45、
クリスマスが近づいていた。
クリスマスなんて関係なかったし、そもそもいつだかも当日にならないと覚えていなかった。
だが、新聞と共に持ってこられる広告たちと、テレビで連日連夜流されている最早キーワードを覚えていないなんて言えるはずもなかった。
『なぁ暇か』
昨日の今日で、普段送られてこない人からメールが送られてきた。
『暇よ』
絵文字も顔文字もなしで送られてきたので、目には目を、なしにはなしを。
朝っぱらからだったので少し機嫌が落ちた。
久しぶりの連休に心を踊らせている。
なんかやれることはないかと考えたところ、がんばっているし、感謝の気持ちにと、ケーキを作ろうと思っているのだが、如何せん作ったことない。
私は居間でケーキのレシピを複数眺めて、食材を買いに行こうとしていた。
また携帯が鳴った。
学校がないのでマナーモードを切っていた。
なのでメールが来る度にカジ君の声が聞けた。
束の間の幸せ。
『会えるか?』
……。
『静かに寝てなさい! 風邪っぴき!!』
携帯をぱしっ! と閉めてまた目星をつけ始めた。
結局、ショートケーキにした。
つまらないなんて言わなせない。
これが精一杯だ。
私は家にない生クリームと、母に売っていると言われたスポンジを買いに行く。
電車を乗っていつものように都市らしい場所に出た。
近場にスーパーなんてないから、ここまで出る必要がある。
いゃぁめんどくさい。
めんどくさいがしょうがない。
すぐ近くのスーパーに向かってイチゴ、生クリーム、装飾するためのその他諸々、後はスポンジ、ホントに売ってた。
これだけでいいのだろうか?
スーパーをぐるぐる回って、めぼしいものを籠に入れていく。
「合計で5304円です」
うわぁー、結構いっちゃった。
缶とかいらないかなぁー。
っと思いつつも、この前の服代のあまりがあったが、これを使うといろいろと買えなくなる……。
しょうがないと諭吉を出して、一円玉を4枚出す。
帰ってきたのは千円札4枚と、3枚の硬貨だった。
あぁ、辛いなぁ。
お金なんてこんなもんなのかなぁー。
そのまま家に帰ろうとした。
スーパーを出て今日はCDショップに寄らないで真っ直ぐかえろうと道を選んだ。
最短距離は人があまりいない。
まぁ、こんな細い道を好んで使うのは私ぐらいだろうし。
右方は駅の壁、左方は車さえ通らない道。
真ん中あたりだろうか。
そこまで来ら肩をトントンと叩かれる。
私は振り返った。
いや、もはや反射的に後ろを向いただけだ。
「こんにちは、黄金沢さん」
そしていきなりグーでほっぺたを殴られた。