55、
目を覚ました。
ここはどこだろう。
視点が合わないなか、ここが自宅ではないことだけを悟った。
肩が少し寒いので毛布のようなものに埋まり、寝返りを打った。
その先に誰かがいた。
テレビを見ながらグラスに入った水を飲んでいた。
そういえば、昨日飲みすぎたんだった。
皐月さんに付き合って飲んでて、ケーキテラコさんと被って、セラ君に告白されて、その後の記憶がない。
あぁ、これが二日酔いって奴なのだろうか。
頭がガンガンする。
やっと視界が戻り、その人が美晴だということがわかった。
なんか寒い。
私は肩を摩った。
違和感。
私は服を着ていないんじゃないか?
そもそも、上も下も締め付けられてる感じがない。
!?
私は咄嗟に起き上がり、美晴を見る。
美晴は既にラフな格好をしていた。
そんな美晴が私に気づいたようで目だけをこっちに向けた。
「おはよ」
「まさかのまさか?」
「……あぁ」
急に恥ずかしくなって体が熱くなった。
全く記憶がない。
あるのは下腹部の痛みだろう。
意識したら急に痛くなった。
「大丈夫だ。ゴムはした」
あのぉ。
そういう問題じゃないんですが。
初めてだ。
だから尚更記憶が欲しかった。
別に美晴が嫌だとかそういうのではなく、ただ大切なことの記憶がないことが嫌だった。
美晴はタバコをくわえ火をつけた。
換気口でもあるのだろうか。
煙は真っ直ぐ上に上がっていき、こっちに臭いまで来ない。
混乱している。
やたら痛い頭痛と下腹部の痛み。
毛布に丸まりながら、真っ白になった頭を落ち着かせようと必死になっていた。
なんで私ってこんなに、馬鹿なんだろう。
下着と洋服はすぐ側にあった。
全て着て、ベッドに座った。
灰皿にタバコを置いた美晴が水と頭痛薬を出してくれた。
ありがたく飲むと、ただの水道水がとても美味しく感じた。
汗が凄かったのだろう。
髪の毛はぺったんこだし、からだもベトついて気持ちが悪い。
「帰るか?」
「少し休む」
「そうか」
立ち上がろうと思ったが、体の芯が抜けたようで力が入らないのだ。
薬は苦い。
これが聞き初めてやっと動けるようになった。
美晴が車で送ってくれるそうなのでお言葉に甘た。
車内はタバコの臭いが染み付いてい、さすがに鼻を突いた。
会話もなく、洋楽のロックが車内を唸らせていた。
ブルースミス。
マイケルジャクソン。
意外と有名どころだなと思った。
もう既に自宅は覚えたようで、スラスラとついてしまった。
「じゃぁな」
私を降ろして直ぐにタバコをくわえていた。
「じゃぁね」
私は手を振り返してドアを閉めた。
直ぐに走っていってしまう。
車が見えなくなるまでそこに立ち、家の中に入った。