50、
セラ君に飲みの場所を聞くと近場の居酒屋だと教えてくれた。
いつもの場所らしい。
ライブは17時。
私は早めに着くように行き、作ったケーキを居酒屋に預かって貰った。
そのあとにセラ君から電話がかかってきた。
「もしもし?」
「やっほー。近くにいるかな? チケット渡したいんだ」
「うん。いるよ、今向かうね」
「あ、わかった。ごめんね」
電話を切り、ライブハウスに向かった。
少しだけ道に迷ったけれど、便利な携帯というツールを使ってなんとかたどり着いた。
ライブハウスの隣にコンビニがある。
その入口付近に、衣装なのか黒に赤のメッシュの入った髪はいつもよりもワックスが強めで、テラコさんがしたのだろうメイクのせいか女の子っぽかった。
服はラフな私服みたいで、でも光り物はうざい程ついていた。
「ごめん、待った?」
私は駆け寄る。
するとセラ君は私を見て笑顔になった。
「あ、やっと来た。待ったよだいぶ」
「……ごめん」
「ウソウソ。はい、チケット」
嘘なんかい、とツッコミを入れる前に長く硬い紙切れを渡された。
「渡したよ? なくさないでね」
「なくさないよ」
「ホントに? 意外とドジじゃん」
「ずっと手に持ってるし」
「あはは、それがいいね」
もう。
そんなんじゃないし私。
「もうちょいで開くから、コンビニで待ってたら」
「うん。そのつもり」
セラ君はポケットからアメを出した。
棒がついているアメ。
「いる?」
「いや、いいや」
「そっか」
袋から取り口にくわえた。
「まぁ、あげたらまた買いに行かなきゃいけないからありがたいんだけど」
そう言って袋をゴミ箱に捨てた。
そして、私の前に来てニヤリと笑う。
「あ、メイクしてるね。可愛いよ」
っちょ!!
っつか顔近すぎるし。
アメの棒が当たりそうなくらいの顔の距離。
突然の状況下に息を飲んだ。
「顔赤いよ? 風邪?」
「ち、違う」
「なら、いいんだけど」
やっと離れてくれた。
息切れが半端ない。
「あ、あとドリンク代500円掛かるから、それだけは出してね」
「うん。わかった」
そのまま中に入って行ってしまった。
ライブの前に疲れてしまった。
ただでさえ1人で心細いのに、ただでさえまともに入るの初めてなのに。
私今日生きれるのだろうか……。