『青の旅人』の伝説
星から星へ、人から人へと。
時を越えて宇宙を巡る、とある伝説がある。
伝説というものには付き物であるが、語り部によって大なり小なり中身は異なる。
ただ結び繋げていくと、一つの事象というべきもの――何者かの存在が浮かび上がってくる。
はて。何者かというが、本当に人なのかどうか。
曰く、それは人が『どうしようもないとき』に現れて、救いの手を差し伸べる慈悲の神なのだと。
曰く、それは人が『どうしようもないもの』の前に現れて、そいつを一撃の下に打ち倒してしまう勇者なのだと。
曰く、それは人が『どうしようもないもの』であるとき、確実な滅びを与える死神なのだと。
時に何より優しく、時に何より苛烈に。
我々人にとって、世界にとって。
『どうしようもない』運命であるはずのものに、致命的な一撃をもたらす。
その姿は少年のようだとも、少女のようだとも言われている。
その身に纏う雰囲気は、鬼神のように恐ろしいとも、女神のように優しいとも伝えられる。
その顔は笑っていたとも、泣いていたともされる。
語る者によって姿形さえ異なり、印象は決して一つに定まらない。
果たしてそれは死神か、勇者か。はたまた救いの神か。
もっと別の得体の知れない、底知れない何かだろうか。
だがしかし。
いかなる伝承においても、真実として伝えられることがある。
その者、身に青きオーラの衣を纏い。
まるで空のように、海のように。透き通り、目の覚めるような青さで。
時代を越え、星々を渡り歩き。
あまねく宇宙のどこにでも、必ず人の意志あるところに現れる。
『どうしようもないもの』たちへの。【運命】というべきものへの――絶対的な敵対者として。
人の心を汲み、人に代わり立ち向かい、そして手を下す。
彼は。彼女は――『青の旅人』と呼ばれた。




