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しぐれぐむ  作者: kazuha
揺れ動く感情
70/200

70、




 なんやかんや、セラ君に報告することを先延ばしにしていた。


 授業中にメールが来てもなんて返したらいいかわからず返さなかった。


 テストなんてどうでもいい。

 今はこの課題に直面して、私は静止している状態だ。



 溜め息1つ。



 お昼になると急激な空腹感にお腹の虫が鳴いた。



 さぁ、はやく食堂に行こう。




 講義室を出ると、そこに美晴はいた。


 それ自身は驚いて、しかし急に嬉しくなった。


 美晴は私が近寄るのを確認すると階段を降りる。

 階段半分くらいで追いつき、歩幅を合わせて歩く。



「午後あったっけ?」

「講義? あるけど」

「そうか。今日先帰ってるな」

「わかった」


 少しだけのやる気を削がれた気持ちだ。


 食堂で相変わらず並ぶラーメンの場所に今日は2人で並んでいた。


 私はしょうゆ、彼は味噌。


 ほぼ同時に貰い、2人席に座った。



 楽しい時間だ。


 今までなにも感じなかったが、なんでこんなにたのしいのか。


 あのうるさかった彼女は私の視界にはいない。




 そう、束の間。





 午後の講義が終わると私はあそこに行くことにした。


 あ、名前覚えたよ。


 カフェ・フェルメート。



 まぁ、あそこでいいよね。


 もうひとつの家のような場所に私は足を向けた。



 あんなことになっているなんて知らずに。






 私はドアを気軽に開けた。


 カランカラン。


 相変わらずの軽い音だった。



「おい!! 美晴!!」


「ちょっ! セラ!!」



 もはや取っ組み合いになっていた。


 セラ君が美晴の胸ぐらを掴み上げ、それをやめさせようとして皐月さんはセラ君を押さえていた。


「なんで黙ってんだよ! おい答えろよ!」

「だからやめろって!」

「意味がわからねぇよ! なんだよ! 時雨のこと好きじゃないんだぞコイツ!」



 どういうこと?



「おい答えろよ!! なんで告白したんだよ! 嫌いなんだろ! なんでだよ!」

「セラ!」

「おい!!」


 口を開こうとしない彼に私は限りなく、小さな希望をもった。



「おい!」


 揺さぶり続けられ、お互い髪がぐしゃぐしゃだった。


「オレは、」



 重い口を開いた彼は、まっすぐセラ君を見た。


「確かに嫌いだ」

「ってめぇ!!!」





 ……どういうこと?



 美晴はセラ君に殴られソファに倒れ込んだ。


「じゃぁなんでだよ! 嫌いなんだろ! なんで告白したんだよ! そんなお前をなんで時雨ちゃんは!」




 ごとん。


 手に持っていた教科書たちを落とした。


 それに気付いたのは誰でもない、美晴だった。



 美晴はカウンターに置いてあった荷物を持ってそのまま私の横を通り過ぎた。



 無言で、目さえ合わせず。



「……時雨……ちゃん」



 急に足の力が無くなった。


 その場に座り込む。


 なんだったの?


 なんなの?


 苦しい。


 なんなのよ!


 なんなのよ。



 涙が出てきた。


「なんなのよ……」


 遂には声を出して泣く。


 皐月さんが側によってきて私を抱き寄せた。


「大丈夫? 大丈夫?」


 その問に私は返せず、ただただ、泣いているだけだった。

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