30、
もう15分は経っただろうか。
そろそろご飯が食べれる。
私とは別の列に並んだ美晴がもう注文していた。
丼物の列なので今日はカツ丼ではないか。
私は今日は塩ラーメン!
あ、そういえばケーキどうなんだろう。
もう無くなったかな?
とうとう私も注文できるようになった。
前の人がおぼんとラーメンを持って席の方に向かうと、私は一歩前に出て塩ラーメンと注文して、
「ケーキまだあります?」
給食のおばちゃんのような白い割烹着を着た人が満面の笑みで、
「たしかギリギリありますよー」
よっしゃ!
幸運!
いやぁ、神様ありがとう!
ラーメンとケーキで多分500円だろうか。
私はコインひとつをピンクの長財布から出して財布をリュックにしまった。
そしたらおばちゃんが戻ってきてた。
嫌な予感。
申し訳なさそうな顔が余計に不安を煽る。
「ごめんなさい。さっき最後のケーキ出ちゃったみたいなの。あっちに」
っと指さされたのは美晴だった。
あのやろう!
「ごめんなさいね」
「あ、はい、大丈夫です。塩ラーメンで」
「アイヨ!」
ラーメンを作りにおばちゃんは厨房の方に向かった。
溜め息が出る。
精神的に辛い。
上げて落としてさらに上げて落とされる、二次関数もビックリな曲線に私の気分は絶好に低迷中だ。
あぁ、当分立ち直れそうにない。
そもそも糖分が足りてない。
お金を支払ってラーメンを持って既に待ってた美晴の向かい側の椅子に座る。
「あれ、ケーキは?」
「それで最後だって」
美晴のトレーに乗っているケーキを指さして言った。
イチゴのショートケーキ。
それをちらっと見た。
あんまり見ると欲しくなりそうだから。
小さな円形のスポンジに、その上にはもはや芸術のようなホイップクリームの塗装が冬季を連想させ、そして真っ赤で艶やかな大きなイチゴ。
思わず溜め息が出た。
お箸とレンゲを持ちラーメンをすする。
「やるよ」
「ホンホヒ!!!?」
食べ物を入れたまま喋ってしまった為、何を発音したのかわからない。
「あぁ」
私は急いで口の中を綺麗にして、念のためもう一度聞いてみる。
「ホントにいいの?」
「あぁ。最初からその予定だったし」
そして私のトレーにそれはやってきた。
「ありがとう!」
最上級のお礼。
微笑み。
それは全然不発で終わった。
彼はカツ丼を夢中で食べていて見てやしない。
私はなにも気にしないでラーメンを食べすすめる。
自ずと、その早さは早くなっていた。