7、
「あんた話し聞いてた? 私痩せたいの! わかる?」
「あぁ? 聞いてたよ。でも好きだろ?」
「ま、まぁ、そうだけど」
「なら黙って入るぞ」
なんやかんやスイーツパラダイスに入り、チケットを買って、ケーキ食べ放題を始める。
とりあえず、カバンとコートとマフラーは席に置いて、一目散にケーキが乱立している所に行く。
お皿を二枚とり、食べたいケーキを次々に乗っけていく。
ショートケーキでしょー、
タルトに、
あ!
チョコも食べないと。
あと、リンゴのムースに
あれに、これに……。
戻ってお皿を机の上に置いたら、どうやら待ってくれていた柘植くんが驚いた顔をしていた。
「なに、その量。一人で食うの?」
「もちろんじゃない」
私は座って、すぐさまフォークでショートケーキの苺を食べた。
「はぁうぅ! 美味しい!」
柘植くんはあっそと呟いて自分の食べ物を取りに行った。
その間に私はひと皿食べ終えた。
彼は一枚のお皿にサラダとスパゲッティを乗せていた。
「なんでそんなの食べてんの? スイパラ来て食べるもんじゃないでしょ」
サラダを一口食べた彼は私を見てこう告げた。
「知ってるか? 野菜最初に食べとくと太りにくくなるって」
思わずそのまま固まってしまった。
サラダ食べると太りにくくなるの?
ホント?
「おい、食わないのか? っつか知らなかったのか?」
「し、知ってたし! 知らないわけ無いじゃん!」
私はそのままチーズケーキを一口で食べた。
「痩せたいって言ってたわりには、野菜食わないんだな」
「スイパラに来てるんだからスイーツ食べなきゃ損でしょ!」
今度はタルトを食べる。
「まぁ、いいけど」
彼はそのまま野菜を平らげてからスパゲッティを上品に食べ始めていた。
既にふた皿目を食べ終え、次のを取りに行く。
また皿一杯にケーキを乗せ、今度は炭酸飲料を取る。
「普通コーヒーじゃねぇ?」
「うるさいわねぇ。私が飲みたいんだからいいじゃない。黙って食べてて」
「はいはい」
やっとスパゲッティを食べ終え、何かを取りに行く柘植くん。
そんなことなんかどうでもいい。
ここで事件なのだ。
お腹がいっぱいなのだ。
「取りすぎたわ」
今更後悔しても、目の前にある皿の5分の4は残っているケーキを戻すわけにはいかない。
意地でも食べようとひと切れ口に運ぶが、口は受け入れることもせず、口を開けたことにより中には詰め込んだものが出てきそうなのだ。
そこに柘植くんが帰ってきて、皿に少しのケーキを乗せていた。
それをあたかも計画していたかのようにパクパク食べていく。
私はそれを見ながら、この余ったケーキをどう処理するか考えていた。
「もう食えないのか?」
じっと見ていたのに気づかれたのか、彼はそう聞く。
「そ、そんなことないし」
あぁ、なんで強がった私。
「そうか。なら俺を見てないでさっさと食え」
「は! 誰があんたなんか見ますかって! 頼まれても願え下げだよ!」
1個食べてみた。
直ぐに吐き気が襲い、それを抑えるために炭酸飲料を飲むが、炭酸のおかげで更にお腹が重くなった。
無理だ。
まだ10個くらいあるんだけど食べられるわけがない。
「おい、なに皿見つめてんだ? よこせ。食えねぇえんだろ?」
と言われて無理やり取られそうになったのを私は止めた。
「食べれる!」
無理だよ。
もう胃が限界だよ。
「食えんなら食えよ。時間そろそろやばいんだからよ」
私は机に置いておいた携帯を開けて時間を確認した。
後30分程度だが、この量を食べるには確かにギリだ。
「うぅ、」
私はまた1個詰め込む。
しかし、咀嚼はできるものの、飲み込むことはできない。
柘植くんはそんな私をずっと見ている。
「よこせ」
「うぅ、」
泣きそうだった。
なんか屈辱的だった。
取られた皿のケーキはものの数分で消えたが、さすがに柘植くんも容量が限界を迎えたらしく、時間はまだあったが、店を出ることにした。