5、
新しいオレンジジュースが来たと思ったら、柘植くんが戻ってきた。
半分くらい飲まれているビールを片手に私の隣の席に座った。
「酒飲まないの?」
「うん……」
「飲めよ。倒れてもいいから」
「いやぁー……」
「大丈夫だって。ゴムぐらいつけてやるから」
「…………」
っ最っっっっ低!!
私は立ち上がって直ぐに柘植くんをビンタした。
カバンとコートとマフラーをおもむろに取り、帰えろうと外に向かった。
外に出ると、パラパラした雨が降っていた。
私はコートを急いで着てマフラーを適当に巻き、カバンからピンクの折りたたみ傘を取り出して、歩き出す。
「ちょっと待って!」
その美声はきっとセラくんだろう。
私は振り返らずスタスタと歩く。
と、腕を掴まれた。
「ごめん。僕から謝るよ」
振り返り、息を切らしているセラくんが犬耳を垂らしているような凹みようで謝った。
関係はあるけど、セラくんが謝る必要なんてないのに。
「お詫びにさ、次の時のライブのチケット、タダであげるからさ、メルアドだけ教えてくれない?」
断ろうかと思った。
でも、断る必要ないんじゃないかと思った。
私はカバンから携帯を取り出した。
「ガラケーなんだ」
と言う彼はiPhoneの新機種を取り出してメルアドを交換した。
「ありがとう。多分うちらは朝まで飲んでるからさ。テラコさん吐かなきゃいいけど……。あ、ごめん。暗いし、気を付けて帰ってね」
セラくんは大手を振って見送ってくれた。
私も小さく手を降った。
そのまま帰宅して、冷えきったからだを温めるためにまずお風呂に入った。
自慢でもなんでもないけど、長風呂である。最近は半身浴しながら小説を読むのが日課になっている。
まぁ、あまあまの恋愛小説を読んでいるなんて誰にも言えないけど。
お風呂から上がって髪を入念に乾かし、化粧水、乳液をしてから寝室に向かった。
両親はもう寝ていて、弟は自分の部屋でネットゲームでもしているだろう。
静かな家の底冷えしそうな廊下を足早に歩き、部屋に入り一応明日の予定の確認をしてから冷えたベットに入り、充電してある携帯を開いた。
「あ、」
携帯にはメールが入っていた。
セラくんからだった。
題名には『今日はありがとう』と書かれ星の絵文字がキラキラ光っていた。
本文には、
『楽しかった。
美晴から聞いたけどダンドリオン好きなんだね。
僕も好きなんだ。
すっごい語りたいけど、明日からも僕たち忙しいから、時間があったら話そう。
P.S. 美晴がまだほっぺ痛いってほざいています』
絵文字も満載でそれでいてまだ楽しんでいるんだなと思わせる内容で、私は普段は返さないのだが返そうとメールを作成する。
『こちらこそ、ありがとう。
そうなんです大好きなんです。
話せる人ができて嬉しいです。
お仕事頑張ってください』
慣れない絵文字も付け、3回くらい見直してから送信した。
向こうからは返って来ることはなかったが、なんとなく寝れなかった。