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かぐや姫の憂鬱

伝えたい言葉~かぐや姫の憂鬱彼女視点ver~

作者: 凸神 桜花

こちらの小説は以前投稿しました、「かぐや姫の憂鬱」の彼女目線です。


まず先に「かぐや姫の憂鬱」をお読みください。


また、この小説は小田浩生さんの企画に参加しております。

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/203133/blogkey/602844/

 突然、告白された。


見ると、同じクラスの男子だった。



 私は恋をしたことはない。

というか、そんなことをする余裕は無かった。


今でこそ何とか学校に通えて入るが、私には先天性の難病を持っている。


いつ、倒れてもおかしくないのだ。


 そんな体で恋をしろと?

いつ死んじゃってもおかしくないのに。


彼も私のことは知っているはずだ。


だから、告白されて少し腹が立ったのだ。


「嫌」


だから、即答した。


 すると、彼が本気で落ち込んだ。

はた目で見ても分かるくらいの落ち込みっぷりだ。


彼がその理由を聞いてきた。


「なんとなく」


適当に答えた。


 ・・・興味が無いのだ。

彼にではない。恋そのものに興味が無いのだ。



あ、彼が本当に泣きそうな顔をしてる・・・


それを見たら、私の中の何かが動いた。


「私が条件を一つづつ出すから、それを全部果したら、付き合ってあげる」



 思わず、そう言ってしまった。

なぜか、そう言ってしまった。


言い直そうとしたけれど、彼が涙目でうなずく姿を見たら、何も言えなくなってしまった。




【その一:私が好きな理由を800字以内で記述すること】


ついに、送ってしまった。


このまま送らないで無視しようとも思ったが、彼の姿を想うととてもそんなことは出来なかった。



送ってしまってから考える。


こんなことをして、一体何になるんだ?



 あのまま、普通に断ってしまえば良かったんだ。


・・・だけど、悲しんだ彼の姿を見てたら、なぜかそれが出来なかった。



 彼を悲しませたくない。

だけど、こんないつ死ぬか分からない私と付き合わせたくない。


どうすればいいの?


どうしたら彼が傷つかずに諦めてくれるかな・・・?


そうだ、と私は思った。


・・・嫌われちゃえばいいんだ。

そうすれば、きっと、誰も悲しまない。


そうだ、そうすればいいんだ・・・



それにしても、800字以内で記述って、どこの大学入試小論文なの、って我ながら思った。


 彼はなんて書いてくるのだろう。

『君が好きな理由? それは君が君だからさ』とか書いてくるのかな?


そう思うと、少し楽しみだった。




翌日、早速彼が渡してきた。


読むと、これが、彼のありのままの気持ちなんだろうな、ということが伝わった。



そう思うと、嬉しさがこみ上げてくる。




だけど、だめだ。


 私は嫌われなきゃいけないんだ。

嫌われた方がいいんだ・・・!



私はそれを、放送委員の子に渡した。



だけど彼は、私を嫌うことは無かった。





【その二:野球選手、井原のホームランボールを取って来ること】


 井原選手とは弟が好きな野球選手だ。

聞くと、とても有名な選手らしいので、これを送ってみた。


これで彼が諦めてくれれば、と思った。




 ───後日、弟と見ていた野球中継で、井原のホームランボールを取った彼の姿が映っていた。

その姿はとてもうれしそうだった。


はた目で見ると、こっけいな姿だが、私は胸が締め付けられる思いがした。






 それからも、私は彼に様々な条件を出した。


それはもう条件と呼べるものではないのもあった。


ある時には校長先生のカツラ疑惑をはっきりさせた。

ある時には犬と戦わせた。

ある時には川を泳がせた。




───それでも、彼が私を嫌うことは無かった。


それどころか、私の中の、彼に対する気持ちがどんどんと強くなっていった。





 ───もうすぐ、大きな手術がある。


とても難しい手術らしい。


だが、成功すると、私の病気がほぼ完治することができるらしい。

ただ、失敗すると───


そのことは家族以外、誰にも知らせていない。


もちろん、彼にも。



もうすぐ、その手術だ。



その前に自由時間を与えられた。


 今私は病院の、携帯が使える屋上にいる。

携帯画面を眺める。

メール作成画面が映っている。


 作成したメール。

これを彼が見たらどう思うだろうか。

・・・今度こそ、諦めてくれるかなあ。





【title/これで最後だよ。


本文/




私の手術が、成功すること】



送信ボタンを押して、私は一人泣き出した。



迎えに来た看護師が心配そうに駆け寄ってくる。




私は「大丈夫です」と言って携帯の電源を切った後、自分の病室へ向かった。






 本当のかぐや姫なら、ここで不死の薬も添えるのだろう。

だが、もし私がかぐや姫だとしたら、君にそんなものなんかあげるもんか。

───一緒に生きて、一緒に死のう?


 だから大丈夫。

私はこんなところで死なないよ。


 君は私のためなんかに、なんでもしてくれた。

どんな無茶なことでも。


今度は、私の番だ───。



 あ、それと・・・これが終わったら、君に伝えたいことがあるんだ。

大丈夫、必ず伝えるから。


これが終わったら、それを送信してあげる。


【───大好きだよ】

本当は、この作品を書くかどうか悩んだんですよね。


「かぐや姫の憂鬱」はもうそれ自体で完結しており、様々な解釈が出来ます。


それなのにこれを書いたら、いろいろあった解釈が、一つにまとめられてしまうんじゃないか、と───


にもかかわらずこれを書いたのは、完全に作者のエゴです^^


そもそも「かぐや姫の憂鬱」自体勢いで書いたものですし、これも勢いでいっちゃえ───と。


・・・はい、すいません。

ちょっと調子に乗りすぎちゃいましたね。


ここから先、二人がどうなったのかは、皆さんのご想像にお任せします。

想像するほど、それだけ物語があると思います。



ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました^^


もしよろしければ、感想・評価をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] あぁもう!泣かせないでくださいよ! ……なんて笑 すみません。 でも本当に感動しました。 シリーズでこの彼女編もあって良いと思います。 いやむしろあった方が……!☆笑 私は好きでした。 …
2015/08/26 12:31 退会済み
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