表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しぐれぐむ  作者: kazuha
揺れ動く感情
67/200

67、




 なんだかんだうたた寝していたようで、美晴に起こされて目を覚ました。



「なぁ、ここら辺に高台みたいなのあったよな」


「……あるよ。……なんで?」


 まだ外は暗い。


 眠い目を擦りながら毛布を肩から膝に移した。


「初日の出、見に行こうぜ」







 そういうことで、私はまた似合わない白のダウンコートを着て、高台に向かった。



 高台には、東の方角にカメラのレンズを向けている人や、カップルが目立った。


 まぁ、各いう私たちも端から見たらカップルですけど。



 現在午前5時半。


 あとどの位とかわからないけど、あまりの寒さに美晴にぴったりくっついていた。



 細いが筋肉質で、それでいて落ち着く匂いがする。



 がたがた震えながら何分かずっと同じ暗い空を見ていた。




 漆黒の闇が段々と色を薄めていく。


 それは青でもなければ藍でもない。


 黒に白が混ざった、なんとも薄い黒なのだ。



 ここからは早かった。



 初日の出が頭を出すと東の空は紅く染まる。


 赤と藍となった空の境界線は翠碧とも言うのか、これまで気にしてこなかった境目があるのだとしった。


 紅から藍までの大きな大きな、渋い色をした虹。



 それを生み出しているのが、私たちが待ちに待ち、望みに望んでいた、その絶対的存在ただ1つなのだ。




 感動しないでいられるか。



 私は思わず、歓喜の声を上げた。


 まだ太陽は出きっていない。


 やっと半分が出ると、そろそろ眩しくて見れなくなってくる。




 カメラのシャッター音がそろそろ鳴り出した。



 雲が1線を描き太陽の後光となって開いている。


 高くあるそれは風の寒さも気にせず微動だにせず、ただ絶対的存在の登場に華を添える。




 とうとう全てを晒す。


 すると、空の黒は無くなり、夕焼けが始まったかのような錯覚を覚えた。


 方向感覚がなくなる。



 あまりに神秘的で、あまりに心に突く。


 朝日は暖かくなかった。


 私は美晴に掴まっている腕の力を強めた。



「美晴、いいよ、答え出す」


「なんだ?」


「付き合うよ。その代わり、このドキドキに答えてくれなきゃ私の為の歌、作ってもらうからね」



 美晴は始め我慢したのか、吹くように笑い、やがて大爆笑に変わった。


「なによ!」

「好きだよ時雨。そんなところも」



 恥ずかしくなって太陽から目を反らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ