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フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜  作者: レスト
二つの世界と二つの身体

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233「迫り来るタイムリミット」

 ダイラー星系列は異変の原因を特定するため、調査を続けていた。

 シルバリオの記憶解析や独自の空間分析等から、夢想病なる奇妙な風土病の存在と世界の異変には大いに関係があること。

 そしてラナソールと呼ばれる裏世界、さらにはアルトサイドなる第三領域に異変の原因があるのではないかと推測された。

 調査用シェリングドーラからのレポートを読んだランウィーが、憂いを秘めた顔でブレイ執行官に報告する。


「アルトサイドの固有星脈エネルギーおよび精神エネルギーが、激しい上昇を続けています。どうやら星脈に穴が開いているようです。このままでは……」

「宇宙が破れるかもしれないと」

「はい」

「あとどのくらいだ」

「もって半年かと」

「……本星が想定していたよりも、遥かに状況は深刻だな」


 通常はバラギオンが上限のところ、星撃級兵器アデルバイターまでは用意していたが。

 それでも認識が甘かったと、ブレイは悔やむ。

 今から星消滅級のシンバリウスを追加申請すべきか――。

 いや、星脈の異常となれば、最悪星脈の異常部分を丸ごと消し飛ばす処置が必要だ。

 単純な星消滅兵器であるシンバリウスでは足りない。

 ブレイは眼鏡を指で押さえながらしばし考え、彼女に指示した。


「ランウィー。本星にデュコンエーテリアルレイトの追加申請を頼む」

「えっ? 内地用の兵器ですか? 使用許可に時間がかかると思われますが」

「だからこそだ。今から申請しておかねば間に合わん」


 星脈にダメージを与えるためには、内地の先端技術を用いた特別な兵器が必要となる。

 ところで、魔素によって実現可能な範疇よりも大規模な現象を起こす場合、通常は星光素を用いる。

 星脈を満たす最強の魔力要素であり、ダイラー星系列はこれを利用する技術を持っているからである。

 ただし、こと星脈にダメージを与える場合に限っては、星光素を用いることができない。

 星光素をその由来である星脈に向けて放っても、ほとんどが吸収されてしまうからだ。

 そこで星脈を攻撃する際には、デュコンエーテリアスという星光素に次いで強力な魔力要素を用いる。

 魔素より遥かに強力なダークマターであり、通称暗黒魔素と呼ばれる。

 デュコンエーテリアルレイトとは、この暗黒魔素を用いた砲兵器である。

 内地用の兵器に人型を模す意義はまったくないため、無駄を削ぎ落としたシンプルな非人型設計となっている。


「いつ使われるおつもりですか?」

「予測から安全を見込んで、今から90日をタイムリミットとする。それまでに問題を解決できない場合は……星脈ごとこの星を消す」


 ブレイは悩ましげな表情で、現地には冷酷な決断を下した。


「もちろんこのことは機密事項とする。現地住民には漏らすな」

「承知しました。……最善を尽くしましょう」

「うむ。私もできれば、無辜の民を犠牲にしたくはないからな」



 ***



「あと87日といったところか」


 闇の世界に身を隠し、暗躍を続けるアルはほくそ笑む。

 星脈の穴が拡がる速度からの逆算である。

 穴が十分拡がれば、宇宙の外側からの侵入が可能となる。

 そうすれば、ユウを含めたすべての邪魔者を始末し――。

【運命】により、不確定要素は排除される。

 今は『黒の旅人』が見張っているため、目立った動きはできないが。

 ユイを抱えていることは、奴の弱点になる。

 もしほんの少しでも隙を見せれば――そのときがお前たちの最期だ。


 アルは黒の剣で受けた傷の回復を待ちながら、『黒の旅人』とユイを殺す機会を虎視眈々と狙い続けている。

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