65、
この後の気まずさはとてつもなかった。
私は手を離す素振りさえしたのにつながったままだし、お互い顔を背けてるし、気のせいか距離が離れてる気がした。
「なぁ、返事、すぐだせないか?」
「考え……たいんだけど」
「答え出せないだろ、どうせ。なら、今くれよ」
間違いない。
このままじゃダメなんだろうか。
セラ君も美晴も。
「やっぱり無理だよ。今すぐになんて選べないもん」
一瞬空気が変わった。
凍てつくような風が天まで伸びる炎を揺らした。
「……選べない?」
聞き返されて言葉のチョイスを間違えたことに気づいた。
「いや、えっとね。すぐに付き合うか、付き合えないかね、選べないよってね」
疑問符というより他の符号が頭に立っている気がした。
ただでさえオーラ怖いの美晴の目が私を睨んでいた。
「ね、だからさ……」
「わかったわかった」
彼の脅威から解放されたと同時にホッと溜め息を吐いた。
そんなこんなしていたら賽銭箱が目と鼻の先だった。
今年は何を願おう。
就活も始まる。
ってか、コイツとの子どもが出来ないことを切に願ってやろうか。
そんなこと言うと少子化を反対しているように聞こえるけど、まぁ望んでませんしね。
「5円」
「あ、ありがとう」
あまりに咄嗟すぎて受け取ってしまった。
なにこの5円。
すごい輝いているんですけど。
磨いたのってくらい。
「ほら次だ」
「あ、うん」
1段階段を登ると、賽銭箱だった。
大きな鈴を豪快に鳴らし、二礼二拍手。
そして賽銭、で一礼。
っであってたよね??
結局、健康を願っておいた。
無難にね。
そのまま神宮を背にして歩いていく。
ってか軽くはぐれましたはい。
かがり火の近くで美晴を探していると、甘酒を持って後ろから現れやがった。
私は驚いて大きな声を上げてしまい、注目の的に。
そのあとはお守りを買いに行く。
私は恋愛成就……と行きたいが、告白された矢先にこんなの買えないので無難に健康的な奴を頼んだ。
美晴は出世的な奴だと自分で言っていたが定かではない。
あとは恒例のおみくじ。
44番。
うわ、っと思ったが巫女さんが、とてもいいですね、四合わせですよ。
よんあわせ?
頭を傾げたら美晴が、手のシワを合わせた的な奴だよという助言でやっと理解した。
巫女さんに笑われていたのに気づいたのはおみくじを貰ったときだった。
少し離れた場所でおみくじを見ることに。
……、吉。
まぁ、平々凡々な私には妥当な線ですね。
美晴はと言うと……、平??
「ホントにあったんだな」
「なにプリントミス?」
「いやいや、あるんだよ、平って」
へー。
あ、ダジャレじゃないよ。
私はおみくじの内容を見た。
健康、時に崩しますが大した事なし。
恋愛、今決断すべき。
……見られてんじゃないかな?
方角、南が良。
ん?
別れが突然やってくる?
なんだろこれ。
勉学、無理せずに。
待ち人、目の前にいる。
……、いや私には決める権利がある。
めぼしいのはこのくらいだった。
うん、神様って怖い。
おみくじを木に括って神社を後にした。