63、
茹であがった蕎麦を4人で食べながら紅白を見ていた。
既にダンドリオンは終わり、私としては今日はもう満足だった。
翌年まであと3時間。
「もう寝るわ」
おバカはそういうなりさっさと部屋に戻っていった。
「私も寝るかなぁ」
母上、何故あなたは便乗する。
そしてその不敵な笑みは何ですか!
さっさと出て行ってしまった。
はぁなぜこやつと二人っきりにならねばならん。
美晴は残った蕎麦をつゆに浸して啜っていた。
私は今日何個目かわからないみかんを食べている。
紅白もそろそろ終わり。
今年ももう終わる。
そう考えると、この1ヶ月間長かった。
もとはといえばこの男のせいなのだが。
なんでこうなったんだろう。
理由なんてない。
全くない。
初めは貧血で倒れたお礼に奢ったのからだ。
ホントに、よくわからない。
現に、今私はコイツの隣りにいて無言ながら落ち着いているし、そこまで窮屈じゃない。
文句があるとしたら、なんで黒いのかくらいだ。
明るい色も似合うと思うんだけどな。
赤とか。
いや、ないな。
やっぱなし。
「なにニヤケてんだ、きもい」
「うるさいわね。美晴が赤い服着たらって想像したら面白かったの」
「なるほどな。まったく失礼なやつだ」
「わるぅございましたね。似合わない美晴がいけない」
「似合わないもの着させる妄想したの誰だ?」
「妄想じゃないし、想像だし」
「はいはい、わかったわかった」
最後一口の蕎麦を口に入れた美晴はテレビから私の方を向いてきた。
じっと見つめるそのやる気のない目に、少し気押される。
「な、なによ」
無言なのだ。
ここまでくると、怖い。
「なぁ、時雨」
「なによ?」
「セラのこと、どう思ってる」
……。
なんでそんなことを聞くの?
「な、なんでそうなったの?」
「いいから」
意味がわからなかった。
でも答えざるを得なかった。
セラ君。
可愛くて、優しく、それでも男の子らしくリードしてくれて、かっこいい。
声が綺麗で好き。
私は少し考えたが、不利益もないのでそう答えた。
「そうか」
そうしてやっと目から解放された。
なんだったんだ。
紅白もとうとう終わり、私も寝ようかなと思った。
私は立ち上がって、そう言えばコイツの寝る場所何処にすればいいのだろうと思った矢先だった。
「なぁ、神社行こうぜ」
相変わらず、理解できなかった。