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しぐれぐむ  作者: kazuha
プラネタリウム
87/200

87、




 テラコさんはセラ君が買ってきたおにぎりとペットボトルのお茶を受け取り、また更衣室に戻って行った。



 そして、変な雰囲気を醸し出しているセラ君の横で私は彼の顔色を伺っていた。




 あの口ぱくの意味が知りたかった。



「ねぇねぇ、やっぱりなに? 私見てなにか言ったよね」



 エスカレーターを降りながら、歩きながら何度も聞くが答えは一緒だった。



「かわいいなって言ったの」

「だから、最後、ん、で終わってたじゃん!」

「気のせいだって」



 なんでこうも言ってくれないのか。


 気になってしょうがない。



「そんなことよりさぁ、プリクラ撮らない?」



 男の人からでもプリクラを撮りたい人とかいるんだな。


 まぁ、プリクラなんて撮ったこと今までありませんが。


「いいよ」


 軽い気持ちだった。


 いや、むしろ興味があった。


 なにせ、私、女の子だし。





 近場のゲームセンターはやけに人がいた。


 学生が暇だからと蔓延っているのだろうが、殆どのゲームたちの前に人がいた。



 入口付近のクレーンゲームをじっくり見ながら、奥へ奥へと進んでいく。



 この中にクマのぬいぐるみみたいな、まぁ違うと言われるとそうですね、と言えるような謎のぬいぐるみを見つけた。



 いや、このシリーズ好きなんです。



 手のひらサイズのそれは所狭しと山積みされていて、転がしてしまえば穴に落ちてしまいそうだった。



「これ欲しいの?」


「あ、えっと……」



 どうやら長くこの前にいたらしい。


 セラ君の顔が私の顔の隣にぬっと出てきた。



「大丈夫だよ」


「欲しいんでしょ。取ってあげる」



 そう言うと、カバンから長財布を出して100円玉を出した。



 それをコイン投入口に入れると、ピコン! と大きな音が鳴ってクレーンがガタンと動き、アームが開いた。



「何色がいい?」


「えっと、ピンク」


「わかった」



 1と書かれたボタンを押した。


 ゆっくりとクレーンが右に動いていく。


 それを丁度真ん中あたりで止め、次に2と書かれたボタンを押す。


 次は奥に進んでいく。



 その先にはピンクのぬいぐるみが1匹だけ邪魔がない状態で寝っ転がっていた。



 その丁度真上でボタンから手を離した。



「よし、いい感じ」



 まっすぐ、そのクマに向かっていく。



 アームは狙いのぬいぐるみの左右5センチぐらいをえぐる。


「あれ?」


 想定外?


 そんな感じの情けない声変わり聞こえた。



 アームが閉じ、えぐった付近のぬいぐるみが若干浮き上がっただけで、狙いのぬいぐるみには触れさえしなかった。



 クレーンは無意味に上がっていく。



 なんの変化も与えられないまま。



「あ、ごめん! もう1回!」


「いいよ。そんなに欲しい訳でもないし」


「え? でも」


「大丈夫だよ。はやくプリ撮ろうよ」


「う、うん」




 私はセラ君の手を取り、奥へと進もうとした。



 クレーンゲームの立ち並ぶ所を急いで歩いていくと、やけに黒い物がクレーンゲームの奥で私たちと逆方向に向かって行った。


 直ぐに後ろを確認したが、既になにも無かった。




 変だ。


 消えた物じゃなくて、黒からくる、私の勝手な認識が。




 私は頭を振り、取り直してプリの方へ向かう。



「どうしたの? 知り合いでもいた?」



「あ、ごめん。なんでもなかった。間違いだったみたい」




 ふーん。



 そんなような言葉が聞こえた気がしたが、周りの音でかき消された。



 プリクラの立ち並ぶ場所にくると、ここには授業を終えた女子高生たちがたむろっていた。



 私、チャラい子って苦手なのよね。




 そう思っていると、セラ君が、どれにする? と聞いて来るので、1番空いていそうな所を指さした。



 小悪魔と天使……。


 みたいに書いてある、単に興味本位にそこに入る。


 とりあえず百円玉を2枚ずつ出し合って、手荷物を置き、コートとかを脱いで荷物の上に置き髪を整える。



「お金、入れるね」

「うん」



 私は後ろの壁に張り付く。



 タイプを決めてね。

 小悪魔タイプ、天使タイプ。



 ええっと……。


 私は画面に近づこうとしたら上から下りてきた緑の布の棒が頭に当たった。


「いったぁー」


「あはは、小悪魔のイタズラかな」


 セラ君は笑いながら小悪魔の方を押した。



 明るさを決めてね。


 機械が催促するのを無視して、おすすめ、を押すセラ君。



「時雨ちゃん。枠は決めてね」



 まだうすら笑いだった。


 私は頭をさすりながら、枠を適当に決めていく。


 だいぶ悩みましたが。


 時間ギリギリで押し終えると画面が私たちを映し出した。



「時雨ちゃん、はやく戻ってきなよ」


 また笑い声。



 私は少しだけ下がって、膝に手を付けた。


 全然ない胸を強調するように寄せ、右手を顔の横に移した。


 盛大にピース。



 するとセラ君は私の肩に手を回して顔を横につけ、同じようにピースをする。


 刹那にカシャという音が鳴り響くと、画面は次を催促する。




 次のポーズ。


 次のポーズ。


 次のポーズ。



 そうして、選んだ枠は全て撮り終えた。



 すると、画面はボーナスだよと言ってまた私たちを映し出した。



 慌てて私はポーズを撮った。


 あと、2秒でシャッターが切られる。


「ねぇ、時雨ちゃん」


「なに……?」




 セラ君の方を少し向いたはずだった。



 カシャ。



 顎を触られている。


 そして、顔がやけに近かった。




 唇が、触れている。




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