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しぐれぐむ  作者: kazuha
その出会い
8/200

8、




 時間は17時を少し過ぎたくらいだった。



 私と柘植くんは横一列に並んで、歩道を歩いていた。



 空は珍しく晴れていた。


 星が綺麗に光り、月は満月だった。



 冷たい風は頬を撫で、髪を揺らしてから体温を奪う。



「寒っ!」


 私は思わず口に出してしまった。



 柘植くんがゆっくりこっちを向いたのを私は確認してしまった。


 あぁ、なんか言われそうだ。



「大丈夫か?」



 そう言われて答えに困った。


 こういう時ってどう言えばいいのだろう。



「ったく、ほら」 



 困っていたら、肩にマフラーを掛けられた。



 意外と大きい黒のマフラーは私の体まですっかり覆えるものだった。



 そして、少しだけ……、温かかった。



「それで大丈夫だろ」


「う、うん」



 彼がマフラーを外しているのは、外では珍しかった。



 だからか、星が光っているこの夜空がやけに似合う気がした。




「なぁ、お前薄着で寒くねぇの?」



 確かに、冬を乗り切るには無謀な服装であった。



「今から行くか。よし、そうしよう」



 そうひとりで決定して私の手を掴んだ。



「服買いに行くぞ。なんでもいいか?」



 いやいやいや。


 そうじゃなくて、なんで手を掴んでいらっしゃるんでしょうか。


 あの、冷たいし、



「よっしゃ、いくぞ」



 どこにいくのよ!



 ってか、私お金ないんだから!



 連れて来られたのはデパートの中のオシャレな服が立ち並んでいるブースであった。



 彼は私に服を合わせながら何やら独り言を言っていた。



「あら、美晴じゃない。どうしたの? 彼女の服選びかしら?」



「あぁ、そうなんだ。ちょっと連れ回してたら暗くなって、こんな薄着で寒いらしいから買いに来たんだが」 



「なら、こっちの方がいいわよ。このすらっとした体型で白い肌ならね」



 急に来た店員は、誰かと思った瞬間に思い出した。


 確か、テラコさんだったか。



 テラコさんが私に合わせた服は、どうやらパーカーだった。


 色は薄い青で、フードには流行りなのかクマの耳がついていた。


 フードを締める紐の先には白いポンポンがついていて、小動物感を表に出していた。



「子供っぽくねぇーか?」



「なに言ってんのよ。今時幼い感じに作るのが主流なのよ」



 確かに、最近は幼い方の可愛い感じの服を着ている人が多い気がする。



「このパーカーで、こっちと、後このスカートで、タイツの、このモフモフ! はい、試着室あっちねぇ。いってらっしゃーい」



 半ば強制的に試着室に投げ込まれる。



 はぁ、柘植くんと付き合ってると自分の意思で動けない気がしてきた。



 仕方なく私と一緒に投げ込まれた服たちを着ていく。



 全体的に青と白を貴重としている服たちを着終わる。



 それを鏡で見るとびっくりしてしまった。



「終わったかしら?」



 聞く気があるのかと思うほどカーテンが素早く開けられそう聞かれた。



「あら、大成功ね」



 そう言われて私は急に恥ずかしくなった。



 なんせ、オシャレなんかそこまでしていない。



 化粧とか、自分に似合う服とかは着るが、こういう流行りとかを試すのはしたことがなかった。



「まぁ、そんなこと言っても美晴タバコ吸いに行っちゃったけどね」



 バカじゃないの!?



 普通ひとりにする?



「ねぇねぇ、聞きたいことがあるの。これから私休憩だから、ちょっと待ってて」



「あのぉ、服は?」


「あぁ、もうお代は頂いたから大丈夫よ。そのまま着てて」



 テラコさんはどこかへ消えていった。


 本当にひとりになってしまった。



 私は試着室から出て振り返った。



 いつの間にか買われていた服を着ている。


 柘植くんが買ったのだろうけど、どうしてこんなことするんだろう。



 素朴な疑問だった。





 少しだぶだぶの服。



 なんだか、温かかった。

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