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フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜  作者: レスト
人工生命の星『エルンティア』

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A-13「焦土級戦略破壊兵器 ギール=フェンダス=バラギオン」

 ウィルは、簡単にこの星のあらましについて説明してくれた。

 胸糞の悪くなるような二千年の歴史を。

 くそ。まさかそんなことになってやがったとはな。

 一度ユナとともにあからさまな破滅からは救ったものの、結局は時間の問題だったということか……。

 やっぱり人間というのは、業が深いもんだな。

 どこか空しいような哀しいような気分を覚えつつ、目の前の男が話し続けるのを聞いていた。

 ウィルは、唐突に話題を変えた。


「あの星にあるものは、ほとんどすべて取るに足らないものだが。一つだけ、まあおもちゃと言える程度のものなら見つけた」


 そしてこいつは、思ってもいなかった驚きの名を出してきた。


「ダイラー星系列。お前も名前は聞いたことがあるだろう」

「ダイラー星系列だと!?」


 ここより遥か宇宙の彼方。

 ビッグバンが起こった、宇宙の中心とされる場所。

 今は巨大なブラックホールに占められているらしいが。

 そこを取り囲むようにして存在する、フェバルですら容易に手出しができない一大銀河領域がある。


 功名も悪名も高き、宇宙最強の星系統合政体――ダイラー星系列。


 宇宙の観測者かつ管理者を自負する連中が統治する、甚大な領域だ。

 おいそれと手出しができない理由は、いくつかある。

 まずそもそも、外側からそこへ行く手段が少ない。

 ワープなど、大抵の技術や能力の使用に対しては、たとえそれがフェバルのものであっても容易に通用しないほどの、強固なプロテクトがかけられている。

 宇宙空間から直接移動で向かうには、宇宙最凶の荒れ場とも呼ばれるウェルム帯を乗り越えなくてはならない。

 逆に向こうから宇宙各地に来るのは、毎度容易にやって来ているようなんだが……。果たしてどういう理屈なのかは知らない。

 さらにあの一帯は、数多のフェバルがひしめいていて。表から裏から統治に関わっているとされている。

 そんなやばいところに茶々を入れれば、火傷をもらうのはまずこちらということになる。

 下手すりゃ致命傷になりかねない。封印刑なんてのもあるしな……。


 もっと言えば、フェバルじゃない奴にも厄介なのがゴロゴロいると聞いたことがある。

 あれは確か、たまたまダイラー星系列のとある星に辿り着いた、憐れなフェバル仲間の証言だったか。

 ほんの数日後に殺されて、キックアウトされたって言ってたけどな。


 星級生命体や、異常生命体といった連中。

 いわゆる、フェバルを含めて言うところの『三種の超越者』。

 そんな奴らも、腐るほどいるというのだ。


 まあ、あえてわざわざ自分から関わる理由はないし。

 星脈を順に辿って旅をしていけば、いつかは自然とそこへ流れ着くとも言われているが――。

 そんな大物の名前が、まさかこんなところで出て来るとは思わなかったぜ。


 驚きはそれだけに留まらなかった。

 ウィルがほくそ笑む。


「ギール=フェンダス=バラギオン。あれが一体、置き残されていた」

「てめえ。何がおもちゃだ。物騒な名前出しやがって……! とても今のユウの手に負える代物じゃないぞ!」


 ギール=フェンダス=バラギオン。

 星間戦争において主力となり得る、量産型「焦土級戦略破壊兵器」の一種だ。

 横暴を許せば、単体でもその名の通り、星全体を焦土に変えてしまいかねないほどの性能を誇る。

 最も厄介なのは主砲だ。あれは確か、触れたものをすべて消し去る物質消滅の効果を持っている。

 単純な攻撃力だけなら、能力が戦闘向きじゃないごく一部のフェバルよりも高い。

 その上となりゃもう、星そのものの形を変えてしまうレベルの「星撃級」と、星を丸ごと跡形もなく消し飛ばしてしまう「星消滅級」。

 やばいレベルの兵器しかない。

 ……どちらも、ダイラー星系列産の兵器だけどな。

 星撃級や星消滅級のようなものは、この広い宇宙でもそう滅多に存在しないし、仮にあったとしてもさらに輪をかけて使われることは少ない。

 戦う相手というのは、つまり大抵の場合は屈服させたい相手なわけだ。

 それを丸ごと消し飛ばすなんてのは、およそそれ自体が目的でもない限り、馬鹿げたことだからだ。


 俺は、激しい焦りが押し寄せて来るのを感じながら毒吐いた。


 確かに焦土級程度なら、輸出されて使われることもあるだろうよ。

 俺たち並以上のフェバルなら、大したことはない兵器だ。

 だからっつったって、こんな遠く離れた辺境の星にそうそうあって良い代物じゃねえだろうが!


 そしてウィルの奴が今何を考えているのかも、手に取るようにわかる。

 状況を操るのが好きなこいつのことだ。絶対ろくでもないことをしようとしてるに違いない。


「くっくっく。せっかくだ。ユウの奴とぶつけてみて、どんな化学反応が起こるのか。見てみようじゃないか」

「くそっ! させるかよ!」


 もう戦うしかねえ。


【反逆】で邪魔しようとしたとき。

 こいつは、至極残酷な笑みを浮かべたのだった。


「今度は僕の方が早いぞ」


 わざわざ、こいつが手をかざすまでもなく――。


 くそったれが! この野郎は、とっくのとうに準備してやがったんだ!


 眼前に映る星の一部――ティア大陸の南側。

 無人の領域に、チカッと白い光が瞬いた。

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