられる。

そうやって露出した肌を撮影していく。

「えっろい。」

彼はそう言ってほほ笑むのだった。

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