80、
「お前なんか嫌いだ」
目の前の美晴は私を見てそう言った。
「キモイ、うざい、近づくな、オレの目の前から消えろ」
ガバっと布団を押しのけて起き上がると、あまりの寒さにまた布団に潜った。
「なんだ夢か」
走った後みたいに心臓がバクバクしてる。
あぁ。
ホントに変な夢だ。
「あぁぁぁぁぁ!!」
気合を入れて起き上がり寝間着から部屋着に着替えた。
外に出る用事もないので昔着てた、だっさい服を着た。
あったかいのだ。
カーテンを開けると意外と高い太陽に私は大体の時間を判断した。
お腹空いた。
私は居間に向かい、もう既にいない母親の残した冷めた食事が机の上にポツンと置いてある。
それらをレンジで温め、1人で食事を食べていると、携帯が震えた。
それは皐月さんからで、テレビの8チャンネルを見てと言うものだった。
近くにあったリモコンでテレビをつけ、チャンネルを切り替えた。
驚愕した。
2週間。
だいたいそのくらいだ。
彼にあっていないのは。
さすがに、CDまでとは言わないのか、でもなんでセラ君が今インタビューを受けているのだろうか……。
期待の新人的なことが左上に書かれ、セラ君はアナウンサーの質問に平然としたいつもの笑顔で返していた。
「2月25日にCD『ラビット』を出しますので是非買ってください! あと3月1日に初ソロライブやりますので、チケットは早めに買ってね!」
ものごとがおかしいくらい早く進行していた。
だって、一ヶ月でソロライブなんてやらせて貰えるのだろうか。
むしろ、まだ1曲しかないのでは?
いろいろなことがわからないまま電話がかかってきた。
「なぁなぁ、見たか? セラくんどうしたんや? どんなチート使えばこうなるんや?」
「えー、っと」
既に興奮している皐月さんの疑問は私も疑問視していたことだ。
答えられるはずもない。
「わからないですけど、私は応援してます」
そう言って失言だと気づいた時にはもう遅かった。
罵声をもらった気がしたが、直ぐに切られてしまった為なにを言われたのかわからなかった。
あぁ。
サチレ復活を望んでるんでいるんだった。
でも、道は違っても頑張っているんだから、応援したい。
それは、違うのだろうか。
自分の本心ではないのだろうか。
もうわからない。
深く考えるのはやめよう。
テレビを消して、ご飯に手をつけようとした。
その時に、メールが来た。
それが、美晴からなので、思考が数秒止まった。