41、
カランカラン。
軽い鈴の音が入口で響く。
私は両手に持ったベーコンエッグサンドを口に運ぼうとして、入口を見た。
なにかおかしかった。
いつも通りにマフラーで口を隠し、眼鏡を掛けているが、マフラーの下にはまた復活した立体マスクに、顔は赤らんでいるようだった。
「やっと来たかー! 待ったぞ!!」
なんの違和感もないのか、皐月さんはそう叫び座るように促す。
「うるせぇな。脳に響くだろうが」
そう言うなり、私の4つ左のカウンター席に腰をおろした。
「土門、お粥」
「鮭? 梅? 卵?」
「卵」
普通、こういうところに来てお粥を頼むだろうか?
「もしかして風邪?」
つい聞いてしまった。
いや、心配って訳ではないのだけど。
「風邪っつうか、熱があって咳が出るくらい」
「いや、それ風邪だから」
私はそう叱咤気味に言うと、はいはいと流されてしまう。
「こんなんすぐ治るわ」
「すぐなおらなかったらどうするの?」
「いや、治る」
「変なやつだったらどうするのよ!?」
「変なやつってなんだよ」
「いや……インフルエンザとか」
「熱ったって、8度あるかないかぐらいだからな」
「……十分脳が溶けそうなんですけど」
美晴の前に飲み物が出される。
「まぁ、そうかも知れないけど、ライブ近いんだから早くは治してね。これ生姜湯」
「そやそや。時雨ちゃんやて心配なんやで! そんな美晴でもさ」
少し強く肩を叩かれた。
「大丈夫かだっつうの。心配しすぎ」
「はい、お粥」
心配しすぎってひどい。
私はアンタのこと思って言ってるのに。
なんでそんなこと言うのよ。
「本人が言ってるんだからほっとこうか。ね、時雨ちゃん」
「はいっ!」
そのままベーコンエッグサンドを一口食べる。
美味しい。
カリカリでスパイスの効いたベーコンに、トロットロの半熟エッグ。
さらに、外カリ中もふのパン。
カリもふトロカリの順で押し寄せる触感が私の浅い食感でも振るいが起きた。
「美味しそうやなぁー」
ハッとなって右を向いた。
羨ましそうにスプーンを上下に振っていた。
「なぁ、交換せぇへん?」
「まぁ、いいですけど」
「あ゛!? オレのメシが食えねぇってのか!?」
「クリームソース嫌いやって知っててやった土門が悪いんやんか!」
「できるならやってみろって言ったのお前だろうが! 黙って食え!」
「いやだ!」
「お残しは許しまへんで!」
「うるさいわ!」
皐月さんはやけになって一口食べる。
そのあとむせて、コーヒーでムリヤリ流し込んだ。
「やっぱむり! ごめん時雨ちゃん!」
半ば無理やり交換された形になり、皐月さんはベーコンエッグサンドを食べて生き返るー、とため息を吐いた。
渋々、ではないが、そのオムライスを食べる。
凄い美味しい。
ご飯は炒飯のようにパラパラだが、それを覆っている卵はふんわりトロトロ。
その上のクリームソースときたらコクが深く、それ自身に十の味を感じた。