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新姫  作者: 下松 紅子
7/8

第六章 姫、感じる。

『優夜、ちゃんといい子にしているんだぞ? 要、お前も』

『パパとママはどこ行くの?』


優夜の目にはたくさんの涙を浮かべていた。

涙を流さないために抱えているぬいぐるみを強く抱きしめる。


『ママたちはな、少しばかり遠いところに行くんだ』

『大丈夫だぞぉ。優夜、要。だからおばあちゃんの言うことちゃんと聞くんだぞぉ』


優夜と要は顔を見合わせると深く頷いた。


『うっし! いい子だ! 必ず帰ってくるからな、待っていてくれ』


だが、優夜の母親と父親は優夜たちの元へと帰ってはこなかった。



@



「おはようございます。姫様」

「あ…おはよう」


必ずと言っていいほど、優夜が起きると目の前には珠鬼がいる。

その現状に困る優夜は当然、珠鬼から距離を取る。



「気分はどうですか?」

「すこぶる良いよ」

「何よりです」

「むきっ」


そう言いながら優夜はマッチョのポーズをした。

元気だということを伝えたかったのだろう。

意図が珠鬼にも伝わったのか、珠鬼も優夜と同じポーズをとった。

と、同時に部屋のドアを開けた麻琴が硬直する。


「何やってんだ、お前ら。なんだ、あれか。競ってるのか?」

「ボディビルダーじゃないですよ」

「そう、それ」


はっ、と我に返った優夜は顔を赤くする。

(はた)からみれば、おかしな女子高生と見えてもおかしくないからだ。


「それで、何か私に言いたいことがあるんですよね? 麻琴」

「ああ。………磯岸(いそきし)と会った。それで戦闘になって、俺は軽傷で済んだんだが、一緒にいた凛々都がそれなりの傷を背負ってる。魔力の消費も半端じゃない」

「…マズイですね。怪我の手当ては?」

「那月がしてくれてる」


その報告に珠鬼は顔を歪めた。

だが、優夜はなんとなく分かった。その磯岸という人物が只者ではないことを。


「今、凛々都はどこに?」

「とりあえず、処置室にいる」

「そうですか。彼女が出たということは、どうやら姫の存在が向こうにばれたようですね」


珠鬼は優夜の顔をちらっと見て


「麻琴。姫様をお願いします」

「風間君…それって」

「彼女の目的は私でしょう。それに麻琴たちを襲ってきたのは宣戦布告ということでしょう」

「死亡フラグ立てたよね!!」

「人の話を聞いてましたか?」


まさかの優夜の天然バカスキルだ。

だが、(わず)からながら珠鬼の顔が柔らかくなった。

珠鬼の中にあった不安か、または恐怖が薄れたのだろう。

そして珠鬼は部屋を出た。


「あの」

「ああ、分かっている皆まで言うな」

「私の言いたいことが分かるんですか?」

「おう、珠鬼の弱点だろ?」

「違う! ぜっぜん違う! でも知りたい!!」


自分は何を言っているんだ、と優夜は思いつつもツッコミをいれた。


「まあ、珠鬼の弱点はまた教えてやるよ。聞きたいことは磯岸のことだろ?」

「はい。その人は強い…ですよね?」

「ああ、なんせ敵側の幹部だからよ。あと、無駄にキャラが濃い」


ここも相当なキャラの濃さじゃないか。

優夜は笑いながらそう思った。


「その幹部の一人、磯岸 日菜子(ひなこ)。そいつに出会っちまったってこと」

「風間くん、大丈夫かな…」

「うんまあ、大丈夫だろう。それから優夜、幹部のやつらに会ったら必ず逃げろ。凛々都があんな目に合うんだったら、俺は確実に死んでる」


麻琴の目には偽りはない。そう感じていた。



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