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しぐれぐむ  作者: kazuha
揺れ動く感情
56/200

56、




 テレビでは年末の特番的なのを放送している。


 スペシャルが多く、見ていて飽きない。




 床にあるストーブの前に足を出し、テーブルの上に積まれているみかんを切り崩しながら甘かったり酸っぱかったりのみかんを食べている。



 いまだに、あいつとの出来事を根に持っている。


 なんて私は馬鹿だなんだろう。




 深い溜め息が出た。


 年の瀬なんだなら考えるのやめよう。


 そうしよう。





 新しく向いたみかんをひと粒食べる。


 甘いような、酸っぱいような中途半端なやつだった。






 テレビのチャンネルを変えた。



 音楽番組に変わったらしく、たまたまダンドリオンがひな壇に座っているのがわかった。


 やるのかなぁ。


 期待させながら見ていたが、一向に始まる気配がない。


 終わってしまったのだろうか。




 そうチャンネルを変えようかと考えた瞬間にダンドリオンが司会の人に呼ばれてトークを始めた。



 へー。

 チーズケーキが好きなんだ。



 クリスマスの時に食べたケーキって友人から頂いたものらしい。

 ふーん。



 その友人のバンドが来年にはメジャーデビューする?




 ?

 美晴じゃね?

 いやいや、美晴がそんなことできるはずがない。

 きっとテラコさんだ。

 うん、そうに違いない。



 みかんをひと粒。


 相変わらず甘いのか酸っぱいのかわからない。



 ダンドリオンは凄い人気だ。




 今年は紅白出るんじゃなかったか。

 もちろん白組で。



 今やっているのは歌詞がハズレらしい新曲だ。

 相変わらずって感じで新鮮味がない。




 そう、どっかのスレに書いてあった気がする。



 でも、私は好きだから気にしない。









 ダンドリオンの新曲を聴いて、ほわほわとしながらそのまま音楽番組見ていた。




 すると、お母さんがみかんの山から1個取り剥いてひと粒食べる。



「あんたの彼氏」


「だから彼氏じゃないっての!!」


「はいはい。なんだっけ、柘植くん? 1人暮らしなんでしょ? 実家帰るの?」



 最近の母のお気に入りらしい美晴。


 毎回彼氏から始まるのでうんざりし始めていた。



「わからないけど帰らない的なことは言ってたよ」


 晋三さんが、毎年1人で過ごしていると飲み会の時に聞いた気がする。



「じゃぁさ、大晦日と正月にお呼びしない? 1泊してもらってさ」


「な! なんでよ! いやよそんなの!」


「大丈夫よ。あんたの部屋、意外と防音効果持ってるから」


「あほか!」



 タイムリー過ぎてこんな会話したくもないわ!



「とりあえず聞いてみてね。わかった?」


「はぁ!?」


「いいから連絡しなさい」




 机の上にひっそりと横になっていた携帯を取り出しメールを送る。




 意外と直ぐに返って来た。



 そして返答も意外だった。



『いいよ』





 いつの間にかお笑い番組に変えられていた母に、私はメールを見せた。



 私は溜め息をついて言葉を付け加えた。


「来るってさ。あのバカ」

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