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おかしなシリーズ

おかしなアイツ

作者: かんゆかん

前回の水野ちゃん視点に対して、慶喜野くん視点です。

読んでくださってる方がいらっしゃれば幸いです。

俺の名前は慶喜野白けいきのしろ

特になんの取り柄もない俺。

そんな俺にも譲れないことがたった一つだけある。

それは・・・。






毎日菓子を摂取すること、だ。










俺には幼馴染みがいる。


そいつの名は水野雨みずのあめ


全く持って可愛げがない女だ。



無表情だが整った容姿に儚げな雰囲気。

それらによって不思議系美少女を装い周囲を欺いてはいるが、その本質は凶悪極まりない。







まず、その恐るべき所行から話そう。








あれは俺がまだ小学生の頃・・・立春の寒い日だった。




『雨ちゃん!チョコちょうだい!』




その日は、なぜか女子からお菓子がもらえるというバレンタインデー。



当時のいたいけな俺はその日がチョコ食べ放題デーだと信じて疑っていなかった。





『ちょうだいって・・・白くん沢山貰ってるでしょ。あんなにあるのにまだ欲しいの?』



『うん!』



『でも食べすぎたら健康に悪いしお家に置く場所もないでしょ?』



『大丈夫!まとめるから!』



『まとめる?』



俺は大きく頷いた。




『皆からもらったチョコ、全部溶かして固めて一つのチョコにするの!』




保存するのに便利だよー!去年もそうしたんだー!




と、俺は満面の笑みで答えた。




その瞬間、普段無表情を貫く水野の顔が引き攣ったような気がした。




そして、水野は俯く。




『・・・ねえ、白くん』




『どうしたの?雨ちゃん』




なぜかその場の空気が2・3度下がったように思えた。



水野の周りの空気が冷え、寒気がしてゾクリと震えた。





『えっ、なんで急に寒く・・・』





水野は顔を上げ、静かに微笑んだ。




水野が微笑むなんて、とても珍しい。



だが何故だろう。



その微笑みに、その暗い瞳に、人の温もりを感じないのは。




『白くん・・・』



『あ、雨・・・ちゃん?』



























『それ、本気で言ってるの?』




















その時、俺はこの世の深淵を見た。










そして俺は奴に絶対零度の笑みで微笑まれながら、1時間みっちり説教コース。


その後奴に引きずられながらチョコをくれた女子達(去年も含む)1人1人に謝罪をして回った。





そして、チョコは全て没収。



くっ・・・なんて残酷なやつだ。







これだけじゃないぞ!?








あれは中学の調理実習・・・。





調理ということで張り切っていた俺は、他の班に回ってそれぞれの料理の出来を見ていた。




その最中、ある班の女子が俺に声をかけてきた。




『慶喜野くーん!これ味見してくれない?』


『んっ、良いよ』



パクッ。



『どうかな、美味しい?』

『美味しいよ』

『良かった!』

『でも・・・ちょっと気になることがあるんだよね』

『言って言って!正直に言ってくれた方が助かる!』




『そう?じゃあ、まず』




と、一呼吸おいてから口を開く。





『野菜の大きさがバラバラだから、煮物の味が全体的に満遍なく染みてないね』


『うん!』


『君は野菜の皮を結構厚く剥いてよね。あれちょっと勿体ないよ。それに醤油の分量間違えちゃったのかな?色味が少し悪いね』




『あっ、うん・・・』



『みりんも入れすぎだね。というか全体的にしつこい味付けになってて塩分が心配になってくる』



『う・・・ん・・・』



『あと、なんで君は後片付けしないで俺の周りうろついてるの?』



『えっ、その!それは・・・』



『あっ、男子だからって俺、サボんないから大丈夫だよ!こういうの得意だし』



『そうじゃなくて・・・!』



『それと、君のバンダナとエプロンの布地はほつれ易くて余り調理に向かないよ?』



『へっ?』



『あと、次から化粧も落としたほうがいい。料理に入ったら台無しだしね!爪も切ったほうがいいね・・・あれ、爪に絵の具ついてる!大変だ!今すぐ洗ってきな?落ちそうにないね・・・油絵でも描いてたの?』




『・・・』




『調理の時は清潔にしないと本当に危ないんだよ?食中毒を引き起こしてしまうかも知れないし・・・ああ、ごめん味の話だったね』




『・・・・・・』




『大丈夫、次頑張ろう!あと、暇だったからデザートのフルーツポンチを全員分作っておいたよ!』



『・・・・・・・・・・・・』




『俺のフルーツポンチはひと味違うから、みんなで食べ・・・ぐふっ!!』




『それ以上口を開くな』




意気揚々と話していた俺の腹に、水野の拳が。




『なんだよ水野!』



『自分の班じゃない所まで行って、自分のレベルを求めてるんじゃない』



『お前には関係ないだろ!』



『中学の調理実習なんてこの程度のものだと妥協することを覚えろ』



『人の話聞けよ』




『それにその女子への注意だが・・・デリカシーに欠けるぞ。その年の子はおめかししたい、背伸びしたい馬鹿やりたい年頃なんだ。それくらい分かってやれ』




『人のこと棚に上げてるけど、お前も結構ひどい事言ってるぞ?』




『先生ー慶喜野くんと水野さんが毛羽井けばいさんのこと泣かせましたー』







何故か水野と共に先生に怒られ、勝手に材料を持ってきて作ったフルーツポンチも没収・・・。






あいつと関わるとろくなことが無い!





まだまだあるぞ!



次は何を話そうか・・・。

氷柱が甘かったらいいなと思い、雪が積もったベランダに砂糖を振りまいて一日置き、氷柱アイスキャンディーを作ったけれど「衛生的に悪い」って水野に粉砕されたことか?



それとも・・・。

水野が俺の部屋に遊びに来たとき、特別にお菓子大全集を2・3時間見せ続けたら、何故か不機嫌になって茶菓子を全部食べられたことか?




ああ、沢山ありすぎる!



とにかく。

水野雨という女は周りにはそうでもないが、俺に対しての扱いが酷すぎる!



えっ?俺が悪い?




おいおい、冗談はよしてくれ。




そもそもなぜ水野が怒るのかが分からん。



というか、俺が水野に対して文句を言った事など一度もないぞ?




水野から貰ったチョコは毎年他の奴から貰った物とは別にしてたし。




調理実習の時なんか水野の料理の腕を知ってるから、水野の班には回らなかったし。



氷柱アイスキャンディーを作ったのだって、水野が「氷柱って綺麗だな」って言ったから、美味しく食べられたらもっと喜ぶかなと思ったからだし。




アイツの誕生日近かったから特別に好きなお菓子作ってやろうと思って、お菓子大全集を見せながら色んなお菓子の良さを力説してやったのに。




まったく・・・。





「水野って本当に変な奴だよな」

「似た者同士って言葉知ってる?」





生堂なまどうが呆れた顔で言う。










『なんで雨ちゃんが怒ってるのー!?』

『自分の胸に聞きなさい』



俺の腕を引っ張る水野。



『あっ、雨ちゃんのチョコ貰ってない』

『まだ言うか』


水野は足を止めずテクテク歩く。



『何度も言うよ!雨ちゃんのチョコちょうだい!』

『だから沢山もらったでしょ』

『ちょうだいよ!!』



『ぼく、毎年雨ちゃんのチョコ楽しみにしてるんだから!』




背を向けたまま立ち止まる水野。

そのまま俯き、こちらを見ようとしない。




『ほんと、救いようがないね』




俯いたままその表情は伺えない。




耳元を見ると、いつも白いそれが、なぜかほんのり赤く染まっていた。










「本当、昔からおかしなやつ」



教室の窓から校庭で走っている水野を眺め、そう呟いた。

如何でしたでしょうか。


って言っても読んでくださってる方いらっしゃるのかなとぎもんを抱かずに入られませんね。


って、思っていたら先日ついにブックマークが!!

うう嬉しいですね・・・!

欲を言えば感想も書いていただけるともっと嬉しいですね。

木に登りたくなります。

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