81、
『会って話がしたい』
本文はそう書いていた。
どう返したらいいかわからずただ携帯を握り締める。
ーーーー嫌いだーーーー
あぁ、なんで今更。
謝りたいとかでも言うのだろうか。
そんな言葉聞きたくもない。
私は返さないことにした。
携帯をパタっと閉じ、机の上に置く。
それにしても、最近気が滅入ることばかり襲いかかる。
もともと私が美晴なんかと出会わなきゃ良かったんだよねぇ。
でも、美晴と出会えたからみんなとも会えたし、私自身、少しだけ強くなれた気がする。
まだ、頑張らないと。
そんなこと思ってたらメールを返さなければいけない気がして携帯を開く。
あぁ、もう胃が痛い。
ったく、
『わかった。どこに行けばいい?』
携帯を握ったまま待っていると、直ぐに返信が来た。
『中央公園』
一応お化粧をして、服もちゃんとして、都会にある中央公園に向かった。
ってか、寒い中で話すのですか?
まぁいいけど。
どうせ別れ話なんですから、寒い方が楽でいい。
電車を降り、足をそっちに向ける。
途中行きつけのCDショップを横切る。
セラ君のCDの予約販売と大きく掲げられている。
もう雲の上の存在みたいになっちゃたな。
そのまま、買いたい気持ちを横目に、中央公園に向かった。
子どもはいるにはいるが、お母さんは井戸端会議をしているし、各々過ぎてなにがなんだかわからなかった。
その一角のベンチに彼がいた。
あぁ、会いたくない顔を見つけてしまった。
会うしかないのだけども。
重たい足を引きずって、彼のところに向かった。
公園に入ったあたりで私に気付き、イヤホンを外す。
「ごめん」
開口一番そうだった。
やっぱりか。
「なにかよう?」
訝しげに答え、ベンチに座る。
キンキンに冷えている。
「誤解なんだ」
「なにが?」
彼の顔は見ていない。
ただ、いつもと違う。
慌てているような、恥ずかしがっているような、小さくなったような感じだった。
「時雨が嫌いなんじゃない」
「じゃぁ、なに?」
「あのな……」
「なによ?」
「その、自己嫌悪な感じが嫌いなんだ」
なによ。
これは、私の今までの人生で身に付けてきた、スキルとでも言うもの。
「なによ、……そんなの私が嫌いって言ってるのと同じじゃない! わざわざそれを言いに呼び出したの! バカじゃない!」
私は立ち上がり、直ぐにそこから立ち去ろうとした。
後ろ手を引かれる。
「違うって!」
「なにがよ!!」
振り返り怒鳴りつける。
しかし、彼の真っ直ぐな目に私は気押される。
少しの沈黙が流れる。
井戸端会議の標的が私たちになったみたいだ。
こっちを見ながら何かを話している。
「嫌いだけど、オレが治してやる。んで、オレが好きな時雨にしたい。好きなんだよ。お前のことが。隣にいないなんて嫌なんだ。だから、もう一回、考え直してくれないか」
言い訳みたいだ。
言い訳にしか聞こえない。
「気が向いたら、……連絡する」
俯いてそう言い、手を振りほどいて逃げるように公園から出ていった。