伝えたい言葉~かぐや姫の憂鬱彼女視点ver~
こちらの小説は以前投稿しました、「かぐや姫の憂鬱」の彼女目線です。
まず先に「かぐや姫の憂鬱」をお読みください。
また、この小説は小田浩生さんの企画に参加しております。
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突然、告白された。
見ると、同じクラスの男子だった。
私は恋をしたことはない。
というか、そんなことをする余裕は無かった。
今でこそ何とか学校に通えて入るが、私には先天性の難病を持っている。
いつ、倒れてもおかしくないのだ。
そんな体で恋をしろと?
いつ死んじゃってもおかしくないのに。
彼も私のことは知っているはずだ。
だから、告白されて少し腹が立ったのだ。
「嫌」
だから、即答した。
すると、彼が本気で落ち込んだ。
はた目で見ても分かるくらいの落ち込みっぷりだ。
彼がその理由を聞いてきた。
「なんとなく」
適当に答えた。
・・・興味が無いのだ。
彼にではない。恋そのものに興味が無いのだ。
あ、彼が本当に泣きそうな顔をしてる・・・
それを見たら、私の中の何かが動いた。
「私が条件を一つづつ出すから、それを全部果したら、付き合ってあげる」
思わず、そう言ってしまった。
なぜか、そう言ってしまった。
言い直そうとしたけれど、彼が涙目でうなずく姿を見たら、何も言えなくなってしまった。
【その一:私が好きな理由を800字以内で記述すること】
ついに、送ってしまった。
このまま送らないで無視しようとも思ったが、彼の姿を想うととてもそんなことは出来なかった。
送ってしまってから考える。
こんなことをして、一体何になるんだ?
あのまま、普通に断ってしまえば良かったんだ。
・・・だけど、悲しんだ彼の姿を見てたら、なぜかそれが出来なかった。
彼を悲しませたくない。
だけど、こんないつ死ぬか分からない私と付き合わせたくない。
どうすればいいの?
どうしたら彼が傷つかずに諦めてくれるかな・・・?
そうだ、と私は思った。
・・・嫌われちゃえばいいんだ。
そうすれば、きっと、誰も悲しまない。
そうだ、そうすればいいんだ・・・
それにしても、800字以内で記述って、どこの大学入試小論文なの、って我ながら思った。
彼はなんて書いてくるのだろう。
『君が好きな理由? それは君が君だからさ』とか書いてくるのかな?
そう思うと、少し楽しみだった。
翌日、早速彼が渡してきた。
読むと、これが、彼のありのままの気持ちなんだろうな、ということが伝わった。
そう思うと、嬉しさがこみ上げてくる。
だけど、だめだ。
私は嫌われなきゃいけないんだ。
嫌われた方がいいんだ・・・!
私はそれを、放送委員の子に渡した。
だけど彼は、私を嫌うことは無かった。
【その二:野球選手、井原のホームランボールを取って来ること】
井原選手とは弟が好きな野球選手だ。
聞くと、とても有名な選手らしいので、これを送ってみた。
これで彼が諦めてくれれば、と思った。
───後日、弟と見ていた野球中継で、井原のホームランボールを取った彼の姿が映っていた。
その姿はとてもうれしそうだった。
はた目で見ると、こっけいな姿だが、私は胸が締め付けられる思いがした。
それからも、私は彼に様々な条件を出した。
それはもう条件と呼べるものではないのもあった。
ある時には校長先生のカツラ疑惑をはっきりさせた。
ある時には犬と戦わせた。
ある時には川を泳がせた。
───それでも、彼が私を嫌うことは無かった。
それどころか、私の中の、彼に対する気持ちがどんどんと強くなっていった。
───もうすぐ、大きな手術がある。
とても難しい手術らしい。
だが、成功すると、私の病気がほぼ完治することができるらしい。
ただ、失敗すると───
そのことは家族以外、誰にも知らせていない。
もちろん、彼にも。
もうすぐ、その手術だ。
その前に自由時間を与えられた。
今私は病院の、携帯が使える屋上にいる。
携帯画面を眺める。
メール作成画面が映っている。
作成したメール。
これを彼が見たらどう思うだろうか。
・・・今度こそ、諦めてくれるかなあ。
【title/これで最後だよ。
本文/
私の手術が、成功すること】
送信ボタンを押して、私は一人泣き出した。
迎えに来た看護師が心配そうに駆け寄ってくる。
私は「大丈夫です」と言って携帯の電源を切った後、自分の病室へ向かった。
本当のかぐや姫なら、ここで不死の薬も添えるのだろう。
だが、もし私がかぐや姫だとしたら、君にそんなものなんかあげるもんか。
───一緒に生きて、一緒に死のう?
だから大丈夫。
私はこんなところで死なないよ。
君は私のためなんかに、なんでもしてくれた。
どんな無茶なことでも。
今度は、私の番だ───。
あ、それと・・・これが終わったら、君に伝えたいことがあるんだ。
大丈夫、必ず伝えるから。
これが終わったら、それを送信してあげる。
【───大好きだよ】
本当は、この作品を書くかどうか悩んだんですよね。
「かぐや姫の憂鬱」はもうそれ自体で完結しており、様々な解釈が出来ます。
それなのにこれを書いたら、いろいろあった解釈が、一つにまとめられてしまうんじゃないか、と───
にもかかわらずこれを書いたのは、完全に作者のエゴです^^
そもそも「かぐや姫の憂鬱」自体勢いで書いたものですし、これも勢いでいっちゃえ───と。
・・・はい、すいません。
ちょっと調子に乗りすぎちゃいましたね。
ここから先、二人がどうなったのかは、皆さんのご想像にお任せします。
想像するほど、それだけ物語があると思います。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました^^
もしよろしければ、感想・評価をよろしくお願いいたします。




