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新姫  作者: 下松 紅子
1/8

序章

夜が世界を包む。

不気味な程に物静かで人一人(ひとひとり)としていない。

月光がユラユラとビルの上に立つ少年と少女を映し出す。

少女の手には鋭利(えいり)華奢(きゃしゃ)な白銀の長槍(ちょうそう)が握りしめられていた。

また少年の手には鈍色(にびいろ)に輝く銃があった。



グギャァァァァ!!



ドラゴン型の魔物が大きく雄叫びを上げながら、黒い蝶の渦から現れる。

その雄叫びに驚き、少女の肩が(かす)かに震えた。

それを見た少年は腕につけてある腕時計の時間を確かめた。

すると、少年は少女の顔を見て、


優夜(ゆうや)、あれを三分で仕留めてください。それ以上時間がオーバーしたら…わかりますよね?」


少年の言葉に優夜は必死に首を縦に振る。

これは脅しなんて生温いものじゃない。時間がオーバーしたら本気で殺る気なのだ。


「では今から三分! 始めっ!」


少年の掛け声と共に魔物に向かって優夜はビルから飛び降り、走り出す。

優夜という目的を見つけた魔物は、手に生えている鋭利な爪を優夜に向かって振り落とす。


「…っ」


攻撃を読めた優夜は(たく)みに避ける。

そして滑り込んで、魔物の(ふところ)にはいる。

長槍を縦に構えると、


「氷を纏いし精霊よ。我、王に凍てつく氷の力を与え(たま)え」


そう謳い終わると白銀の長槍に冷気が漂いはじめる。

冷気を纏った長槍を上に掲げ、魔物の腹部に突き刺す。



グガァァァァァ!!!



魔物は突き刺された痛みに悲痛を上げる。

突き刺した箇所からパキパキと音を鳴らしながら魔物の体全体に氷が張っていく。

そしてついには氷が魔物を覆い尽くし、綺麗な氷の芸術品となっていた。


「すみません」


そう呟き、刺した長槍を引き抜く。

優夜が上を見上げると満足そうに少年は口角を上げている。

それを見た優夜は安堵し、溜まっていた息を吐いた。

少年は銃と狙撃銃を入れ替え、魔物に向けて構えた。

狙いが定まると同時に撃った。

どうやら、彼には躊躇(ためら)いということは知らないらしい。

銃弾を打ち込まれた魔物は為す術もなく、塵一つも残さず消滅した。


「上出来です。とりあえず、これぐらいの魔物は倒せるようになりましたね」

「まあ、すごく頑張ったけど…」

「時間も時間ですし、戻りましょうか」

「そうだね。…ふわぁっ」


優夜は一つあくびをした。




なぜ優夜が戦うことになったのか、すべては数週間前に(さかのぼ)る。


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