29、
今日は朝から雨が降っていた。
そういえば、ライブを再来週だ。
時間が経つのが早いなぁ。
眼鏡を取り、目頭を押さえた。
学校もクリスマス一色になりつつあり、ホールにはツリーが、食堂は飾り付けがされている。
そのなか、次々と課せられるレポート。
溜め息が出る。
しかもテストが何個かある。
だるい……。
いつものように、セラ君にメールを返し、食堂に向かう。
落ち葉は綺麗に掃除されている。
もはやコンクリートだけの冷たい道を進む。
「時雨」
私は振り向いた。
彼なのはわかっている。
相変わらず真っ黒。
変わっているとしたら、咳をしていることだろうか。
「大丈夫?」
「ただの風邪だよ」
「風邪ひくんだね」
「オレはバカだとでも?」
「違った?」
ケラケラと笑って見せた。
すると舌打ちされた。
「寒いから行こうぜ」
さっさと食堂に向かうと既に行列になっていた。
「どうして?」
「知らないのか? 今日今年最後の食堂だからケーキ特売してんだよ」
しくった。
そういえばそんなこと言ってたな。
「まだ間に合うかな?」
「行かなきゃわからんな」
私たちは列に並んだ。
もしかしなくてもない気がする。
しょうがないから腹をくくって美晴に質問してみる。
「美晴ってかなりモテるよね」
「だから顔隠してるんだろ」
「なに、顔隠さなきゃいけないほど?」
「アレスってことが知れ渡ってるから、どうしてもな」
有名人。
それだけのブランドでモテるようになるんだな。
なかなか、世の中目立ったもの勝ちだな。
「そういえば、メルアド聞いてないな」
そう言って取り出された携帯。
黒いスマフォ。
アンドロイドだろう。
「ーーーーごめん。忘れちゃったんだ」
「……そっか」
直ぐにしまわれてしまった。
後悔した。
今も……。
無言が無言にならないここで、私は無意識に美晴から離れていた。
それに気づいたのは美晴だった。
ちょうど中間付近にきた頃に彼が言った。
「オレ、なんかしたか?」
「…………なんで?」
「ーーーーすっげぇ、避けられてる気がする」
「……気のせいだよ」
「そっか……」
はい、なんて言える訳がない。
まだ、嫌いになった訳じゃないし。
そもそも、まだ遠慮している。
私なんか、付き合ったってなんの面白みもない。