34th.The strongest
今までとは段違いの光を纏った矢・天羽々矢は結城の腹部に一直線。深く刺さりやつの体制をのけぞらせる。さいしょは何とか耐えていた結城だったが、俺の一撃が打ち勝ったようで3m程吹き飛び倒れた。
そして結城を纏っていた装備といえるスーツは粒子となり、空気中に消えていった。
「くっ…」
ほぼ同じタイミングで俺の魔装も光となり消えていった。
限界だったのか、もしくは天羽々矢の反動かはわからないがひと段落ついたため充分だ。
膝をつき、そこから尻をついて一息つく。
「お疲れ…来人。」
忍装束を解いた伊周が俺に手を差し伸べる。俺も右手を差し出す。その右手にはめられた指輪は戦闘前とは違って水色の輝きを取り戻していた。
軽く念じるとマリカが笑ったかのように指輪が煌めきを放った。
「くそ…神…矢…。」
僅かながらに意識を取り戻した結城がこちらに剥き出しにした敵意を向けてくる。
向こうの手立てがないことは分かっているが、それはこちらも同じ。もう魔装を纏うほどの魔力は残っていない。
が、それでもと俺は敵意に負けじと魔力を溜めた指先を向ける。
「お前の負けだ…。結城!話してもらうぞ…。DUTのこと…!」
「黙れ!」
瞬時にブレスレットを操作し、銃を取り出した結城はこちらに発砲してきたが、伊周が全ての弾丸を弾いた。
「さ、負けを認めろ。」
伊周が追い討ちのようにその言葉を放つと結城は諦めたように、その目を伏せた。
直後、とてつもない轟音と共に俺と伊周の間に一発の光弾が放たれた。
反応が遅れたため逃げることは叶わなかった。が、指輪の中からマリカがバリアを張ってくれたため、俺たちは全員無傷で済んだ。
「今度はなんだ!」
骸が叫びながらクナイを光弾が放たれた方向に投げるとそのクナイは撃ち落とされた。
重い身体を持ち上げながら俺は光弾の主を見る。見たことのない女性だった。
「霜月…さん…‼︎」
倒れている結城が声を振り絞る。
あの装備…DUTの物だ。
「残念だよ。結城…。君はもう少し強いと思ったんだけどね。勝手に飛び出して負けるなんて、弱い君には興味ない。」
そう言って霜月と呼ばれた女性は先ほど光弾を放ったと思われる右腕に装着した巨大な砲台を構える。その砲台は人一人分ほどのサイズを持ち、先端に向かうに連れ鋭利になっており、先端には銃口がある。間違いない。
光弾を再び放つ。狙いは結城だった。
俺は指先から放った魔力の弾でその光弾の軌道を僅かながらにずらす。光弾は思惑通りその着弾地点をずらし、結城は無傷で済んだ。
「そいつは俺の敵だったけど…、仲間なんだろ?何してんだ。」
「DUTに弱者はいらない。こっちの事情に首を突っ込まないでくれないか?僕は今機嫌が悪いんだ。」
「あ?」
一人称を僕とする霜月に俺は怒りを抱いていた。結城に対して攻撃したことが引き金だろうか。だが関係ない。どちらにせよ戦うことになるであろう敵だ…。
『マリカ…。まだ変身できるよな?』
『あまり時間はとれないが、それでもいいか?』
『もちろんだ』
俺は思念でマリカと会話してから指輪を掲げた。
「伊周。結城を連れて安全な所に行ってくれ。」
「あぁ。」
伊周に抱えられた結城が俺に一言囁いた。
「神矢来人…。気を付けろ。霜月さんはDUT最強の戦士だ…。」
「わかった。ありがとう…。」
一言、礼を言う。そうしてから目つきを変えた。
俺は水色の魔法陣を再び潜り抜けて、魔法杖を握りしめ、闘志を露わにした。




