表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しぐれぐむ  作者: kazuha
プラネタリウム
88/200

88、




 その現状に気付いた私は彼を突き飛ばして口を手で隠した。



「あはは、ごめん。我慢できなくて」

「いや、あの……」



 何故か嫌悪感があった。


 嫌だった。




 そんなこと知らない機械は右を示して、そっちで落書きを行ってくださいと言っていた。



 私は彼の顔を見ないようコートを着て荷物を持った。



 このまま逃げてもよかった。


 ただ、物凄く落ち込んでいる彼を見たらそんな気にはなれなかった。




 気まずい空気があるなか、狭い落書きルームで適当に落書きを始めていた。



 その時に、印刷するプリを選べるらしく、もちろんの如くそのキスプリを排除した。




 落書きもちょちょいと終わらせ、出てきたプリを分ける。



 手帳に挟んでプリクラエリアから出る。



「ごめんね」



 まだ怒っているとでも思っているのだろうか。


 始めから怒っている訳ではないけど、突き飛ばしたのが思ったより効果が大きかったようだ。



「じゃぁ、もうあんなこと急にしないでね。約束できるなら許すよ」


「うん、わかった!」



 その言葉と共に一歩後ろを歩いていた彼が真横に来た。



 彼はにっかりと顔を華やかに輝かせた。



 私は苦笑いを浮かべて視線を移した。



 たまたま歩いていたのはあのぬいぐるみのクレーンゲームがある場所だった。



 セラ君が狙っていた、私の欲しかった彼は居るのだろうかと見てみたら、そこにはそのピンクの姿がなかった。



 誰かに取られた。


 おかしな表現だ。



 別に、狙っていただけで、私のものではないのに。



 今度は止まることなく、ゲームセンターから出た。



 さほど何もしていないが、外はもう夕焼け空であった。



 腕時計を見ると4時を過ぎたくらいであった。


 日が暮れるのがはやい。



 上を向いて息を吐くとその道筋が白く霞んだ。




「寒いね。雪が降りそうだ」



 私は、そうだねと小さく呟いた。



「もう2月だって言うのに、ホントに寒いよ」



 セラ君は何歩か進んで行った。


「ねぇ、時雨ちゃん。また、遊ぼうね」



 私は視線を下ろして彼を見る。


 北風が吹くと彼は手をコートのポケットに入れる。


 風に煽られるマフラーを無視して顔だけこっちを向いた。



「帰ろ。お腹空いちゃった」


「うん」



 私は小走りに追いかけて、肩を並べると歩きに変える。



 帰り道、彼は私の顔を見なかった。


 やはり罪悪感なのだろうか。


 会話はしても、なにか素っ気ないところがあった。




 駅で別れてそのまま帰宅した。



 お風呂に浸かっていて、ひたすらに彼のそのことを不思議に思っていた。




 ふと気になる唇に触れ、口までお風呂に浸かった。



 今までのセラ君ではなかった。


 普通に見せているようで、不安が合間見えていた。


 もしかして、ソロとしてやることがまだ怖いのでは無いだろうか。


 そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ