69、
セラ君の返事はとても遅かった。
私は大学の課題を3日で終わらせて、よし、明日学校だぞとお風呂から上がったくらいだった。
どうやら友だちと旅行していたらしい。
延々とその話だった。
いつ切りだそう。
そう思っているうちに、セラ君からメールが来なくなった。
言い出しにくい。
人生で初だ。
フルのなんて。
とにかく寝て学校に備えた。
その日夢を見た。
晴れていた。
それでも雪は舞い、輝かしく煌めいている。
目の前には美晴がいて、苦笑いをしている。
ここはどうやらどこかの駅で、電車を待っているようだった。
私はなにかを言っている。
それに対して彼は頷いている。
電車が来たベルの音がした。
チリリリ……。
チリリリ……。
チリリリ……!!
ハッと目を覚ました。
もう朝か。
目覚まし替わりの携帯のダンドリオンのお目覚め曲がチリリチリリ言いながら流れていた。
止めることもしないで、私は寒い布団の外に出て急いで服を着る。
なんとなく、セラ君のチョイスした服を着ようと思った。
少しだけボーイッシュな服でキャップを被る。
デニムのパンツはダメージタイプで、左の太ももには大きな蝶が書かれていた。
大きな鏡でその姿を見てみて、まぁいいやという結論に至った。
朝ごはんは七草粥だった。
全くなんの味もしないので、塩を少量入れてみている。
まぁ、気持ち何も変わらないけどね。
そして時間なので学校に向かう。
先ず都市に向かって、そこで乗り換えだ。
そこで何故か壁に寄りかかっていた美晴を見つけた。
私が気づく前に彼の方が早く気づき、人の流れに合わせて私の隣に入り、黙って手を取った。
相変わらず冷たい手だった。
「おはよ」
「なに? 待ってたの」
「どうせ一緒なんだからいいだろ?」
「なんか可愛い」
「うるせ」
電車に乗ると2人で上手く座ることが出来た。
ここから20分くらい。
私は彼の肩に少しだけ体重を乗せてみた。
ふた駅くらい進むと目の前に腰の曲がったおばあちゃんが乗ってきた。
それと同時に美晴は立って席を譲った。
とても早いと感心してしまった。
最寄りで降り、学校で美晴と別れる。
手の温もりは、案外直ぐに無くなってしまった。
教室に向かい、そうやってなんの面白味もない毎日が始まった。