さっちゃんの部屋
「さっちゃん、ご飯の時間よ?降りてらっしゃい」
返事は無い。
さっちゃんと私の分の食事が段々と冷めていくのがわかる。
ため息をつきながら自分の分を食べ終わると、さっちゃんの分を2階へ運ぶ。
扉越しにテレビアニメの音がブツブツと小さく聞こえる
「置いておくわね」
ドアプレートには可愛い文字で
『さっちゃん』
でも、あの頃の可愛いさっちゃんはもう居ない。
学校に行かなくなって3年
部屋から出なくなって3年
私と話さなくなって3年
原因はわからない
大人しいけど気の優しい可愛い女の子だった、昔は。
私は今日もさっちゃんの部屋の前でお話しをする。
「お向かいの中村さんがね、真っ白い大きいワンちゃんを飼ってるのよ。立ち上がったらさっちゃんよりも大きいかもしれないわね」
「お母さん、さっちゃんの為に水着を買ったの。今年は一緒に海に行きましょうね?イルカさんの浮き輪も買ったし、楽しみね〜」
私は扉に向かって話し掛ける
「さっちゃん」
「さっちゃん」
「さっちゃん」
「ねぇ、あの角の家の噂知ってる?」
「え、なになに?」
「何年か前に東山公園の近くで女の子がトラックにはねられた事故があったの覚えてる?」
「すごい事故だったよね」
「あの事故ね、お母さんが呼びかけたせいで女の子が道路に飛び出してひかれちゃったんだって」
「え〜可哀想」
「そのショックでお母さん頭おかしくなっちゃったんだって」
「え〜なにそれ」
「娘が生きてるって信じてるんだって」
「こわーい」




