67、
なんだかんだうたた寝していたようで、美晴に起こされて目を覚ました。
「なぁ、ここら辺に高台みたいなのあったよな」
「……あるよ。……なんで?」
まだ外は暗い。
眠い目を擦りながら毛布を肩から膝に移した。
「初日の出、見に行こうぜ」
そういうことで、私はまた似合わない白のダウンコートを着て、高台に向かった。
高台には、東の方角にカメラのレンズを向けている人や、カップルが目立った。
まぁ、各いう私たちも端から見たらカップルですけど。
現在午前5時半。
あとどの位とかわからないけど、あまりの寒さに美晴にぴったりくっついていた。
細いが筋肉質で、それでいて落ち着く匂いがする。
がたがた震えながら何分かずっと同じ暗い空を見ていた。
漆黒の闇が段々と色を薄めていく。
それは青でもなければ藍でもない。
黒に白が混ざった、なんとも薄い黒なのだ。
ここからは早かった。
初日の出が頭を出すと東の空は紅く染まる。
赤と藍となった空の境界線は翠碧とも言うのか、これまで気にしてこなかった境目があるのだとしった。
紅から藍までの大きな大きな、渋い色をした虹。
それを生み出しているのが、私たちが待ちに待ち、望みに望んでいた、その絶対的存在ただ1つなのだ。
感動しないでいられるか。
私は思わず、歓喜の声を上げた。
まだ太陽は出きっていない。
やっと半分が出ると、そろそろ眩しくて見れなくなってくる。
カメラのシャッター音がそろそろ鳴り出した。
雲が1線を描き太陽の後光となって開いている。
高くあるそれは風の寒さも気にせず微動だにせず、ただ絶対的存在の登場に華を添える。
とうとう全てを晒す。
すると、空の黒は無くなり、夕焼けが始まったかのような錯覚を覚えた。
方向感覚がなくなる。
あまりに神秘的で、あまりに心に突く。
朝日は暖かくなかった。
私は美晴に掴まっている腕の力を強めた。
「美晴、いいよ、答え出す」
「なんだ?」
「付き合うよ。その代わり、このドキドキに答えてくれなきゃ私の為の歌、作ってもらうからね」
美晴は始め我慢したのか、吹くように笑い、やがて大爆笑に変わった。
「なによ!」
「好きだよ時雨。そんなところも」
恥ずかしくなって太陽から目を反らした。