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しぐれぐむ  作者: kazuha
クリスマスの微笑み
36/200

36、








 それは急だった。



 学校の休み時間、トイレに入ると、彼女とすれ違う。



 はずだった。




 肩と肩が当たり私は後ろに倒れる。


 そしてピンヒールで肩の付け根を強く踏まれた。


「いた!!」



「あら、ごめんあそばせ」




 彼女は平謝りして、手を洗い、そのまま出ていってしまった。




 私は立ち上がり、スカートを叩いて個室に入る。



 用をたし終わり、拭くと、急に肩が痛み始めた。


 痛い。


 私は服を脱いで踏まれた所を見た。



「っ……!」


 血が出ていた。


 皮が抉れている。



 私は教室に戻り、キャラものの絆創膏を貼った。





 わざとだろうか?


 いや、そう決めつけるのはよくない。


 でも、彼女ならやりかねない。


 いやいや、考えすぎだ。


 被害妄想だ。


 そんな考えるだけ無駄だ。




 そう、なんでもないよ。







 お昼になり、そそくさと帰ろうとしたが、そこでまた彼女が私の前に立ちはだかった。




 私は一瞥しその横を通り過ぎようとする。


 視線を落とし、足を早める。



「待ちなさい」



 私の足は止まった。



「会わない約束よね」



 一撃だった。

 牙さえ食い込んだ感じだった。




「なに? 知らないとでも?」


「いや、私は」


「黙って。もうなんにも聞かないの。あなたの言う言葉なんか。裏切り者なんかのね」


「私は、」


「だから、黙りなさい。黙らないのなら」



 私に近づいてきて、ピンヒールで足首を踏まれる。


「っ!!」


「黙りなさい。わかった? それともう会わないでね。あと、学校にも来ないでね」



「いや、それは……」



 つい口が滑った。


 そう思った矢先に同じところを踏まれる。


「っ!!」


「ホント、ものわかりが悪いブス」 


 ピンヒールはグリグリと足にめり込んでいく。


「あなたなんか使い物にできなくすることなんか簡単なんだから。男に売る? 業者に売る? それとも臓器売る? そのくらい、できるわよ」


 次の瞬間、ビンタされる。


「いいわね? もう、学校なんかにくるな」





 頷こうとした。

 この苦しみから逃れるならなんでもできる気がした。

 そもそも、授業日数は足りている。

 ならいいか。

 苦しまないで済む。




「あ! やっほー! 時雨ちゃーん」



 この場に不釣り合いな声が聞こえた。



 皐月さんだった。


 スキップしながらこっちに来た。


 都合が悪いのか彼女は舌打ちをして足を離した。


「あっれー? イジメ? よくないなぁ。……今ここでシバいてやろうかっ!?」


 私の隣に立ち、私の腰に触れてからそれは言われた。


「あら、虐めている訳ではありませんわ。お願いをしていただけですの。それではご機嫌よう。シグレサンっ!」



 彼女はくるりと振り返り、優雅に歩いていった。



「大丈夫かな? 時雨ちゃん」


 その言葉を聞くなり泣きそうになった。


「大丈夫じゃないです」

「だろうね。ほっぺ赤いよ。叩かれた?」

「はい」

「あらー。可哀想に。足は平気?」


 皐月さんはしゃがんでタイツのしたの足を見る。


「あっらー。血が出てるわ。酷いことするなぁ、ホントに」


 皐月さんは立ち上がって、私を見た。


「でも、強くなったね。あたしは泣くと思ったよ」

「泣いていいですか?」

「うーーん。……ダメ」


 まったく、何が言いたいのですか。


「取りあえず、保健室行こうか。これは消毒せねば」

「あ、はい」



 来た道を戻り、そのまま近い保健室に向かった。

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