表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しぐれぐむ  作者: kazuha
その出会い
3/200

3、




「ねぇ、一枚頂戴」

「上げるのはちょっと」

「ケチいなぁ」

「なんと言われましても……」



 ここは県内でも大きい方のライブハウスだった。


 私はかなり困った。


 どうやらプレゼントというのはこれらしい。


 柘植くんは受付でチケットを買って私に渡した。



「ってか、柘植くんは入らないの?」

「俺顔パスだから」



 意味がわからないのだが、つかつかと進んでいく柘植くんについて行くと、入口の人に挨拶され、され返していた。


 そこで私はチケットを渡した。


 でも、まだチケットがもう一つあった。



 Drinkと書かれているそれを私は使い方がわからなかった。



「なんか飲む? カシオレ?」


 いやいや、


「オレンジジュース……」



 フェイドアウトで語尾を消した。


「オレンジジュースか。可愛いね」



 顔が隠れているためわからなかったが、きっと笑われたに違いない。



 つかつかと歩いていく彼を追って、そのドリンク券を使いオレンジジュースを手に入れた。


 そして、どうやらこれから爆音が流れているあの部屋に入るらしい。



 ガラス越しに見えるその場所には、ヘッドバックをしている人や、片手をグーにして上にあげ、思いっきし飛んでいる人や、体を左右に揺らしている人に叫んでいる人。




 なんか、辺境地に来てしまったようだ。



 離れたら一生のお終いだと胸を騒がせたので、柘植くんの服を適当に摘み、はぐれ無いように中に入っていった。



 柘植くんがそれを感じたのかわならないけど、一番の安全地帯であろう少しばかりステージからは遠い空いている場所で止まり見ることにする。



 舞台上では、汗を美しく輝かせながら、ギター、ベース、ドラムを奏で、歌を歌っている。



 この暗い空間で唯一ライトを浴びているのはその人たちで、一瞬でこの世界に引き込まれてしまった。



 もとからこういうのが好きだったから、入りやすかったのかもしれない。



 そんなこんな考えていたら、どうやら今ステージに立っている人は終わりらしかった。




 ってか、いつの間にか柘植くんいないんてすけど!



 死の底に取り残された感覚に涙ぐみながら、ここから動いてはいけないという迷子の掟的なものを守る。


 柘植くんはすぐに見つけられた。



 ステージの上で、ギターを持って、伊達であろう眼鏡を外し、さっきのマフラーも不審者巻きではなく、オシャレにつけていた。



 いや、それだけじゃなかった。





 かっこよすぎた。





 彼らが出てきた瞬間の声援と言ったら物凄いものだった。


 それをなだめるようにボーカルらしい男性が手をひらひらさせていた。


「盛り上がるの早い。僕らの曲聞いて、今日は最高潮で帰ってくれ!」



 そう言って始まった。



 メンバーは五人。


 ギター二人とベース、ドラムにキーボードの女性。


 私は彼らが奏でるそれが、虜になった。






 一瞬にして、Schnee leuchtet というバンドを知った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ