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フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜  作者: レスト
地球(箱庭)の能力者たち

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568/711

48「フェバル Fated by Luminous」

[現地時間4月28日 22時11分 アメリカ セントルイス近郊]


 いや――いやいやいや。待て待て待て。


 ユナの頭に稲妻のような衝撃が走る。


 まさか。そんなことがあるのか……?


 Fated by Luminous


 頭文字を繋げていくと……FabL(フェバル)になる。なってしまう。


 は? いや、どういうことだ。

 ただの偶然か。そんなバカみたいな偶然が本当にあるのか?


 落ち着け。こういうときは事実と推測を積み上げて考えろ。

 フェバルというのは異世界言語の自動翻訳の結果、地球の言葉として最も自然になるようにそう聞こえるものだ。

 彼らがなぜフェバルと呼ばれるのか。その名の意味や由来はわからないと、あのレンクス(変態)も言っていた。

 ここで一つの仮説を立ててみる。なぜそのままでは意味が通らないのか。

 そもそもフェバルという単語がそれ自体ではまったく意味を為さないもので、本来もっと長い言葉の略語だったとしたら。

 しかもそれがこの星で最も広く使われている英語の略として、自動翻訳されたものだったとしたら――。


 フェバル――運命の奴隷。


 Fated by Luminous――大いなる光によって、運命付けられた者たち。


 光を見た。皆口を揃えてそう言っていた。

 このヒカリという子も、『炎の男』も、セカンドラプターも、シェリルも。

 確かに何かがいる。

 あらゆるTSPはフェバルの近縁種であり、同じ光のもとにある――。


 ということは。ということはだ!


 突然、この世のすべての前提がひっくり返るような。途轍もない寒気がした。


 だとしたら。運命とは。

 普通の文脈で使われるような、抽象的で曖昧なものなんかじゃない。

 もっと確固として、絶対的な……。


 地球という小さな箱庭の中で、あの手記を書いた奴が途轍もない力でTSPを生み出した。


 そう。すべては同じ構図。これは縮図だ。


 宇宙という遥かに巨大な枠組みの中で、『光あるもの』がフェバルを生み出した。


『光あるもの』によって、彼らはそうなるよう運命付けられた。


 TSPを生み出した奴よりも、遥かに強力な何か。


 正体不明の大いなる光は、【運命】と言うべき究極の力を持つ存在である――。


 未だどのフェバルが喉から手が出るほど探し求めても至らぬ真相の一端に、聡い(・・)ユナは気付いてしまった。

 彼の目論見通り、気付かされてしまった。


 なんだそれ……何だよそれ……。


 この宇宙そのものに壮大な仕掛けをしている奴がいるかもしれないだと。すべてをあまねく照らす光があるだと。

 誰もかもが何も知らないまま、そいつにみんな支配されていると? 最低でもあのフェバル(化け物)たちはみんな奴隷だって言うのか!?

 おいおい。どうしろって。そいつは神か何かか?

 どれだけ馬鹿げたスケールの話なのよ……。


 もしこれが真実なら。その大いなる光ってやつは、たいそう意地悪に違いない。

 どうしてこの宇宙をかくも理不尽に、絶望に満ちたものにしてしまったのか。

 TSPもフェバルも……結局は同じ穴の貉だ。

 みんな望まぬ力を持って生まれてきてしまった。ただ生きるだけのことに、こんなにも苦しんでいる。


 ――そうだ。手記を書いたあいつは、何を言っていた?


『お前と言う人間を付随的に観察してきた身として』


 いったい何が付随的なんだ。


『お前は所詮ただの人間。それ以上でもそれ以下でもなく、本来何者でもないのだ』


 私が特別な者でないのは。ただちょっとばかり強いだけの人間なのは、自分が一番よくわかっている。

 だったら私はどうして死ななかった。なぜわざわざあんな含みのある言い方をした?

 まるで誰かは特別であるかのように。

 運命のベールによって護られていたとは、どういうことだ。

 私ではない、誰か。

 私が絶対に生きていなければならない、特別な誰か――。


 そして星海 ユナは、ついに真実へ辿り着いてしまった。


 ――そうか。そうだったのか。


 なんてことだ……。



 ユウはフェバルだ。


 あの子が、特別だったんだ……。



 ついに頭を抱え、項垂れてしまうユナ。

 自分のことならばどうにか気張れた彼女も、さすがにこれには堪えてしまった。


 TSPにしては、やけにスケールが大き過ぎるとは思っていた。いくら何でも広範囲の声を拾い過ぎだと。

 明らかにおかしいのに、一つも検査で引っかからなかったのも。

 そもそもTSPではなかった。フェバルだとしたら、すべての辻褄が合ってしまう。

 だったら、あの子の本当の力は。

 心の声が聞こえるだけなんて、そんな生易しいものじゃないはずだ。


 あれはもっと――遥かに末恐ろしい何かの片鱗に違いない。


 ユナはやるせない感情のまま、ハンドルを拳で殴り付けた。


「おい。またどうしたってんだよユナ。今日のテメエ、本当におかしいぞ……」


 セカンドラプターの諫める声を聞く余裕もない。

 ユナは苦悩する。


 ……どうしてだ。どうしてよりによってユウなんだ! 私ならいくらでも代わってやるものを!


 あんまりじゃないか。半永久的に死ねず、宇宙を彷徨い続けるなんて。

 私はよく知っている。初めて会ったときのレンクスの、あのしみったれた、死にそうな顔を。

 何もかもに絶望し、今にも消えてしまうかおかしくなりそうだったあいつを。

 気持ち全部乗せて活入れてやらなきゃ、本当にどうにかなってしまいそうだった。

 あいつでさえ、そうなってしまうほどの過酷な旅だ。

 ユウが。あの寂しがり屋の甘えん坊が、永く独りぼっちの旅なんて耐えられるはずがない……。

 誰の助けもなければ。いつも誰かが隣にいてやらなければ。

 きっと壊れてしまう。いつかおかしくなってしまう。

 出会った大半のフェバルが、既にそうなってしまっていたように。


 くっ。私のせいなのか。私が異世界を旅してしまったからなのか……?

 妊娠してからもお腹の中で連れ回した。そのことが素質を与えてしまったという可能性はないか。

 それとも、そんなことはまったく関係なくて。最初からあの子がフェバルになることは決まっていたと?

 すべて運命だと。そう言いたいのか?


 ――おそらく、今このことを本当の意味で知っているのは私だけだ。


 誰かに伝えなくてはならない。

 今の状況を何とかして。そしてまた異世界へ行かなくてはならない。


 レンクス。J.C.。

 あんたたちが果てしない人生で知れず対峙しているものは、恐ろしくとんでもない相手かもしれないと。

 どうすればいいかなんて、今は皆目わからないけれど。

 戦わなくてはならない。力を合わせ、知恵を合わせて。立ち向かわなくてはならない。

 きっと何かできるはずだ。どんな強大な相手だって、見えない相手だって。戦う術はあるはずなんだ。

 でなければ。


 私が死ぬだって? 私がすべて失うだって?


 違う。そんなことは最悪に比べたら、どうだっていいんだ。


 きっと本当にすべて失うのは……可愛いユウだ。


 フェバルが持つ大きな力の代償に、あの子から運命がすべてを奪っていく。

 このままではユウが。あの優しい子が到底耐えられない、過酷な旅に巻き込まれてしまう!

 それだけは。それだけはさせられない。

 守らなくてはいけない。


 なのに。


『ゆえにお前はその先に辿り着くことはできず、何も得ることはできない。

 世界が。運命が。そうなるよう定めているからだ』


 まるで呪いのように、嘲笑うかのように。手記の言葉が打ちのめそうとしてくる。

 くそ。私は……どうしたらいい。何をどうすれば運命を打開できる?

 そもそも世界はどうなる。あの子の明日さえわからない。未来を繋ぐものはどこにある。

 チェインとオペレーションの力が揃っている。足りないものはターゲッティングのみ。

 まるで必然としか思えないこの状況。

 あらゆることがお膳立てされているようで、胸糞悪くて仕方がなかった。


 ユウ……。まさか本当に、あんたが最後のピースだって言うのか……?

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― 新着の感想 ―
察しが良すぎだろユナさん、、、
[一言]  明かされるフェバルの単語の意味、ユナさんユウよりも先にフェバルだと知ってしまっていたのですね。
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