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しぐれぐむ  作者: kazuha
クリスマスの微笑み
40/200

40、




 私にとっては冬休み前日の講義が終わり、晴れて冬休みとなる。


 まぁ、課題の量は凄いけど、こなせない量ではなかった。   




 私は皐月さんと一緒に学食に向かい、美晴を拾って、いつものところで食べようとなったが、彼の姿はなかった。



 隣で電話をかけている皐月さんは、おっかしいなぁ、と呟いている。



「出ない! あぁ、こんなときに何してやがるんだよヨシくんは!」


 私はセラ君にメールする。



 美晴どこにいるか知ってる? と。


 まぁ、普通なら知らないであろう。




 案の定、知らない、と返ってきた。



 ですよね。



「おい、よし! どうした! パクられたか?」

「おいおい、朝っぱらからうるせぇよ」

「もう昼だ! メシ食いに行くぞ!」

「あぁ、どこだ?」

「いつものところ」

「おっけ、今向かうから先行ってて」



 どうやら繋がったらしい。

 スピーカーモードで会話がだだ漏れだった。



「じゃっ、いこっか?」

「あ、はい」



 半ばムリヤリな感じではあったが、美晴が来るらしいので行かないわけにはいかなかった。



 私たちは宣言通りに先にあのカフェに向う。


 着くなり皐月さんは、いつものやつと叫ぶ。


「あ゛!? たまには自分で作れ」

「お客さんに言う? それ?」

「だからテメェは客じゃねぇ」

「いいじゃん、金出すんだから」



 静かな空間には合わない舌打ちが鳴り響いた。


「っで? オススメか?」

「あ、はい。今日のオススメはなんですか?」

「ベーコンエッグサンド」

「あ、それでいいです」



 随分と庶民的なものがオススメだなぁと思った。


 もはや定位化したカウンターに座り、前を向くとテラコさんがいた。


「やっほ、時雨ちゃん」

「あ、どうも」


 って私が言いたいのはそういうことじゃない。


「休みなんですか」

「うん!」


 とても嬉しそうなのだが、何故手伝いをしているのだろう。


「時雨ちゃんはコーヒーと紅茶どっち?」


「あ、紅茶で」


「ホットでいいわね」

「はい」

「レモンとミルクは?」

「レモン下さい」

「好きな銘柄ある?」

「いや、特に」

「あらそう」



 テラコさんは先ず皐月さんにコーヒーを出して後ろを向いた。



 皐月さんはそれを一口飲んで、ホットため息をつく。


「いやぁ、流石テラコさん。飲み物はテラコさんだねぇ」


「おい! うるせぇぞ!」


 厨房の方から声が飛んでくる。


「そうだろ土門! アンタの入れるコーヒーは酸っぱくて飲めやしねぇよ!」


「知らねぇよ!」



「いやいや、知らないとか。自分で飲んで、マズっ! ってなったの誰よ?」

「ったく、グダグダ言ってるとホワイトソース乗っけんぞ!」

「は! かけられるものならかけて見なさい!?」



 私の目の前に紅茶と角砂糖が入った瓶と、輪切りのレモンとスプーンが乗っているお皿が出てきた。


「まだ熱いから気を付けてね」

「ありがとうございます」


 湯気が黙々と立ち上がっている。

 香りがなにやら独特だ。

 甘ったるいっていうか、アロマの香りというか……

 なんていうか……、ストロベリー的な香り?


 そこに私は角砂糖を2個入れて、溶けるまで掻き回し、そのあとでレモンを入れた。



 黙々と出る湯気は、なんだか私をバカにしているようだった。

 飲めないだろ?

 こんな高貴な飲み物。

 って暗に思わせられる。



 熱いと言われたのでゆっくりとカップを持ち上げて口をつけ傾け、確かに少しだけ熱い紅茶を飲んだ。



「どうかしら?」


 その問は私には苦痛だ。

 なにせ、紅茶とか詳しくない。

 だから、美味しいかどうかなんてわからない。



「これ、ストロベリーの香りがするやつなのよ。味は普通の紅茶と同じだけど、やっぱりこういうのは香りを楽しむものよねぇ」



 だ、そうだ。

 はぁ、やっぱりよくわからない。



 とにかく、

「美味しいです」

「私は嫌いだけどね」



 なぜそんなものを飲ませたのだ!!



 騒がしい空間。

 否、賑やかな空間。


 目の前に出てきたサンドイッチ。

 オシャレに飾りつけられている。



 皐月さんのオムライスは、本当にホワイトソースがかけられていた。

 軽くしょんぼりしている気がする。



 笑った。

 面白かった。


 これが永遠につづけば苦悩しないで過ごせるのかもしれないけど。

 上手くいかないから今私は苦悩しているのだろう。

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