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しぐれぐむ  作者: kazuha
揺れ動く感情
60/200

60、




「お邪魔しマース」




 大晦日。

 私はお笑い番組を見ながら頬杖を付き、甘いみかんを食べていた。



 そんななか、あいつは来た。



 母は飛んで彼を向かえに行ったが、ワタシは微動だにせず、むしろ険悪ムードを出していた。



 いや、そもそもあれなのだあれ。

 察してください。




 電気ストーブに足を向けるとあいつがこっちの部屋に来た。


「ご招待ありがとうございます」


 無反応に目だけを向けた。


 いつも通りの真っ黒い服装なのだが、何故ギターを背負っている?




「ん? これか? いや修理頼まれてな」



 あっそうですか。

 勝手にしてください。



「ここらへんは適当に使っていいですか?」


「いいわよ。そこらへん使って困るの時雨くらいだから」


 はい大迷惑です。

 お笑いタレントが落ちを言ったらしく大爆笑しているが、コイツのせいで聞いていなかった。



「じゃぁ、お言葉に甘えて」


 電気ストーブから少し離れた場所にギターを広げ何やら太い鉄製の紐かなんかを取り出していた。



 キュルキュル、とかビン! とかうるさい。



 軽く貧乏ゆすりが始まる私の足はどうやら苛立っているらしい。



「大晦日にお仕事なのね。大変ねぇ」

「金ないっすから。このくらいやらないと」

「そうなの。偉いわねぇ。あの子なんて浮いた話さえないのよ」


 つまらない娘で悪かったわね。


「バイトもしてないし、彼氏らしい彼氏柘植くんくらいだし」

「彼氏じゃないし!!!」


「……ね? 顔真っ赤にして可愛いでしょ?」



 あのおばさん軽く困ってるし。


「そんなにからかうと可哀想ですよ。それに、オレ来年の秋には東京に出るんで、お付き合いしたらきっと辛いものになるだけですよ」




 なによ。

 付き合わなくても辛いわよ。




 ……バカ。




 じゃらーん。


 ギターを奏でて、終わったのか背伸びをした。



「っおし、終わり」


「お疲れ様。お茶でものむ?」

「あ、はい。頂きます」



 私は新しいみかんを剥き始める。



 すると、ドタドタと階段を駆け下りる音がした。


 と思ったらドカンと大きな音がした。


 転げ落ちたな。




 ドアが開き、頭を押さえながらいつになくやる気がある目で美晴を見ている弟。



「なにギター?」


「その前に挨拶は?」


「あ、どうも」



 まったく礼儀がなってないなぁ。

 と思いつつも私もまだ挨拶してないや。

 まぁ、いっか。



「そんなことよりギター、なんで?」


「柘植くんはねぇ、なんていうの? ベンベンやるお仕事なのよ」


「まぁ、ギター弾いてるだけだけどね」



「あのさあのさ!」


 あのおバカが美晴に近づいて正座をした。


「ギター教えてください!」






 ……。


 …………。


 は!?

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