31、
ご飯を食べ終わるとそのまま別れてしまった。
美晴は部活、私は帰宅。
なにもなかった。
その後の今日1日は、本当に何もなく終わった。
久しぶりにゆっくりできた。
翌日も、その次の日も、お昼は美晴と食べるがそのあとは大体私が授業だったり、美晴が授業だったりして一緒に帰れてない。
帰りの電車の中でただ一人、ポツンといると、なんだか寂しかった。
電車の壁には広告が並んでいるが、もう見飽きたものばかりだった。
見える風景も見飽きたものばかり。
車両にはほとんど人がいない。
ポツリと私だけを照らしているような蛍光灯がビリっと声をあげた。
美晴のなにが気になっているのだろう。
あんな最低な奴のどこが。
それなら、セラ君の方がいいよね。
うん、優しいし、面白いし、それで美声だし、イケメンだし、可愛いし……。
そんなこんなメールが来ていたのに気づいた。
セラ君だ。
と、思ったけど知らないアドレスだった。
迷惑メール?
変なサイトなんて行かないけど来るのかなそういうの。
なんてくだらないこと思ったら件名に、高輪皐月だよ、と書いてあったのでビックリした。
内容は簡単だった。
セラ君からメルアド聞いたから登録しておくよ、ってだけだった。
内容なんてないよー。
……。くだらない。
私は登録しておきます、とだけ返したらそのあと返ってこなかった。
電車を降りた。
乗り換えのため他のホームに行こうとすると、急に止められた。
「ねぇ、黄金沢さん。ちょっといいかしら?」
その声は私の背筋を震わせた。
ゆっくりと振り返る。
人が行き交う階段下で、私は彼女とタイマンになった。
「な、なに?」
「ーーーーちょっとこっちきて」
彼女は階段とは反対の自販機の後ろに消えた。
このまま逃げても良かった。
嫌な予感が私の体を震わせる。
ただ、私には逆らうと言う勇気が、いや逆らうなんて言葉すら知らなかった。
重い足をそっちに向ける。
3点で描かれた自販機の視点がゆっくりと動いていく。
すると彼女の姿が段々と見えてきた。
「遅いんだけど。逃げようなんて思ってないわよね」
心臓が強く打つ。
「単刀直入に、目障り」
私は彼女の目を見れない。
「美晴センパイの周りにいないでくださる? 私のものなの。わからない? あなたみたいな平々凡々の地味でダサい女性なんて美晴センパイには似合わないの。あなたみたいな、残念な、負け組が美晴センパイの側にいるだけで、美晴センパイがどんどん腐るの。わかったかしら? どうしなきゃいけないか」
自販機がドンと大きな音を出した。
「もう二度と、美晴センパイの前に姿を現さないでくださいね」